会議場
イズニアさんが扉を開いてくれ、促されるままセアは部屋に入った。そこには長机といくつかの椅子が置いてあった。
「好きな席に…って言われても困りますよね。こちらへどうぞ」
イズニアさんが近くにあった席を引いた。そこに座れと言われているような気がしておとなしく座った。セアが座るとイズニアさん、リントさん、ヘルヴィックさんの順に椅子に座った。
「では、こちらが今回依頼した魔物の資料になります。といっても特徴などは、目撃者から集めたものしかないのですか」
一枚の紙を渡された。その紙に書かれていた分量は極めて少ない。しかもまとめられているのは外見のことだけ。その量で判別しろというのか。思わず眉間に皺がよる、といっても顔の半分はフードによって隠れているからほかの人からは判別できないだろうけども。
なんとなく困っている雰囲気が伝わったのだろう、声からしてリントさんが少し補足をしてくれた。
「その紙に書かれているのは主に外見のことになります。能力は判別できなかったそうです。」
「なぜ?攻撃を受けたと、依頼の説明のとき、いっていましたよね」
「魔法を使ってくる様子もなく、ただ噛み付いてきたらしいのです」
リントさんは特に感情を込めずに情報を伝える。口に手を当て、考える。魔物という存在は普通単体で動くもの。また、縄張り意識が強く、自分のテリトリーが荒らされた場合は攻撃を加えるが基本的に攻撃はこちら側が刺激をしなければしない。魔物が出現する条件はいくつかある。魔物がいると言われている場所に必ずしもいるわけではないのだ。
「…確認、してもいいですか」
「どうぞ?」
リントさんの声がした。この場で取り仕切るのはどうやらリントさんのようだった。
「魔物が出たのは一ヶ月ほど前でしたっけ」
間髪いれずにそうです、と返事が聞こえた。
「その前にそこで魔物が確認されたことは?」
「こちらで確認した限りではないです」
ふむ、では前からいたわけではないらしい。
「村人側から攻撃をしたという報告は」
「ないですね、魔物が現れたときの報告書を頂いたのですが、だいたいその場にいた村人たちの話では突然魔物の群れが現れて自分たちを攻撃してきたとしか」
「縄張りを荒らしたという可能性は?」
リントさんは首を横に振った。
「なぜないと言い切れるのですか」
「魔物の縄張り特有の、瘴気が漂っていなかったと報告されています」
瘴気というものは濃い霧のようなもので、長時間すってしまうと体に害を与える毒霧のようなものだ。瘴気の特徴は色がついているのである。魔物の性質にもよるがほとんどの場合毒々しいまでの紫である。それが漂っていなかったということは縄張りにしていたわけではないということである。つまり、その魔物たちはそこがテリトリーではないということである。
今回は会話メインですー。