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※編集中※ ララノフの冒険者  作者: 紫水シズ
第二章〜ヴァル〜
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薬草集め

 シオンを旅立ち一夜を終えた朝。見習い冒険者となった四人はまだシオンを囲む森の中を歩いていた。


「アキ、これからどうするの?」


 トキがアキに尋ねる。


「ん~、とりあえずヴァルを目指しながら薬草と魔物探しじゃないかな?」


「いや、それは厳しいと思うぜ」


 アキが答えると、すぐにルイがそれを否定する。二人は訝しげな視線をルイに向ける。


「どうして?」


「昨日、ギルドでクエストの説明を受けた後グンタと話したことなんだが、知っての通りゴブリンは魔物の中でもスライムと同じ最下級の魔物に分類されている。そいつが毎度冒険者になるための最初の試練の討伐対象に選ばれているわけだ」


 ゼトもいつか同じようにゴブリンは魔物の中で最も弱い分類だと言っていた。そしてルイいわく、それと同レベルの弱さを誇るのがスライムらしい。


「俺ら見習いにとって最も討伐に適した魔物か、あるいは俺ら見習いでも倒せるレベルの魔物だと判断してのこのクエストなんだろうが……今この森にそのゴブリンはいない。俺たちはヴァルまでの道中にゴブリン以外の魔物を狙うことを強いられたようなもんだ。だがさっきも言ったように俺らの実力で倒せるのは最下級モンスターくらいなもんだ。それより上位の魔物と戦うにはリスクが大きい。もし万が一倒せる魔物がいたとしても、他の連中との奪い合いになることも予想できるがこれもできるだけ避けたい」


「ん〜、じゃあどうするの?」


「この森では納品アイテムのうちの一つ、薬草を集め次第一度ヴァルに向かう。そして準備を整え次第ヴァルよりさらに奥でゴブリンを探し討伐する」


「同じ作戦を考えるパーティがいることも考えてこの森はできるだけ早く抜けたいところだね」


 ルイの作戦の説明にグンタが最後に付け足すとアキは、納得はしたがまだ気になることがあるといいたそうな顔をした。


「ヴァルの奥にはゴブリンはいるの?」


「ゴブリンの目撃情報はあるが正直見つけられる可能性は低い。だがあの村の奥には小さな洞窟があったはずだ。そこにはたしか最下級モンスターが生息していたはずだ。その時はそこを探しに行く」


 説明を続けるルイの姿は普段の彼からは想像できないほど頼りになる姿だった。やはりこの二人はアキがパーティに迎え入れるだけの実力を兼ね備えているのだろう。学庭に通うものだからこそ身についた能力なのか、トキはそんな二人を見て驚きと尊敬の眼差しを向けている。アキもそれを感じてかその作戦に賛同した。


「わかった、その作戦でいこう。この森で薬草を集めて、一旦ヴァルで準備を整えてから森を抜けた場所で魔物の討伐だね」


「ああ。そうと決まれば早速薬草を探しにいくぞ。できるだけ早いほうがいい。できれば納品用以外にも集めておいたほうがいいな」


「いざという時に役に立つかもしれないしね」


「よし、ここで一旦解散だ。ちょうど昼頃にはこのま場所に戻るようにしよう」


「わかった。みんな気をつけてね」


 四人はそれぞれの方向へと進み森の中へ姿をけした。初めての単独行動に不安に苛まれるトキであったが、これくらい一人でできなければ冒険者としてやっていくことはできないと一人森の奥へ歩みを進めた。


「トキくん。ごめんね、ついてきちゃった。トキくんが一人で大丈夫か心配で……」


 声をかけたのはアキだった。トキの不安を察したのか申し訳なさそうにしながらもトキのことを心配していたようだ。


「僕は大丈夫だよ。これくらい一人でできないと」


「そっか、でも無茶だけはしないでね」


「うん、分かってる。ありがと」


 少し安心して笑顔を見せるとアキは背中を向けて、森の奥へ歩いていった。後になって少しだけ一緒にいてもらったほうが良かったかなとも思ったが、いつまでもアキに甘えてはいられないと自分を鼓舞し不安を消し去った。森は以前来たときよりも静かで、シオンと同じように落ち着いた雰囲気を漂わせていた。これも魔物が減少したせいだろうか。魔物が減ったのを察知してか動物たちも以前より多く見かけるように思う。別行動を取ってしばらくすると早速薬草を見つけた。


