第二話
日記が本物だとしり、登場人物をいち早く殺害するため純也の母校を訪れる。
「現実」
それからは前と同じようにパソコンへ向い黙々と生活を自分の部屋で過ごした。
部屋でパソコンを使い続け、今までどおりの生活を送り、日記を購入した日から三日がたとうとしていた。
そして、三日目の夕方。
恐怖体験の始まりの合図であろうノックが健の部屋へ響いた。
「なんだよ。」
母親は少し間を置いて口を開き始めた。
「あのね。島根のお祖父ちゃんが亡くなったわ。交通事故らしいの。だから明日から島根へ行くことになったから。」
「え?」
体が熱くなるのを感じた。ぞっと首筋あたりの血の気が引く。
まさかな。
健はふと三日前に買った本を思い出した。
そして本を手にとってルールを読み直した。
「この本を開いて日記内容を遂行しないで、ニ日間たつと、三日目から一日ごとに周りの人間が死に至る」
本を買ったのが三日前だ。二日の間が空いて三日目の今日から身の回りの人間が一人ずつ死んでくのか。
そして七日目には健も死ぬ事になる。
緊張が走る。
暗闇に慣れているのにこの日だけは暗い部屋に恐怖を感じた。
そして久しぶりに電気をつけた。
こんな馬鹿な話があるのか。夢でも見ているのか。
しかし現に一人日記のルール通りに死んでいる。
ここから先どうすれば。
しかし健は冷静に考えた。
あと一日待ってみよう。
ただの偶然かもしれない。
現状維持を決断した。明日もし俺の身の回りの人が死んだら、
その時は・・・・
健は何も思いつかなかった。
とにかくこの本が本物かどうかを確かめなければならない。
緊張した面持ちで一日がたった。
あっという間だった。この一日は生きた心地がしなかった。
珍しくパソコンでチャットをしないで、一日中ベットの上で、上を見ながら横になっていた。鼓動が聞こえる。軽く吐き気がする。めまいもしそうだ。
テレビをつければ何か情報が入るかもしれない。
そう思いテレビをつけた。
親は島根に行って家の中は俺だけだ。自分で情報を手に入れなければならなかった。
チャンネルを回して、ニュースを探した。
ニュースでチャンネルを固定した。しばらく見てても関連した情報が入ってこない。
パソコンで探したほうが早いと思いパソコンの前へ座った。
そしてインターネットを開いて探してみた。
インターネットでも関連した記事は出てこない。
インターネットで記事を探して20分。テレビのニュースから衝撃的な発言が聞こえてきた。
「名古屋市緑区の路上で男性二人が自転車で二人乗り運転をしていたところ乗用車とぶつかり、病院へ転送されましたが、まもなくふたりとも死亡しました。死亡したのは、春日良一さん20歳。河合正孝さん20歳。」
決定だ。この本は本物だという事が証明された。
健に焦りが生じる。まさかあのふたりが。高校で唯一中の良かった2人だ。
高校ニ年までは一緒に遊んだりもしてた。
どうすればいいんだ。
本の内容だとやはり遂行と言うのは登場人物を殺せと言う事なのだろう。
人殺しなんて出来るわけがない。
しかしあと三日で日記の登場人物を殺さなければ、肉親も周辺の人間すべてが死んでしまう。そして四日後には俺も死ぬ。
やるしかないのだ。残された時間は二日とあとわずか。
健は一生分の労力と精神力を使うだろう。
健は本の内容やルールを改めておさらいをし、これからの事を考え始めた。
「焦り」
今の時間は三日目の21時。健は本の内容を落ち着いて詳細的に考え始めた。
2日と数時間で身内の者すべて死ぬと内容的にそう読み取れる。
日記の遂行命令は書かれていないが、この青山って言う少年と、杉浦って教師と父親の事が悪く書かれている。
おそらく遂行と言うのはこの3人を殺せって事だろう。
母親の桐原和子死亡と書かれてある文章はどういう意味だ。
この日記通り、89年の7月4日に死亡したのかもしくは、この本を前に読んだ人が日記を遂行させて、実際に殺したのか。
