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プロローグ 〜始まりは過去〜

初めてオリジナル作品書かせてもらいました

投稿は自由気ままにやっていきますが、この作品をよろしくお願いします

「この瞬間がずっと続けばいいのに・・・」


そんなことを軽々しく言えるのは、実際にそんなことは起こらないと分かっているからだと思う。

もし、思っただけでそれが実現するとしたら、この世界は大変なことになってしまうだろう。誰もが永遠に同じ時間を繰り返している世界・・・。それはまるで悪夢のようだと思う。


「・・・お~~い、起きてる~~?」

「・・・・・・」


何度も同じ時間を繰り返して繰り返す・・・。例え、どれだけ愛しい瞬間でも、何度も繰り返せば、それはただの苦しみにしかならない。俺はそう思う。


一月(いつき)ってば〜」

「・・・・・・」


さらに恐ろしいと思うのが、自分が望んだ瞬間じゃない、極端な話、自分にとって最も思い出したくない瞬間が繰り返されることだ。

後悔・絶望・憤怒。様々な理由があるだろうが、そんなのが繰り返されると思うと、ゾッとする。


「お〜い、市条一月(いちじょういつき)君〜」

「・・・・・・」


・・・さっきから隣で騒いでいる菊野香織(きくのかおり)も、俺にとっては大切な瞬間の一つな訳で・・・。


「なになに、反抗期?それとも、これが噂のツンデレってやつ?だとしたらいつデレ期くるのかな・・・?」

「いつ俺がツンデレだと言ったんだ」


・・・大切な瞬間だと思いたい。けどまぁ前向きに考えれば、こんなやり取りを普通に出来る事自体、幸せなことかもしれない。


「おっ、やっと返事した」

「隣でそんな馬鹿馬鹿しいことを、延々と話されると分かったら嫌でも反応する」


言うなれば、攻略本片手に進めるゲーム。いや、それより何周もやった後のゲームと言った方が正確だろうか。

その時感じる既視感。いわゆるデジャヴという奴だ。

そういう特に何かがあるわけでもなく、毎日が「ごくありきたりな日常」であることを、俺は願っている。


「どうせ、当たり前の日常が一番だ、とか思ってたんじゃないの?」

「・・・お前は超能力者か何かか」


こいつは昔ながらの腐れ縁で、良く言えば幼馴染というやつだ。おそらくこいつが俺の心をナチュラルに読めるのも、長い時間共にいたからだろう。


「確かに長い時間一緒にいたからっていうのもあるかもだけど、それ以前の話だから」

「お前超能力者なんだろ、そうなんだろ。一度テレビに出てみろ」

「だから言ってるじゃない。一月が幼馴染だから、だよ」

「・・・そこは素直にありがとうでいいのか?」


そう「当たり前じゃん?」みたいな顔で言われたら、正直反応に困る。何の恥じらいもなくそういうことをよく言えるもんだ。どんな神経してるのだろう?少なくとも、俺とは構造が違うのだろう。


「伊達にお風呂一緒に入った仲じゃないわよ」

「・・・そうか」

「えっ!?スルー!?」


こいつの言ってることに、一回一回反応してたらキリが無い。つまらんことは、こうやってスルーするのが一番だ。

というか、そんな古いことをよく平然と言える。こういうのはむしろ、女子の方が嫌がるものだと思っていたのだが。女子全員なのか、こいつが例外なだけなのか。どっちにしろ、やめてほしい。


「一月が分かりやすいだけだって」

「よく「一月、もう少し表情に出して。無表情怖いから」って言われるのは、俺だった気がするんだが」

「そう?パッと見ただけで分かるんだけどなぁ、私は」

「自分でも言ってただろうに。ただ俺とお前が、幼馴染などという面倒な関係にあるだけのことだって」

「面倒だなんてひどっ」


友達が少ないわけでは無い。別に多いわけでもないが。広く浅くより、狭く深くだ。それに、友達を作ろうとも思ったこともない。どっちにしろ、俺は愛想悪いから、友達になれる人など限られてくる。それこそ、菊野(こいつ)のような、無駄にお節介なやつぐらいだ。