「やった!見つけた!」


 ゼトにもらったバッグの中に薬草をしまった。一つ見つけると探すコツでも掴んだのか、それから薬草はどんどん見つかった。そして気がつくとトキのバッグは初めに比べると比べ物にならないほど太り、「ちょっと取りすぎちゃったかな」などとつぶやきながら背負ったパンパンに膨らんだリュックを両手で支えた。そろそろ日が登りきるという頃、三人と解散した場所まで戻るとそこにはグンタが一人、座っていた。アキとルイはまだ戻ってきていないようだ。


 まだ一度も直接話したことがないグンタと二人きりの状況になんとなく気まずさを感じながら向かいに座った。そんなことを思っているとグンタの方からトキのリュックを見つめて声をかけてきた。


「薬草いっぱい見つかったみたいだね」


「あ、うん。ちょっと取りすぎちゃったかな」


 いきなり声をかけられ驚きながらも膨らんだリュックを抱えて苦笑いする。見たところグンタの傍らにある薬草はトキに比べるとかなり少量だった。


「すごいね。僕はちょうど納品分しか見つけられなかったよ」


「え?あんなにあったのに?」


「運がよかったんだね。もしくは俺の運が悪かったか」


 驚くトキにグンタはぼんやりとしながらも優しい笑みを浮かべた。いつもルイの影になってわからなかったが、グンタはトキのことをそれほど毛嫌いしている節は見受けられなかった。


「そっか。もし必要な時があったら僕の分あげるよ」


「ありがとう。ねえ、俺もアキみたいにトキって呼んでいいかな?」


「え? それは全然構わないけど……」


「じゃあこれからはトキって呼ぶね。俺のことはグンタでいいから」


「うん、わかったよグンタくん」


 トキはまさかグンタの方から距離を縮めてくるとは思ってもみなかったのでつい曖昧な返事をしてしまった。しかしそれも都合よく解釈してくれたようで、グンタはトキによろしくと温かい笑みを向けた。そんな具合にしばらく話していると茂みから憤激を抱いたルイが姿を表した。


「くそおおお!!全っ然見つからねえ!!」


「お帰りルイ」


「おうグンタ!薬草一つ分けてくんねえか? 全く見つかんなくってよ!」


 顔の前で両手を合わせて汗だくになりながらもグンタに頼み込む。だがグンタも薬草は余っておらず、分け与える余裕はない。


「ごめんね。僕もちょうどしかないんだ」


「なん……だと……!」


「あ、でもトキがいっぱい見つけてきてるよ。」


「なん……だと……!!」


 さっきと同じ表情同じセリフで、だが勢いは若干増しながら驚きの視線をトキにぶつける。その視線の先には膨れ上がったリュックが。じっとルイがバッグを睨む。どこにあんなに生えていたのかといいたげな様子だ。ルイが歯を食いしばり拳を握りしめながら悔しそうにしているとアキもようやく戻ってきた。


「ただいまー!」


「アキ薬草みつかったか?!」


「それが一つも見つからなくって〜」


 体を百八十度回転させアキに薬草を求めて尋ねるルイ。しかしその期待も虚しくアキは苦笑を浮かべて両手を広げてみせる。ごめんねと笑うアキの手を見ながらルイは絶望で膝を突いた。アキはそんなルイを尻目にトキの傍らのリュックを見た。


「え!? トキくんすごい!これ一人で取ってきたの!!?」


「う、うん。」


「お願い!分けてください!」


「う、うんいいよ。取りすぎたかなって思ってたし」


 ぐっと顔を近づけ眼前で両手を合わせ微笑むアキに、つい視線をを逸らして苦笑を浮かべる。その顔には若干の赤みがかかっている。


「ありがとう!みんなも薬草見つけれたの?」


「ルイはまだ持ってないよ」


 アキの問いに「うっ」とうめき声を上げながらルイが黙り込むと、それを見ていたグンタが悪戯な笑みとともにルイを指差し答えた。


「おいグンタ!」


「じゃあルイもトキくんにもらいなよ。いいよね? トキくん」


「うんいいよ」


 アキは、トキから薬草を受け取るとルイに手渡した。ルイは悔しそうにしつつも素直に受け取った。


「ちゃんとトキくんにお礼言うんだよ」


 薬草を受け取るルイに相変わらず悪戯な笑みを浮かべながらグンタが言うと、悔しさに加え照れくささも混ぜながら視線をそらし小さな声でつぶやいた。


「あ、ありがとよ……」

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