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※編集中※ ララノフの冒険者  作者: 紫水シズ
第二章〜ヴァル〜
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休息

 シオンを出発して一日以上経過した。すでに森は暗くなり先も見えづらくなっている。ほとんど休憩なしに歩き続けて流石のアキとルイもヘトヘトな様子。グンタもいつも以上に目を半開きに、というかほぼ閉じて歩いている。トキにいたっては両手に木を杖のようにしてゾンビのように歩いている。百年は老けたのではないだろうか。


「お、おかしい……。そろそろ着くはずなんだが……」


「ほんとに……こっちで、あってるの……?」


「俺も衰えたな……」


 アキがルイの案内を疑い出すと、当の本人まで自分の方向感覚を疑い不敵な笑い声を発した。それほどにまで神経をすり減らしながらも足を進めていると、グンタが「何か聞こえない……?」と足を止めた。三人も同じく足を止め耳を澄ませると、たしかに何かが聞こえる。


「これは……」


「人の声……かな?」


 アキがそう言うやいなやルイは今までの疲れも忘れて走り出した。すぐにアキも走り出し、その後ろをよたよたとトキとグンタが追っていった。だんだんと空の端に明るみが帯びてくる。そしてその先には人々の喧騒が待っていた。


「着いた……ヴァルの村だ!」


 ついに森を抜けたことをようやく頭が理解すると、アキは我先にと村の中に走っていった。三人も後を追って入っていく。シオンより少し大きめで、高い塔のような建物がいくつか見られる。一番高い建物はシオンのギルドにそっくりなデザイン。おそらくはこの村の冒険者ギルドだろう。道には均等に明かりが灯されており、人々はお祭りのような賑わいを見せている。


「よし、と、とりあえず飯と寝床だな」


「寝床なら村の宿屋があるよ……」


「じゃあまずは宿屋に荷物をおいてくるか」


 三人は死にそうな目をしたままやるべきことを再確認する。トキはそこに立つので精一杯で一言も喋らない。未だに足元を見つめ地面とにらめっこしている。グンタの案内でなんとか四人は宿屋へ到着した。宿屋までの道には様々な屋台が立ち並んでいた。その匂いに釣られそうになりながらもまずは宿だと言い聞かせながら垂れるよだれを拭い歩いた。見習いでも冒険者に見えるのか、武器屋や防具屋によく声をかけられていた。だがそれに対してゾンビのような反応を見せる四人にどこの店も一歩後ずさりそれ以降声を発することはなかった。宿屋についた四人が早速中へと入ると、ギルドの受付嬢には劣るもそこにはとても美人なお姉さんが待っていた。


「あ、あの……四人部屋ってありますか?」


 ルイはお姉さんの美しさに緊張してか、はたまた旅の疲れのせいか吃りながら尋ねた。


「すみません。うちは二人部屋までしかないんです。四名様ですと二人部屋を二部屋お貸しできますが……」


「二人部屋が二部屋か……よし!グンタとお前が同じ部屋になれ!」


「ん? どうして?」


「え〜……私トキくんとがいいよ……」


 しばらく額に手をおいて考え込んだルイは部屋割りをグンタとトキ、ルイとアキに決めたようだ。グンタは疑問に思いルイに尋ねるが「なんとなくだ!」と曖昧に返される。アキもそれをストレートに断るとまたこいつかと恨みを込めた視線をトキに送る。トキは相変わらず心ここにあらずでいつもなら頬を赤く染めたであろうアキの言葉も、怨みの込められたルイの視線にも気づいていない。自分もろくに頭が働かないはずなのに、そんな提案をするルイにも流石であると言わざるを得ない。


「だめだ!最近仲が良くなってきてはいるが、まだ一番関係の浅いあいつらにはもっと仲良くなってもらわないといけない!!」


 さっきはなんとなくだとか言っていたのに二人に否定されると思いついたようにルイはそう言い出した。それならルイもグンタとあまり変わらないのではというアキの意見と、むしろ自分のほうがルイよりもトキのことを知っているというグンタの反論にも全く引く気配がない。そしてその激しい争いの傍らで世界には自分一人だと訴えるように全てを無視して立ち尽くすトキ。この異様な光景に終止符を打ったのはルイの「い、いいから言うとおりにしろぉぉお……!!」という渇いた叫び声だった。流石に三人とも限界だったのかその一言で全てが沈静化し、結局ルイの提案通の部屋割りとなった。アキは不満そうな表情をしていたが耐えてそれを受け入れたようだ。そして受付が終わるとすぐにそれぞれの部屋に入り、荷物をおいてしばらく休息を取ると再び外へと出た。


「全員なんとか復活したな」


「う〜おなか空いたよ~」


「よし何か食いに行くか」


 全員、ではなくトキ以外の復活を確認したルイはアキの空腹ゲージが減少していることを知ると財布を取り出した。


「何喰うよ」


「そういえば私達お金持ってない!」


 ハッとした様子でアキが叫んだ。アキはずっと自分で狩りをしてきたので、お金とは無縁な生活をしていたのだ。トキも森で目覚めた時何も持っておらず同様に無一文。


「俺が出すよ。お前の分も出してやるよ。宿屋とメシ代だけな。薬草のお返しだ」


 他所を向いて鼻を鳴らすルイの横顔は少し顔が赤みがかっていた。珍しくトキに対して優しさを見せるルイに「素直じゃないんだから」とグンタは優しく笑うが、そんなツンデレもまだ完全復活を遂げないトキの耳には入らなかった。ちなみにグンタいわく、宿の部屋に入ってからトキは一言も喋らずベッドに座り目の前の壁とにらめっこ。そして部屋を出るときグンタが一言声をかけるとそのまま無言で後ろをついてきたのだという。さすがのグンタも恐怖を感じたらしく、身体は休まったものの精神的にはさらに疲れたらしい。


「言っとくが今回だけだかんな!そこんとこ覚えとけよ!」


「あ!私あれ食べたい!」


 ルイが、トキが心ここにあらずであることも露知らずツンデレっぷりを発揮して去ろうとすると、アキは一つの店を指差して叫んだ。その店は見るからに高そうだったが、店で食事をすることがないアキにとってはそんなこと知ったことではなかった。その店の雰囲気を見るやいなやルイは足早に戻ってきて店頭のメニューと財布を交互に見た。


「あ、あのアキさん……? もう少し安い店に……」


 ルイのことは興味無しで「よーし!食べるぞー!」と店に入っていくアキとそれについていくグンタとトキ。ルイが気づいたときには三人は店の中。結局諦めて四人はこの店で腹を満たすことになった。食事中のルイはトキと同じように心ここにあらずであった。それと入り変わりに、食事のあまりの美味しさにトキは「ここはどこ!? え!美味しい!!」と目を覚ました。食事は想像を上回る美味しさだった。

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