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6.せわしないごあいさつ

side ちょっと置いてかれ気味なイケメン


「・・・という具合に助けに来た騎士、ってことで理解してもらえるかな?」


 伯のご子息という青年に向かって簡単に名乗る。二人いる子息のうち、後から飛び込んできた方が次男だという。家族の無事を知るなり安堵で腰を抜かしたその心根は、傍目に見ている私にとっても非常に好意の持てる青年だと思える。尤も戦場に跳び込むような真似はいただけないが・・・。


「・・・分かった。それはいいんだけどさ、何で騎士が助けに来れるんだ?宗教都市(セノワスト)って、あんまし行ったことないけど歩いたら二日はかかるぜ?」

「こら、失礼だろう!騎士様に何と言う口の聞き方をしとるか!」

「伯、構いませんよ。自分は若輩の身です、歳も近そうだ。私は19だが、君は?」

「・・・17。確かに騎士にしては若いよな。」


 17か、彼の言うとおり自分も若い方だが彼も若いな。

 とはいえ、彼の所作振舞はたいしたものだ。とても17の若者とは思えないほど隙がない。そういえば彼は腰に剣・・・いや刀を差している。おそらくだが剣の心得があるのかもしれないな。

 しかし・・・あの刀、どうも見覚えがある気がするのだが・・・何だったかな?


「・・・騎士さん?」

「え、ああ、すまない。少し考え事を、ね。」

「ならいいけど・・・結局答え聞いてないよね?何で来れたん?」

「ああ、任務があってね。・・・っとそうだった!」


 忘れてた!任務で来てたんだった!

 いかんな、如何にここが居心地良いといっても任務を忘れるようでは・・・。むう、一罰必戒、帰ったら素振り追加で100はこなさねば・・・。

 っと、また思考がそれた。よし、まずは済ませてから考えよう、うん。


「伯、本来の自分の任務なのですが、伯に預けた宝具の視察というものです。保管場所まで案内願えますか?」


side 騎士 out




side 礼儀知らず


「・・・行っちまいやんの・・・。」

「仕方ないだろ、本来は視察任務だけのはずなのに助けてくれたんだ。それに本来の任務を済ませたほうが騎士様も落ち着けるだろ?」

「そうねぇ、騎士様も今日帰路に就くのは忙しないわねぇ。今日は泊まっていかれるでしょうし、そのときにお話したらいいわよぉ?」


 兄と母の言葉にそれもそうだ、と頷いておく。実際聞いてみたいことはたくさんあるしな。

 剣くらいしかとりえのない俺には、この世界の就職事情はひっじょーに厳しい。何せつぶしが利かないのだ。剣が出来てどんな仕事があるって、騎士や軍属を除けば冒険者や傭兵、私設SPといった「いかにも真っ当じゃありません」業界が主流だ。実際、俺の同期生や先輩達はほとんど各国の国軍に所属している。俺は親父が政治家なもんだから軍属は最初から諦めざるを得なかった。だもんで騎士になるというのは、俺としても1つの夢だった。まあ、「教会」所属にしては信心薄いの問題だろうけど・・・。

 なんて考えていたら結構百面相してたらしく、兄貴が話しかけてきた。


「あー、考え事か?」

「んー、まあ、ね。ほら、一応俺も騎士になるのちょっとした夢な訳だし?」

「じゃあ益々いろいろ聞いたらいいさ。ひょっとしたら口利きしてもらえる・・・ことはないにしても、聞いといて損は無い事だと思うぞ?」

「だな。」

「じゃあ話変えるけど、その剣・・・いや刀か、どうしたんだ?」

「そうよぉ、そんな高そうな剣、買えるようなお小遣いあげた覚え無いわよぉ?」

「ああ、これ?これは―――――」




「大変じゃーーー!」


 親父が血相変えて飛び込んできた。血相を変える、で辞書引いたらこんな挿絵が載ってるんじゃないか、ってな具合に絵に描いた血相の変え方だ。まあ、辞書なんて引いたことないけど。


「親父、どったの?」

「教会から預かっておった宝具が無くなっておるんじゃ!法力で封印された箱も御丁寧に開いて・・・げほげほっ。」

「父さん、無理しないで。ほら落ち着いて深呼吸、すー、はー。」

「すー、はー、って何をさせおるかぁー!年寄り扱いするでない。そ、そうじゃ、マテウスよ、お前を閉じ込めていた倉庫なのだが、何か見てはおらんか?」


 うーむ、親父ナイスノリツッコミ・・・はいいとしても、宝具・・・宝具ね・・・法力で封印された箱ねぇ、うーん、どっかで聞いたような・・・なんだっけ・・・むぅ・・・ぐう。


「寝るなバカモノ!」

「お、親父タンマ!ジョーク、ジョーク!」

「なお悪いわ!」


―ごちん。


 痛い頭はさておいて先ほどの箱だが、非常に残念なことに心当たりがある。うん、あれだよねぇ、どう考えても・・・。何かやな予感はしたんだよね、取引禁制品だし、部屋の中に場違いな箱だったし、でも、まあ、生き延びられたんだし、きっと悪いことにはなるまい、うん。


「あー、その宝具って、これ?」


 俺は腰に差した鞘ごと刀を取り、親父の前に差し出した。


「な、な、な・・・。」


 うん、見ものだったね。親父が泡吹いて倒れる姿。

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