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※編集中※ ララノフの冒険者  作者: 紫水シズ
第二章〜ヴァル〜
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スライム

 ヴァルに到着して一夜明けた。旅の疲れはあったもののなかなか眠りにつけないものが多く、一人を覗いては皆、昼時まで布団から抜け出せずにいた。


「おら起きろグンタ!」


「ん〜……もうちょっと……」


「もうちょっとってお前……もう昼だぞ」


「ルイが耳栓取って朝からうるさいから眠いんだよ〜」


「そりゃ昨日俺が寝るときは隣でアキが寝てたのに起きて見たらお前になってたんだからビビるだろ!」


 昨夜グンタは、本来はここで寝るはずだったがルイの豪快ないびきでなかなか眠りにつけないでいたアキに部屋の交換を提案したのだ。それを喜んで受けいれたアキはまだ隣の部屋でぐっすり眠っている。そしてそれを知らなかったのは一人爆睡を決め込んでいたルイだけである。


「ビビるだけならあんなに長い間ギャーギャー叫ばなくてもいいのに……」


「いいからてめぇはさっさと起きろ!」


 ルイが無理やりグンタから布団を剥がすと布団にしがみついていたのか、そのまま布団と一緒にベッドから転がり落ちた。


「いてて……何するんだよ〜」


「今日は魔物を狩りに行く日だろ。さっさと隣の二人も起こして、支度すんぞ」


 隣の部屋へ向かうルイを見送り部屋の隅を見ると、すでにルイは自分の身支度は済ませていたようで荷物がまとめられていた。それを見てグンタも寝ぼけ眼をこすりながらも自分の道具を整理した。


「アキ、トキサラム。起きろ。」


 ルイが隣の部屋の扉を叩いて叫んでいた。しばらくして、扉が開き寝起きのアキが姿を表した。ルイの声で目覚めたらしくあくびをして涙を浮かべている。


「おはよ〜ルイ……」


「支度しろ。さっさと魔物狩りに行くぞ。あいつにも起こして伝えとけ」


 それだけいうとルイは自分の部屋へと戻っていった。アキも「は〜い……」と適当な返事をして、部屋で寝ているトキを起こした。トキもグンタとアキと同様に、まだ寝たりない様子だったが、瞼を持ち上げ体を起こすと自分の身支度を始めた。ほどなくして、全員が宿屋のロビーに集まった。


「二人とも、おはよ」


「おはよ、グンタくん」


「おはよ〜」


 グンタの挨拶に二人も挨拶を返した。まだ眠そうな様子の三人に「しっかりしろ!」とルイが一喝しカバンからヴァル周辺の地図を取り出し話し始める。


「これから行く場所の説明をするから、よく聞いとけよ」


 地図を広げるルイを見てグンタが「いつの間に地図なんて手に入れてたの」と質問すると「今朝受付でもらった」と短く答え地図を指差した。


「今日俺が目指す場所はこの湖の地下洞窟だ。大きな洞窟だが、住み着いている魔物も弱く、入り口も入りやすくなっている」


「そこで弱い魔物を見つけるんだね」


「ああ。残念だがこの辺りのゴブリンも森のゴブリンと同時に姿を消したらしい。狙うのは別の魔物。俺が聞いた話によると、この洞窟にはスライムが目撃されている。そいつを狩って得た素材を納品すれば晴れて冒険者の仲間入りだ」


 本来ならば森を抜けたヴァル周辺でゴブリンを探し討伐するという算段であったが、ルイが予め村で聞いた情報によりそのゴブリンたちもあの夜あの場所に集まっていたらしい。そこで四人はターゲットを変更して、この先の湖の地下に生息するスライムを討伐しに向かうのだ。


「そういえばスライムってそんなに弱いの?」


「魔物の中ではゴブリン以下の下級モンスターだよ。と言ってもゴブリンでも見習いのレベルの俺達には強敵だしスライムも簡単に倒せるとは思わないほうがいいかもね」


「冒険者なら基本中の基本だぞ。お前はもう少し勉強しろ、トキサラム」


「ご、ごめん……。」


 いつもの嫌味なルイとは違い、真面目に叱るルイに素直にトキは謝った。内心では「ルイのくせに……!」と悪態をついている。それを知ってか知らずかさらに注意を促す。


「いいか。お前のために確認も兼ねて言っておく。スライムの肉体は液体のような性質を持つ。刃物で切り割くくらいじゃすぐに再生する。スライムを倒すときは、火力の高い魔法で吹き飛ばすのが定石だ。特に火属性は効果を発揮する。お前、魔法は使えるか?」


「火属性なら……」


「癪だがお前に頼るときも来るかもしれねえ。アキの水属性魔法やグンタの風属性魔法でも効かないことはないが、それでも火属性を持つ俺とお前が今回の主力になると思っておけ。「洞窟は俺たちがこの村に来た方とは正反対の方角、村を抜けてすぐの場所だ。早速出発するぞ」


 いつもは内心でルイのことを小馬鹿にするトキも、こういうときのルイは頼りになると改めて感じた。ルイも初めての旅で疲れているはずだが、知らないうちに地図を手に入れ情報を集め策を練っていたのは流石である。


「随分と近いんだね」


「この村の冒険者のおかげもあってこの距離の洞窟でも被害は出ないんだろ。それにこの村の水の供給はこの湖かららしいからな。」


 会話している二人を見ていたトキは、ふとアキの声が先程から聞こえないことに気づいた。振り返るとアキは椅子にもたれかかって気持ちよさそうに眠っていた。それを見たトキはすぐにアキを起こした。


「アキもう行くよ!起きて!」


「まさか、さっきの会中ずっと寝てたのか……」


「よっぽど眠たかったんだね〜」


「ったく、アキには移動しながら説明しとくか」


 三人はやれやれといった様子で目を覚ましたアキを見た。悪びれもせずに呑気にあくびをするアキ。グンタが優しい口調で洞窟に向かう旨を伝えると「うん、行く〜」と甘えた声でフラフラと立ち上がり、おぼつかない足取りで歩き出した。三人はまた呆れた顔をしてアキの後を追った。


「洞窟の方向、そっちじゃねえぞ……」

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