話は変わって、今は近くの土手にいる。春休みという気持ちが楽になるこの時期だからこそ、寝転がって空を見上げることが出来る。


「早かったね、高校三年間」

「だな。気づいたら、大学生だ」


今現在、この世界は爆発的な近代化により、あらゆるところでコンピュータを見かける。今じゃ車も宙に浮かんでるし、あらゆるものがコンピュータ制御になっている。

昔は南北問題なるものがあったらしいが、今は何処の国も言うなれば、「先進国」だ。何処も彼処もコンピュータコンピュータだ。


「お前はまだ続けるのか、EF?」

「多分ね。それくらいしかやることないし」


EF。Electronic Fightの略だ。ここ最近流行っているスポーツで、まさしく「今」のスポーツだ。

特殊端末を使って行うスポーツで、5×5の25マスに専用のピースを当てはめて一つのデッキを作る。このデッキデータを使って戦闘を行うスポーツ。ピースにはいろいろなものがある。パワーが強化されたり、剣を創り出したり、それこそ炎や雷を出したりという魔法のようなものもある。

なんにしろ、どれも何世代か前から見れば「まるで魔法のようだ」と言うんだろう。「発展した科学は魔法と同じ」なんて、よく言ったものだ。

このEFはある時いきなり発表された。なんの前触れもなく、そういきなり。その瞬間から、世界中ではEFの話一色に染まっていた。

そしてあっという間にEFは世界共通の人気スポーツとなった。

今では、EFの専門校もあるくらいで、とにかく今この世界はEF無しでは語れないものとなった。


「そういう一月は?」

「俺も続けると思う。お前同様、それしか取り柄が無いからな」

「・・・「それしか取り柄が無い」とは、言ってないと思うんだけど」

「悪い。つい本音が出てしまった」

「フォローする気持ちのかけらも無い!」


高校時代、俺たちは日本で唯一のEF専門校、まあ名前も「EF科高等専門学校」と、まんまだがそこに通っていた。通称「EF高校」は日本唯一ということもあって、競争率も相当のものだった。

それに合格出来たんだから、俺も香織もEFの才能に関してはそこそこあったと言えるのだろう。


「まあ、私たち〜Aクラス卒業だしね〜」

「三年生になってギリギリだったろうが。時期においても実技の成績においても」

「そういう一月だってそうだったじゃん!」

「時期が遅かったのはよりクオリティを上げた上での合格を狙ってたから。実技の成績はそれに伴って説明する必要は無いと思うが、反論はあるか?」

「・・・嫌な性格してるよね、一月って」

「いちよ言っておく、今更だとな」


EF高校には、A・B・Cと三つにクラス分けされている。Aが良く、Cが悪いと言ったように。

俺たちは入学するまでは全く、EFとは無縁だった。興味はあったものの、手は出してなかった。何となく勉強したくなかったという理由で、受けてみたらイイ結果が出たという、なんとも不純な理由である。


「けど、筆記は私の方が良いじゃん」

「・・・全く、神はろくでもないジョークをかますものだな」

「ジョークじゃないし、マジだし。というか神様のせいにしない。そこは個人の実力でしょ」

「・・・お前にそんなことを言われるなんて夢にも思わなかったぞ、本当に。例え宝クジで一等が当たっても、道端で100万円拾っても、お前にそんなことを言われるなんて思わなかった」

「あれ?なんで私が侮辱されてるの?私が優位に立ってたはずなのに・・・」


何故か筆記だけは、香織の方が良い。あいつが頑張って勉強してる所なんて、見たことが無かったのだけれど。まぁ、そこは香織の言った通り、特別頑張った訳でもない俺があれこれ言うのは、勝手というもので・・・。


「俺の知らないところで頑張ったんだな、お前」

「いや、ほとんど一夜漬けだけど」

「・・・・・・」


素直に褒め称えた俺の気持ちを即効で無にしやがった。 そしてそれを何の悪気も無しに言うところが、余計に腹立たしい。


「一月はさ~」

「ん?なんだ?」

「高校生活、楽しかった?」

「・・・ああ」

「それっていつもの「この瞬間が永遠に~」とか言う奴?」

「・・・何の面白みも無い。ひどくありきたりな日常。退屈な毎日」

「けど、それがいいんでしょ?」

「そう、それが俺にとって心地いい」


そう、非日常(イレギュラー)なんていらない。どこの誰もが経験しているような、そんな日常(レギュラー)が俺には心地いい。


「だからって、ずっと繰り返していたいって、やっぱ一月って変だよね」

「そんなハッキリと面と向かって言われたら、俺でもそれなりに傷つくぞ」

「だってそれ相当じゃん。確かに楽しかったけど、何度も何度もって、何それ?悪夢?」


価値観など人によって違うなんてことは、とっくの昔から分かっていたわけで、そして自分の価値観(それ)を他人に押し付けるつもりもなく・・・。


「けど、一月のそういう考えって面白いよね。私、けっこう好きだよ」

「・・・そうか」


それでも理解してくれている人がいるってことは、何気に嬉しいものだったりする。


「まぁ、そんなことありえないんだけどね」

「まぁな」


そう。ありえないんだ・・・ありえるわけが・・・ないんだ。


「時間は流れて進むもの!だから、私たちは生きてるの。でしょ?」

「・・・あぁ、そうだな」


そう、時は流れ続ける、進み続ける。・・・移り変わるもの。それは覆されるものではなく、世界の理そのもの。・・・そう、変わらないんだ。



君はあの頃に戻りたいのかい?



