13.牢名主の正体
もはや言い訳も利かない放置っぷり、まずはお詫び申し上げます。
実は新しい仕事が決まりまして、しばらく慌ただしい生活してました。
ですが現在やっとこさ落ち着き、隙間を塗ってネタ帳は書き溜めてたので、今後しばらくここまでの放置は多分しなくて済むと思います。
なので、どうか今後も見捨てずお付き合いいただければと思います
湿っぽくてすみません、では本編をどうぞ。
side 役たたず
・・・・・・・・・・・・ここ・・・は・・・
・・・・・・どこだ・・・?
・・・
「・・・カ殿、ゼ・・・の!」
わたしを・・・よんでいるのか・・・?
でも・・・わたしは・・・
「・・・むをえん、看守よ、耳ふさげ。」
・・・え?
・・・殺気?
「起きんかあああああ!!たるんどおおおおおおる!!!」
「は、はっ!失礼いたしました!」
「久しいの、ゼシカ殿。」
「はっ、ご無沙汰をしておりました!」
この方と最後に会ったのは確か任務で宗教都市を離れるより更に3日前だったから、実際にはご無沙汰というほどでもない。
ただ、私にとって苦手な方でもある。正直さっきの叱責も初めてではないもので、見習い時代によく受けたものだ。以来あの声で怒鳴られると、どうも体が勝手に反応する。これは私に限ったことではなく、この方に教鞭をふるわれたことのあるものなら誰もがそうなる。
まあ、憔悴のあまり失神していた私が無様といえば、その通りなのだが。
「しかし、ここは何処なのでしょうか?見たところ牢のようですが・・・。」
「ウム、牢じゃ。」
なるほど、間違ってはいないのか。
では、なくて。
「い、いえ、それは判るのですが、私は何故このようなところに・・・。」
「しらん!」
・・・。
相変わらずの理不尽だ。
「しらん、って、そんなぁ。」
「そんなもへったくれもないじゃろ。そもそも儂は先に入ってたんじゃし、知っているはずもないというのが道理じゃ。聴くなら儂じゃなくって看守じゃろに。」
「ああ、まあ、そうですね。」
「それより、お前さんの連れの治療が先じゃ。そもそもわざわざ治療のために同室にさせたんじゃし。今看守に治療道具持って来させとるから、届くまでに応急処置の法術かけとくぞ。」
「あ、はい・・・ってマテウス!なぜそんなにボロボロなんだ!」
「って気づいとらんかったんか?」
振り返ってみるとボロボロのマテウス。はっきり言って今気づいた。
そこまで自分の判断が鈍っていることに自己嫌悪の情が頭を覆いそうになるが、なんとかこらえる。今大切なのは、マテウスを治すこと。
私は既に詠唱に入っている法術にあわせて、精一杯の法力を流し込んだ。
side ゼシカ out
side ねぼすけ
・・・痛い。
いや、別にやられたのが痛いわけじゃないはずだ。ついさっき、痛みが取れていく感覚があったばかりだ。あれって確か、術法医にかかったときの感覚に似てる。生傷の絶えない学校だったから、割としょっちゅうかかってたし間違いない。
じゃあなんで痛いのか。
ちょっと待て、痛いのはどこだ?
腕、異常なし。
足、異常なし。
胴体、腹は減ってるけど異常なし。
頭、痛い。
ああ、なんかだんだん思い出してきた。俺一回起きてるわ。んで、なんで痛いかって?多分目ェ開ければわかる気がする。
ぱちり。
うん、やっぱり。
目の前に広がってた光景は、薄暗い牢屋。
そして、オロオロしてるゼシカと、その足元でのびてる見知らぬおっさんが一人。
つまりあれか。俺は急に起き上がって、あのおっさんに頭突きかましちゃったわけか。
うん、頭でよかった。口だったらと思うと鳥肌どころじゃないからな。
俺が体を起こすと、どうやらゼシカもこっちに気づいたらしい。
「マテウス!気がついたのか?」
「おー、頭がなんか痛いけど、な。」
「ああ・・・それはなんとも言い難いな・・・。」
ゼシカが困惑表情になる。正直笑い飛ばしてもらってもいいんだけど、あのバカ兄貴と違って律儀な性格のゼシカは苦笑いだけで済ましてくれた。
それに、まだ多分余裕ないんだろうし、な。苦笑い出来るだけでも十分だ。
「ところでゼシカ、ここどこよ?見た感じ牢屋みたいだけど。」
「多分本部奥の地下牢。檻の中から見るのは初めてだけど、何度か来たことがある。」
「ってことは、騎士団関係の施設なのか?」
「そのはずだ。ただ実際に人が入るような事態はここ数十年無かったって話だ。そもそも「教会」は警察権限は持っていないからね。」
ああ、確か授業でやった気がする。
「じゃあ俺らは久々の客ってことか?」
「いや、そのはずなんだけど・・・。」
そう言うとゼシカはちらりと横を見た。俺もその視線を追っかけると、そこにはさっきのおっさん。
「この方が先に入ってたみたいなんだ。ちなみに先ほどの法術はほとんど彼のものだよ。」
「へえ、随分効き目のある術だとは思ったけど。」
「とにかくまず起こそう。マテウス、手伝ってくれ。」
「らじゃ~。」
「痛たた・・・。」
おっさん(仮)は割と簡単に起きた。まあ、頭打ってピヨっただけらしいし。
「閣下、大丈夫ですか?」
「うむ、頭が少々痛いがな。」
「ああ・・・それはなんとも・・・。」
なんかどこかで見たやりとりな気がするが、まあ気のせいだろう。
「そちらの若いのも気がついたみたいじゃな。体は大事ないか?」
「え、ああ、おかげさんで。」
さすがに恩人なので、「あと数センチで精神的に致命傷でした」なんぞとは言わない。俺だって場の空気くらい読むのだ。
「マテウス、不謹慎なこと考えているだろう?」
「あ、ばれた?」
「いや、カマをかけただけ。」
「謀ったな!?」
「・・・どうやら君も本当に大丈夫そうだね。」
「ああ、ホント感謝感謝だぜ。」
少々確認の仕方が納得いかないけど、とりあえずゼシカの心配は解けたらしい。それに馬鹿話してればゼシカも暗い考えしなくて済むだろうし、まあ安いもんだ。
「ところでお前さん、何モンじゃ?見ればゼシカ殿と随分親しげじゃが。」
「そっちこそ、って言いたいけどまあ、助けてもらったんだし俺から名乗るのが礼儀か。
俺はマテウス・リードルス。ちょいとワケアリなんだけど、まあ、ゼシカの友達ってことで。」
「リードルス?深緑の街のリードルス伯家か?」
「ああ。うちで起きたゴタゴタで知り合ってな。んでそのゴタゴタの報告に証人として付いてきた、ってとこ。」
うん、ここは話が早くて親父に感謝、ってか。
「で、そっちは?」
「・・・ゼシカ殿、紹介しとらんかったんか?」
「あ、はい。全員落ち着いてからがいいと思いまして。」
「なるほどの。」
「儂は『教会』本部・教皇猊下直属騎士団相談役兼騎士養成所主席教官「ライデル・ファン・ローラント」じゃ。ゼシカ殿の元担当教官じゃよ。」
・・・エーット、ドコカラドコマデガナマエナンデショウカ?
2013/8/7 一部訂正しました。