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15.授業その2「宝具」

side バカではないらしい馬鹿


「ところでおっさん、聞きたいことあんだけどさ。」


 俺は話題を変えたい半分、本当に聞きたい半分で話を切った。何がおかしかったのかは知らないけど、腹筋痛くなるほどの大爆笑の種が俺だなんて、ちょっぴり癪だ。


「ほう、なんじゃ?」

「さっきの説明に出てきた宝具についてなんだけどさ、何か知らないか?俺元々それ調べに来ただけだったんだけど。」


 本当なら図書館で調べるはずだったんだけど、せっかく知ってそうな人がいるのに聞かないテはないよな。何しろ先生なんだし。


「ふむ、そういえばお前さんが宝具の剣を抜いたと言っておったな。儂の知っていることだけでよければ教えてやろうかの。」

「あ、やっぱり知ってるんだ?」

「はっは、騎士養成所主席教官の肩書きは伊達ではないぞ。」

「さっすが。」

「うむ、もっと褒め称えても良いぞ?」

「よっ、連盟国いちっ!」

「わっはっは、はーっはっはっ!」


「先生、それはいいですからその辺で・・・。」

「む?うむ。」


 調子に乗っていたおっさんと俺にゼシカから待ったがかかった。ち、せっかくあと少しで反り返りすぎてひっくり返るところが見れたのに。




「まず、率直に言うと剣が抜けた理由について確たることは儂にもわからん。」


 あ、なんだ、たいしたことねえのな。持ち上げて損した。


「だが、おそらくじゃが何かしらの異変が起きる前触れと考えるのが妥当じゃろ。」

「何かしら、ってと?」

「宝具の伝承には、全て揃ったとき何かが起こるというものがあるんじゃ。それこそ神の奇跡が降臨するというめでたいものから封じられた悪魔が蘇るといった不吉なものまで様々な伝承があるが、その詳細はわかっておらん。書物にも残っておらんでな。」


 へえ~。よくわかんないけど、何かが起きるかもしれないってこと、でいいのかね?

 と、それより気になることが。


「揃った時、ってことは、あの剣の他にも宝具があるってことか?」

「うむ。「教会」の伝承では、宝具は6つあるものとされておる。」

「剣が6本?」

「いや、むしろ武具の宝具はあの剣のみじゃ。あれは例外みたいなもんじゃな。」

「ええ、私もそう聞いています。最も剣以外の宝具については何も聞いていませんが。」


 街道を来る最中に、ゼシカの知ってることを聞いたことがあったっけ。けどゼシカも、確認任務だけのつもりだったから宝具についてはほとんど知らなかったらしい。


「・・・ゼシカ殿、危うくない範囲で情報を自分なりに集めるのも任務のうちと教えたはずじゃが?」

「だよな。考えてみりゃゼシカが知ってたら俺来るまでもなかったんだもんな。」

「う・・・、肝に銘じます。」


 また(といっても別の意味でだが)落ち込んだゼシカはほっといて、続き続き。


「で、他の宝具ってのは?」

「うむ、まず件の「抜けない剣」、他は「白紙の聖書」「書けない羽ペン」「透明のインク」「開かぬ小箱」「鍵穴無き鍵」という。」




 え、それって・・・。




「ちょっとまった!それって文字通りだと、全部「がらくた」だろ!何の役にも立たねえじゃんか!」




 俺の発想は間違ってないと思う。剣は抜けなきゃ斬れないし、聖書が白紙じゃ読めない。羽ペンが書けなきゃペンじゃないし、透明のインクで書いたって読めない。箱は開かなきゃただの四角だし、鍵ってのは鍵穴とセットだろ?


