第5話 感想
初デート?もあり、少しずつ進展しつつある宏隆と汐莉。
そんな二人の距離はさらに近づく!? それとも……?
随分とお待たせいたしました! 約1年半ぶりの更新になります!
「お……おはよう!」
朝、教室にいると後ろから声がした。声を聞いて誰かすぐにわかる。うん、敬語も無くなっている。
「西田さん、おはよう」
振り返って俺は言う。西田さんは敬語が無いことにまだ少し抵抗があるのか照れくさそうにお辞儀をした。そんな俺らを見ている奴がいる。もう名前を言うまでもない。
「何か文句でもあんのか」
「いやー別に何もありませんよー」
そう言いながらも冷やかすように満面の笑みで俺の方を見る。
「で、昨日は上手くいったのか? 何やら敬語が無くなってるところをみると上手くいったように見えるが」
西田さんに聞こえないように小声で言う。さすが直哉だ。すぐに西田さんの敬語が無くなってることに気が付いた。まったく、こういうところはほんとに鋭い。
「だから、そんなんじゃないって。少し時間があったから買い物をしてお話しして帰っただけだよ」
俺がため息を1つついてからそう言うと直哉はあからさまにガッカリした表情をした。コイツは少しくらい隠すということを知らんのか……そう俺は心の中でツッコミを入れる。
「あのー何を2人でコソコソ話してるんですか?」
気が付けば西田さんが不思議そうに俺らのことを見ていた。
「あ、いや何でも……」
俺がそう言いながら西田さんの方に振り返ったのと同時に
「宏隆に西田さんとのデートどうだったか聞いてたんだよね!」
そこそこ大きな声で直哉がそう言った。俺と西田さんはもちろん周りにいた人もビックリした様子だった。
「ば……ばか! デートだなんて……ただ一緒に帰っただけだって!」
いきなりデートだなんて言うから恥ずかしさから俺もつい大きな声になってしまった。周りからの視線が痛いほどに刺さる。そんな俺を見て直哉は楽しそうに笑っていた。そして西田さんはというと、きょとんとしながらも俺の方を見ていた。そんな西田さんと目が合って何か恥ずかしくなり俺は目を伏せた。
「西田さん、宏隆とのデートはどうだった?」
そんな俺の気も知らずに直哉は西田さんに問いかける。俺は目を伏せたまま西田さんの答えを待った。不安と期待が入り交じった不思議な感情が俺を支配する。今にも心臓が破裂しそうだ。
「昨日は……すごく楽しかったですよ。中村さんとたくさん話せましたし」
「おー!! お熱いねえ!」
西田さんが話し終わると同時くらいに直哉が歓声を上げた。まるで用意してたかのように。周りからも何故か歓声が上がったり拍手が起きたりして俺らの周りだけ異様な盛り上がりを見せていた。俺はというと西田さんの言葉を聞いて内心すごく喜んでいた。今にでもガッツポーズをしたいくらい。楽しかったって言ってくれた。
「さあさあ、これを聞いて宏隆はどう思ったのかな!?」
こうなったら直哉は止められない。俺は再び呆れたようにため息を1つついた。西田さんは少し下を向きながら俺の言葉を待っているようだった。
「もう……直哉、これで終わりだよ。西田さん、ありがとう。楽しかったって言ってもらえて嬉しかった。俺もすごく楽しかったし……」
もうここまで来たら思い切って言ってしまえ、俺!
「また一緒にお出かけしたいなーなんて思ってる!」
俺は言い終えてふうっと息を吐く。緊張した。俺の言葉を聞いて西田さんはどう思っただろうか。そう思って俺は西田さんを見た。西田さんはゆっくり顔を上げて
「私もまた中村さんとお出かけしたいと思ってます」
と言った。再び直哉を含めた周りの歓声が上がる。さっきの歓声のせいかいつの間にか周りの人数は増えていた。俺は恥ずかしくて顔を上げていられなかった。
『ガラガラ』
「はーい、今日最初の講義始めますよ」
そうしているうちに最初の講義が始まろうとしていた。周りにいた人たちがそれぞれ自分の席に戻る。俺の隣には直哉……あれ、いない。
「直哉、何で後ろにいるの?」
いつの間にか直哉は俺の後ろの席に座っていた。
「西田さん、宏隆の隣に座りなよ。そこ空いてるからさ」
直哉、そのために……心の中で『ありがとう』と呟いた。後でちゃんとお礼しなきゃな。
「じゃあ、失礼します」
そう言って西田さんが隣に座る。西田さんが座ったとき自然と目が合って笑ってしまった。講義が始まって俺はテキストとノートを取り出した。
「はあ、今日も頑張るかー」
「『今日も』じゃなくて『今日は』な」
俺がボソッと呟いた言葉が直哉に聞こえ、すぐに直哉にツッコまれる。そんな俺らの様子を見て西田さんは笑っていた。
「『今日は』頑張ろうね」
そう言って西田さんはニコッと俺に微笑んだ。可愛い。ずるい、ずるいよ。そんな風に西田さんに言われたら俺……。
「何ニヤニヤしてるんだよ。気持ち悪いぞ」
「直哉には関係ないでしょ」
俺のこの気持ちが直哉にわかるわけない。そんな風に俺が思っていると
「まあ、俺は宏隆と西田さんを後ろから観察できるから良いけどな」
悪魔のような一言が放たれる。まさか、直哉が後ろに行ったのって……
「たぶん今宏隆が思ってること正解だと思うぞ」
前言撤回。西田さんを隣にしてくれたのは感謝するが、目的はそれだったのか。結局その後1日中講義が終わる度に直哉に冷やかされながら俺は過ごした。
読んでくださりありがとうございます!
順調に宏隆と汐莉は進んでるみたいですね。敬語も無くなり、お互いの気持ちも伝わりつつあるのかな?
ここまでは順調な二人。このまま順調に行くのか?
第6話もお楽しみに! なるべく早く更新できるように頑張ります……^^;