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救出

 弾けるような音がする。目の前は暗闇。頭がぼんやりと霧がかっているようだ。少し時間を置いて後から感覚が追ってくる。目を開けると暗闇の中に炎が揺らいでいた。光を見つけ少し安堵した。灯りに群がる虫達も皆この暗闇の恐怖に苛まれ光を求めるのだろうか。光の奥に影を落とし炎を眺める男が一人。静かに座り込んだまま微動だにしない。どこか悲しげな表情をして、まるで目の前にない遠くのものを見つめているようにも見える。


「目、覚めたか……?」


 低い声で男が声をかけ、微かに優しい笑みを浮かべていた。同時に悲しさを感じさせたあの目もすっかり消えてしまっている。


「うん……」


「……そうか。とりあえず無事で良かった。お前、森のなかで炎に包まれて倒れてたんだが、なにか覚えてるか?」


「森の中で……? ……そうだ……アキ……アキは!!おじさん!アキが!!」


 トキは少しずつ、あの森で何が起きたのかを思い出した。アキが魔物に攫われたことを思い出し、パニックに陥るトキ。無意識のうちに男の服を掴んでいた。


「落ち着け!……俺がお前を見つけたときには、周りには他に誰もいなかった」


 男はトキの腕をほどくと落ち着いた口調でそういった。落ち着きを取り戻したトキはアキが攫われたという事実を再確認し地面に崩れ落ちた。


「……やっぱり……アキは……。……僕が弱かったからだ……」


「……おい坊主。何があったか話してみろ」


 絶望に飲まれそうになるトキに男がそう言うと、トキは一瞬ためらった様子を見せるが、男の真っ直ぐで真剣な目を見てゆっくりと口を開いた。男は森の中で少年から感じた気配と、少年の話で出てきた力。これが何なのかはわからないが強大な力がまた暴れないようにするためにもその力について知る必要があると思った。


「坊主、聞け。その嬢ちゃんを助けに行く。今すぐにだ」


 トキは一瞬驚いた顔をしたが、またすぐにうつむいて言った。


「……でも……アキはもう……」


「お前はその嬢ちゃんがまだ生きてるところを見たんだろ。なら大丈夫だ。ここらのゴブリンは変わりもんでな。生きた女が好物だが、夜が深くなって儀式をするようにそいつを喰らう。今日さらわれたってんならまずまだ生きてる」


 それを聞いてトキは空を見上げ、西の空を確認する。まだ、日が沈んで間もない。アキはまだ生きているかもしれない。そう思うと微かだがトキの中にも希望が見えてきた。


「正直オレ一人で助けに行くのがいいんだが、お前はどうする」


「僕も行く!」


「わかった。だが忠告はしておく。無茶はするな。夜になるとゴブリンたちは同じ場所に集まる。1体や2体なんてレベルじゃない。いくら最下級レベルの魔物といえど数集まれば厄介だからな。」


 トキにとって一体でも倒せるかどうか怪しいゴブリンが数十体。さらに、あの時の力がまた使えるとも限らない。しかしそれでもトキにはたとえどんな状況になったとしても、アキを必ず助けるという強い意志があった。


「リミットは譲ちゃんが胃袋に収まるまでだな。生きている限り必ず助け出すぞ!」


「うん!」


「おっとそういえば、まだ名前を名乗ってなかったな。俺はゼトだ。一応腕にはそこそこ自信がある。」


  男はニッと笑い胸に拳を当てた。続けて笑ってトキも自分の名を名乗る。


「僕はトキ」


「いい名前じゃねえか。まあ安心しな。俺がついてんだ」


 トキの頭をくしゃくしゃと撫でながらゼトは言い、背を向け歩き出した。


「よし!そんじゃいくぜ!」

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