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彼女の人付き合いの仕方  作者: しゅか
初めてのお仕事
2/14

ご案内

この店は薬草屋もしているが本業としているのは魔法であった。


魔法というものは一部の特別な人間を除き普通の人間には扱えぬ強大な力とされていた。


本来、人にはある一定数の魔力が備わっているとされる。しかし、一定数を超えた魔力を備えた人間がごくまれに生まれる。


その人間は人が扱えぬ魔法を操り、人知を超えた所業をしてみせるのだと、魔法を操れるのは、人を超えた魔力を持つ魔女のみだと、言われている。


しかし、強大な力というものは代償がつきものである。その代償がなんともまあ極悪非道なものであると多くの人が語っている。強大な力を持っているものはそれだけで差別されやすい。


しかも、魔女にはある特徴がある。


彼女たちは魔力に目覚めるとその人本来の色を失うという。世界を塗りつぶす黒に、彼女たちは変化する。ある一説には体に留められなくなった魔力が外に出て、それが彼女たちの体に影響するとされている。


具体的には、魔女になる前の髪の色はどんな色でも、なってしまえばすべて黒に変わってしまう。


様々な体の変化が起こっているはずだが、そのことを調べる前に彼女たちは生家を出る。自分が魔女になったと知られぬように。そうして魔女になった彼女たちは、誰も知らぬ場所でひっそりと暮らすのだそうだ。差別がひどいから、家をでるという理由もあるが、一番の理由は魔女狩りが近頃起こって いるからである。


昔、といっても今から40年ほど前であるが王家が政策として増えすぎた魔女を減らすため、魔女狩りを行ったのである。少しでも色が黒ければその場で処刑されていた。


魔女だけでなく、魔女を匿ったとしてその家族なども一緒に。そのようなことを行っていたので、彼女たちの多くは王国を出ていった。だから、この国に残っている魔女というものはほぼいないに等しかった。


「魔女殿に、依頼をしたい」


そう、よく通る声で目の前のお客、いや依頼人は告げた。ローブを目深にかぶっていた娘は声でようやく依頼人が男であると認識した。娘は少しだけ顔を上げ、了承の意を伝えるために頷いた。


「こちらへ、お師匠さまのところまでお連れいたします」


ゆっくりと声をかけ、さっそく案内しようとした娘だったが、依頼人に少しお待ちくださいと制止させられた。


なんなのだろうと考えていた娘であったが店の扉があく音がして、そちらのほうに目をやった。いつのまにか依頼人は扉の方まで歩いて行ったらしい。あまり顔を上げることがない娘はじっと、依頼人の足元を観察していた。


見たことがない靴である。この辺の町民ではないと判断していた。

しかし、身分がわからない。失礼があったらどうしようかと考えていた。あまり人と話したことがない娘は度々依頼人を怒らせていた。


そのおかげで依頼を潰しかけたこともあった。最近身入りが少ないので、この件を潰してしまったらこの先どう食材を調達すればいいのかわからない。それは由々しき問題であったので、絶対にヘマをしないようにと心に誓っていた。


「あの、私の連れを同伴させてもよろしいでしょうか?」


依頼人はいつの間にか娘の前に立っていた。びっくりしすぎて声がうまく出なかった娘は大きめに頷いた。


「では、ご案内をお願いします」


いつの間にか連れも目の前にたっていたらしい。足音を消す職業なのか、この人たちの趣味なのかわからないがなんとなく、得体の知れないものとして娘の中にひっかかった。


「…こちらに、なります」


そうして、娘は彼らをカウンターの奥の扉へと導いた

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