どちらにしても健の生きるすべはあと三日弱の時間でこの登場人物を殺さなければ、身内も自分もすべて死ぬ。
こんな現実離れした内容は誰に話したって信じないだろう。
しかし、実際に身の回りの人間が3人死んでいる。この本は本物だ。
けれど健はこんな不可能な事に疑問を抱いていた。
17年前の奴なんかどうやって探すんだよ。
第一、登場人物といったって苗字だけしか書いていない。
手がかりがなさ過ぎる。
このまま、三日たって俺は死んでいくのか。
そう思うと、健は凄まじい恐怖を感じ、青ざめた表情をあらわにした。
この時ある事を思いついた。
日記最後の89年8.31。日記の内容に書かれていた内容が死を意味し、実際に少年が自殺していたら、ニュースになっているはずだ。まずはここから探してみよう。
パソコンを起動させ、インターネットを開いた。
図書館や、過去の事件を調べるために警察に行く事も考えたが、一番使い慣れているパソコンを使って探す事を優先した。
そして30分で過去のニュースがまとめてあるサイトが出てきた。
かなりの数の事件がおきている。
年代別に89年8月と検索した。
・・・・
あった。
桐原純也死亡。
ほんとに自殺をしていた。すぐに目についた。
「名古屋市中川区、区内の高校3年生桐原純也君自殺。受験のプレッシャーに負け自殺か。父親、虐待の容疑も認める。」
中川区ってすぐそこじゃないか。こんな近くでこんな事が起きていたのか。
89年の時の高校三年生、18歳か。今生きていたら35歳か。登場人物の青山も35歳でおそらく家庭も持っているんだろう。
青山を殺す事を考えたら気の毒に思えた。
まずは中川区に直接行って、もっと桐原純也の事を調べて、一刻も早く、この三人に近づいて殺さなければ。
健は部屋を出た。地図と殺人用のナイフを持って。
一階に下りて、母親の目を盗み引き出しから現金を10万円ほど持ち出した。
大金がここにおいてある事は前々から知っていた。
外のクラクションが聞こえた。
タクシーを呼んでおいたのだ。
着いたらクラクションを一回鳴らすようにと。
タクシーに乗るのは小学生以来だ。
ドアを開けて、タクシーに乗り込んだ。
心地よい匂いがした。
こんなほんのちょっとの事でも健にとっては冒険だった。こんな健が本当に人が殺せるのだろうか。
「お客さんどこまで?」
運転手が聞いてきた。
「とりあえず中川区に行ってくれ。」
「中川区に付いてからどうしますか?」
「え・・まだ決めてないけど。」
こんな目的地もろくにいえない客は初めてでなないか。
と運手主は思ったに違いない。
「わかりました。ついたら言います。」
そしてタクシーは中川区に向けて発進した。
車自体何年ぶりだろうか。公共交通機関も利用しない。
高校までは自転車で登校していた。自転車以外の乗り物に乗ったのは中学生依頼かも知れない。
しかしそんな思いもすぐに捨て、すぐさま自分の置かれている立場を考えた。
へたすりゃ三日ですべて死ぬんだぞ。もし仮に生き残ったとしても刑務所だ。殺した被害者の家庭や、人生をすべて奪うのだ。
健は今まで自分以外何も興味がなく、いらない人間だと思い込んでいた。
しかし、この境地に立たされて、少しばかり考え方を変えつつあった。あの日記の内容も驚かされた。
こんな悲しい少年が世の中にいる事が考えもしない事だったのだろう。
いろいろな事を考えているうちに運転手に声を掛けられた。
「中川区です。どうしますか?」
健は考えたが、ある発想を思いついた。
「うんと。。あの少しお尋ねしたいんですけど。」
「はいはい。」
運転手は愛想よく応答してくれた。
「中川区内に高校はいくつぐらいあるんですか?」
「中川区の中に高校は一つだね。」
「本当ですか?」
「うん。一個だよ。」
驚いた。区内で一個だったらすぐにわかる。桐原純也が区内の高校生って事は間違いなかった。
案外早くに3人に近づけるかもしれない。
「じゃあその高校に行ってくれませんか?」
「了解。」
車内で運転手に何の用事か聞かれた。