「・・・!」

「ん?どうかした?」

「いや、なんでも無い・・・」


なんだ、今の・・・?誰の声・・・だ?



もう一度問おう

君は戻りたいのかい?



・・・やっぱり聞こえる。一体なんなんだ、この声は。



君は極めてありきたりな、日常を

望んでいる。違わないかい?



・・・あぁ、その通りだ。俺は普通が欲しい。



そして、そんな日々がとても

愛おしい。



ああ。



繰り返したくなるほどに?



繰り返したくなるほどに。



もし繰り返せると君に言ったら?



何?


なにを言っている?繰り返す?時間を?そんなことは出来るはずが無い。

・・・いや、それは俺の思い込みなのか?可能・・・なのか?

だとしたら、俺は・・・。


繰り返したい。出来るのなら。



・・・そうか。そう言うと思っていたよ。ならば、君の望み通り、戻すとしよう、時を。



そして声は途切れた。


「・・・っ!?・・・!?」


何だったのだろうか、今のは。


「・・き!?・・きってば!?」


夢?幻?俺がおかしくなっただけ?・・・いや、確かにさっきまで誰かと話していた。


「・つき!」


何者だったのだろう?聞けなかった。忘れていた。・・・本当に?

さっきまでのこと、俺の意思はあったのか?あいつに・・・操られていなかっただろうか?

そんなふうに思うような、何とも言えない感覚。恐怖ともまた違った、背中にへばりつくような悪寒。

まるで全てが、あいつの思惑通りに進んだのではないか。そう思ってしまうような、不気味な瞬間だった。


「一月!一月ってば!」

「!!・・・悪い、ボーッとしてた」


どうやらさっきから声をかけてくれていたようだ。


「大丈夫?どこか具合が悪いとか?」

「いや、特に問題は無い。ちょっともの思いにふけてただけだ」

「そう・・・。ならいいけど」


こんな奴にも心配かけたくないと思っているのだから、伝えるべきじゃないだろう。どうせ俺の頭が作り出した変な幻か何かだろう。大学生という新しい環境に不安でも感じているのだろうか?


「・・・ねぇ、あれなんだろう?」

「うん?」


香織が指差した方向には、なにかが光っているように見えた。


逃 げ ろ


理由なんか無い。本能的ななにかが俺に告げた。


「一月、なんか・・・来てない?」

「っ!逃げるぞ!」


咄嗟に香織の腕を掴んで走り出した。


マズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイ


変な冷や汗が出てくる。体の底から警報が鳴ってる。あれに捕まるな。捕まったら危険。生きたければ逃げろ。


怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い


なんでこんなに恐れてる?俺はあれの何に、こんなに怯えてる?俺は何かを・・・知っている?


だ が ・ ・ ・


光のようだと言うのなら、それはもちろん速いわけで


「っ!?一月っ!!」

「香織っ!!」


俺たちは白いそれに包まれた。












「・・・う、うーーーん・・・」


目を開けると、目の前には桜が咲き誇っていた。


「ここって・・・」


どう見てもさっきいた場所、あの河原だ。

どういうことだ?俺たちは変な光みたいのに包まれて・・・。


「・・・香織、香織!」


さっきまで俺が掴んでたあの腕は無く、本人もいない。いったい、何が・・・。


「う〜ん、呼んだ?」

「!?」


声のする方へ顔を向けると、そこには香織がいた。けど、何かがおかしい。


「なんでお前、高校の時の格好してるんだ?」

「なんでって・・・」


そんなの分かってる。ただ、目の前のことから逃げたかっただけ。アイツの言ったことが現実だと認めたくないだけ。


「EF高校。今日から私たち、EF高校生じゃん?」

「・・・!」


どうやら俺は本当に過去に戻ったらしい。












さて

君は二周目の高校生活

どのように過ごすのかい?

君が望むような、極平凡でありきたりな日常

そうなることを切に願っているよ







私が飽きなければ

どうでしたでしょうか?

少しでも興味をもっていただけたのなら幸いです。

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