「うむ、だがそれらは皆、強大な法力を秘めたマジックアイテムなんじゃ。「教会」お墨付きのな。」

「「教会」ってモノオタクなのか?いくら法力あったってそんなガラクタありがたがるなんて発想俺にはないぜ?」

「も、モノオタク・・・なかなか斬新な発想じゃな。」

「マテウス、そこでさっきの「揃えたらなにか起こる」っていうのが重要なんだよ。神か悪魔か、いずれにしても教義に触れる重大な事なんだろう。」

「あ、そっか。」


 あ、復活してきた。


「と、ともかく、抜けたというのは何かしらのサインなのかもしれん。宝具と世界の動向には目を光らせておくべきじゃ。ゼシカ殿、左様心得られよ。」

「は、はっ!」

「って言ったって、ここ牢屋だぜ?どう目を光らせんの?」


 あれ、なんか、ジト目が4つ。


「マテウス、ひとつ聞くけど、冗談?」

「いや、大マジ。」

「・・・。」

「・・・。」

「・・・。」


 え?え?


「マテウス、暗いとかそういう話じゃ・・・。」


 あ、わかった。


「そうじゃなくって、情報の来ないところでどう調べるんだって話だろ!」

「あ。」

「うむ、言われてみれば確かに。」


 こいつら・・・いっぺんシメていいですか?バカにもバカ扱いというものは分かるのデスヨ?


「まあ、ある程度の情報は看守から仕入れるしかないだろうね。」

「ゼシカ殿、浅慮じゃぞ。ずっとここにいられるわけでもなかろう。お前さんがたにどういう処分が下りるのかは想像がつく。」

「ああ、で、その処分とは?」

「・・・。」


 ・・・おいおっさん?何で黙んの?


「・・・まさか・・・。」


 ・・・ゼシカまで、どうしちゃったのさ?


 と、ゼシカが突然こっちを振り向いた。




「マテウス、なんとかしないと、私たちはここで死ぬ羽目になる!」




「・・・え?」


 ちょっとまて、どゆこと?


「お前さんらを裁いたのは評議院の連中じゃ。ならばお前さんたちを殺す理由は3つある。」

「3つ?」

「一つは、奴らは自分らの権力にどっぷり浸っておる、お前さんが暴れたというのは権力者であるというプライドに触るじゃろう。奴らから見れば、お前さんたちは反逆者じゃからな。」


「そんな、身勝手な!第一あいつらは・・・。」

「暴れた、ってことが問題なんだ。露骨な愚弄だったとはいえ、あそこでの暴力は下策だった。奴らはあそこの法を握っていると言っても過言じゃないんだ。」

「・・・くっ・・・。」


 俺、ゼシカを巻き込んじゃった、って事?


「とはいえ、暴れていなくても結果は同じだろうね。「青天」隊は評議院に嫌われてるんだ。指揮権が自分たちにないからね。」

「それが2つ目じゃな。それともう一つ、これは奴らにも言い分がある。」

「・・・なんだって?」


 言い分?


「宝具の剣を抜いた、ということは、世界に何かしらの混乱要因が起こるということじゃ。その芽を摘むために、抜いた本人を消したいということじゃろうな。」

「んなっ!」

「奴らにも外聞というものはある。マテウスの「抜いた」ってこと自体を嘘だと処理することで、なんとかことを収めようとしてるんだ。そしてその方向に舵を切った以上、後戻りはおそらくしない。」

「・・・口封じ?」

「有り体に言えばそうじゃろ。」




 ふざけんな!


 そんなことで殺されてたまるか!


 俺は嘘なんかついてねえ!




「わかってる!だからなんとか方法を・・・。」

「二人とも落ち着け!」


 おっさんの怒号、雷のごとし。

 ふたりして一斉に動きが止まった。


「ともかく、看守に話を聞くのが先じゃろうに。オタオタしておっても何も進まんぞ。」

「そ、そうでした。ところでその看守はどこに?」


 おっさんの言葉に、俺も頭に上った血を下ろして考える。そういえば、さっきから看守の姿がないよな?








「看守なら、あと1時間は戻ってこないわよ。」








 え?


 この声・・・?



マテウスが狙ったライデルの転倒ですが、

多分ご想像の通りです。


某忍者漫画の悪役忍者頭を思い出してください。

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