第3話 お誘い
第3話です!
宏隆と西田さんの関係に変化は!?
二人の関係、そして直哉は……?
家に帰ってきた俺は西田さんとのことを考えていた。振り返れば不思議な一日だった。いつも通り大学に行き、講義を受け、直哉と話し、帰る。そんな普通の一日が今日は違った。西田さんと出会い、と言っても最初はぶつかってお互い謝っただけなんだけど。まさか、その後遅くまで話すとは思っていなかった。
「楽しかったなあ~」
思わずポツリと呟く。そして考える。また明日も話せたらいいな、そんなことを思いながらいつの間にか俺は眠りについていた。
翌日。今日は運が悪いことに朝から大学の講義がある。いつもの俺なら少しくらい遅れてもいいだろ、なんて考えるところだが……単位がそろそろ危ないということもあり、余裕を持って大学へと向かうことにした。
「お、宏隆。今日は早いな」
大学に着き、教室へと向かうと直哉が話しかけてきた。
「今日はって何だ。今日はって」
「いつも寝坊する宏隆が悪い」
寝坊したくてしてるわけじゃない!と心の中でツッコミを入れながらも返す言葉がない。
「はいはい。俺が悪いですね」
「そうそう。これからは気を付けるように」
お前はどの立場なんだと思ったが言わずに小さくため息をつく。もう疲れた、そんなことを思っていた時だった。
「おはようございます。中村さん」
後ろから声を掛けられ、振り向く。そこには西田さんがいた。
「あ、おはよう」
普通の挨拶なのに何故か少し緊張している自分がいておかしくなった。
「お、宏隆、知り合いの子か?」
「ああ、ちょっとね」
直哉に声をかけられ、詳しい話をしようかとも思ったが、そんな必要ないかと思い、曖昧に答えた。
「じゃあ、中村さん、今日も一日講義頑張りましょうね!」
西田さんは笑顔でそう言って少し離れた場所に座った。その様子を見ていた俺の隣でニヤニヤして俺を見る奴がいた。
「何だよ」
「いやあ~別に」
直哉はずっとニヤニヤしている。コイツ、何か考えてやがるな……。
「講義始めるぞー」
「はあ……」
教授が教室に入ってきて講義が始まった。講義が始まったということと隣からの視線に思わずため息が出た。
「これで講義を終わります」
午前中、講義を二つ受けた俺はぐったりとしていた。つ……疲れた……。幸いにも今日はこれで終わりなので帰れる。
「おいおい、大丈夫か? どんだけ疲れたんだよ、お前は」
直哉が呆れたと言わんばかりに机に伏している俺に言う。まあ、真面目な直哉からしたらそういう反応になるだろうな。俺は返す元気も無く、力なく頷いた。
「あ、朝の女の子」
「西田さん!?」
「あはは。お前は面白い奴だな、ほんとに」
周りを見渡すが西田さんはいない。まんまと直哉にハメられた。
「えっと……どうかしたんですか?」
「に……西田さん!?」
ハメられたと思って直哉を睨んでいると西田さんがやってきた。俺と直哉の様子を見て混乱しているようだ。俺の反応を見て、さらに困惑していた。直哉は爆笑している。
「あ、えっと……何でもない! うん!」
「そうですか? なら良いのですが……」
何とか誤魔化せたようだ。俺はホッと胸をなで下ろす。
「宏隆ときたら今日、西田さん……だっけ? のことばっかり考えてて講義に集中……」
「直哉!!」
ホッとしたのもつかの間だった。慌てて直哉の口を塞ぐ。まったく、この男ときたら……。何が何だかわからない西田さんを笑顔で誤魔化す。そして、俺は直哉を睨みつけた。
「おお、怖い怖い」
「直哉、絶対許さんからな」
西田さんに聞こえない程度の小声で直哉に釘を刺す。そんな俺と直哉の様子を西田さんは不思議そうに見ていた。
「そ、そういえば! 西田さんどうしたの?」
この状況を打開したくて話を変えようと西田さんに振る。西田さんは急に話を振られて一瞬驚いていた。
「あ、えっとですね……今日の講義、これで終わりじゃないですか。だから中村さんは帰るのかな、と思いまして」
「あー特に大学でやることも無いから帰ろうかなと思ってた」
「そうなんですか。うーん……」
西田さんは少し考えてから、
「じゃあ……一緒に帰りませんか? 私ももう帰ろうと思ってて」
と言った。痛いほどに隣から嫌な視線を感じるが、無視。
「いいよ。一緒に帰ろう」
「ほんとですか! ありがとうございます!」
こうして俺と西田さんは一緒に帰ることになった。直哉に肩を叩かれ、『しっかりな』と言われた。コイツはほんとに冷やかすのが好きなんだから……。そして、お互い準備が終わり、俺は直哉に挨拶をして教室を出た。
読んでくださってありがとうございました!
西田さんから一緒に帰るお誘いが!
二人の関係がまた近づきそうですね。
さてさて、どうなっていくのか!?
第4話もよろしくお願いします!