今置かれている立場、今からしようとすること、すべてをぶちまけたかった。しかしふっと日記の内容を思い出した。
「この本の事を誰かに悟られてはならない。悟られれば、当事者は死ぬ。」
内容を思い出し、健は家の都合とだけ答えた。
運転手も不思議な顔をしていたが、強く問いつめてこなかった。
健は改めて思った。完全に孤独な戦いなんだ。助けは受けられない。怖かった。叫びたかった。
こんなはずでは。そう健は思い続けていた。
「関口高校につきました。」
運転手に言われて健は財布を出した。
そして一万円のまま渡して、細かいおつりをもらいタクシーを出た。
タクシーを出ると、肌寒さを感じた。
これからどうすればいいのか、それを考えるために健は高校前の小さな公園に向った。
「殺人計画」
公園のベンチ内で健はこれからの行動について考えはじめた。
何も考えなしに高校まで来たが、17年前の事件の関連したことなどこの高校が世間に教えるわけがないと改めて考えた。
そして、ある発想が思いついた。一人目の殺人の事だ。
日記には杉浦の事が書かれていて、この事から桐原の高校教諭の事がわかる。
すなわちこの関口高校の教諭をやっていたんだ。
とにかく、高校に入って、事務室に行くんだ。
事務室で、杉浦先生はいるかと聞く。その杉浦先生なら桐原純也の事を絶対覚えているはず。おそらくいない。教え子に死なれて黙々と教師を続けていけれるとは思えなかった。
杉浦先生がいたとしたらどうする。俺は赤の他人なのだ。
杉浦先生となんか関わりがあれば、別だが。
いろいろ考えているうちにある考えが浮かぶ。
脅してみるか。
しかし、内容は?相手がびびるような内容じゃなければならない。
しかし、健には少しばかり確信が持てるようなネタを持っていた。
17年前の桐原純也の事だ。この事を彼に問い詰めれば、何とかなるかもしれない。
そしてあるシナリオが頭に浮かぶ。
事務で杉浦を呼ぶ。杉浦が学校を辞めていたら、警察を装い、杉浦の住所を聞く。こんなに上手くいくとは思えないし、上の管理の人が出てくるかもしれない。そうされた場合上手く逃げる。そしてこの事が上手くいけば事務の人が杉浦の住所を教えてくれるかもしれない。
学校を辞めてなくて、学校に滞在していたら、新聞会社の記者を装い、杉浦を呼ぶ。
留守のようだったら、連絡先を教えてもらう。
教えてもらえなかったら、また来るといい、その場を立ち去る。
杉浦ともし会えたら、桐原純也のネタを糧に、脅して、二人きりになる。
そして公園に連れて行き、持っていたナイフで殺す。
おそらく、犯人の最重要人物として、事務に行った俺が浮かぶだろう。
なので変装をする。かつらとめがねだ。一応偽名を実際に存在する人の名前を使う。
警察官の手帳も欲しい。。
しかし、そんなもの急に用意できる訳がない。探すんだ。
そう考え健は近くの漫画喫茶に入った。そしてパソコンで名古屋市内の事を調べた。
名古屋市内ならタクシーでいける。金はある。
探していると、名駅付近にマニア向けの小物売り店が一軒だけあった。
健は少しほっとした。
内装の画像があったので見たら、警察官の服やら、消防士の服やらいろいろとあった。
ここなら警察手帳も置いてあるはずだ。
すぐさま行こうと思い、住所を紙にひかえて、タクシーを呼んだ。
そして運転手に紙を渡した。
店には30分で着いた。運転手には店の前で待機してるようにいった。
運転手はこんなマニアックな店に行く健をどう思ったのだろうか。
店にはいろんなものがあった。
チアガールの衣装まである。こんなものどうするんだと健は思った。
そしてお目当てのかつらと、めがねと、警察手帳を探した。
お目当てのものはすべてあった。
警察手帳は2万円もする。高かった。
しかし躊躇はしなかった。
茶髪にクロぶちめがね。つけた様子を鏡で見たがこれは本当に自分なのかと疑った。
そして店をでて、タクシーに乗り込んで、行き先を伝えるため口を開いた
「関口高校へ行ってください。」