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ある女錬金術師の試み  作者:
episode 13
38/58

罠とほころび 1

 翌日、マリーはアレックスの暮らす館をおとずれた客人に腹を立てていた。

 その客人とは、リサとビックだ。

「もう! 私は本当に心配したのよ!」

「だから、ごめんなさいってば。でもね、あなたを舞踏会に引きずり出すには、これしかないと思ったのよ。教授ってばなかなか動かないし、ビックと相談して、ちょっとしたお芝居をすることにしたのよ」

 謝りながらも悪びれずにリサは言った。

 ビックはそのとなりに、どこかすまなそうに、けれど少し楽しそうに座っている。マリーは彼を恨めしげに見た。茶色い髪に、繊細そうな顔だち。どこかあどけなさも残しており、保護欲をかきたてる。妹のイーディスとは、あまり似ていない。

「ウエストン卿までこんな悪ふざけに加担するなんて……あなたに対するイメージを書き変えないといけなくなってしまったわ」

 マリーが疲れたように言うと、ビックは明るく笑った。

「はは、そうかもしれないね。でも、僕らは良かれと思ってしたんだよ。

 実際、結果はご覧のとおり、そうだろう? アレックス」

 問われたアレックスは、肩をすくめた。

「まあ、心配して訪ねたのに、元気に仕事している姿を見たときは頭に来ましたけどね。

 それに、最初に話を聞いたときも、なんだか騙すみたいで、あまり気がのらなかったのも本当です。けれど、話を聞くうちに、良い機会だとは思いましたし、ぼやぼやしていると、いつまでも行動を起こせなかったというのは事実だったもので……申し訳ありません、マリー。

 ですが、よくイーディスまで騙せましたね?」

「なに、イーディスは僕が体調を崩すといつも、うつるのを恐れてすぐにおばさんの家へ行ってしまうからね。母と主治医と使用人たちに協力してもらうだけで、すぐに騙せたよ」

「いい気味よ。私、どうしてもあのひとだけは好きになれないの」

 リサは鼻を鳴らして、あっけらかんと言った。

 マリーはびっくりした。リサが、自分の婚約者の家族をそんなふうに言うなどとは、思ってもみなかったからだ。唖然として彼女を見ていると、リサはいたずらっぽくほほえむ。

「騙したことで、嫌な思いをさせたならごめんね。

 でも、私たちはふたりの幸せを思ってやったの。それだけはわかって」

「それについては疑っていないわ」

 マリーはリサのほほえみに苦笑しながら言った。

「だけど、ふたりがいたずら好き、ということもわかったわ。

 だから、これからは用心させてもらうことにするわね」

「ちょ、ちょっと、マリー!」

「いや、彼女の言うとおりだよ。用心しておいた方がいい。そのうえで、君たちをまた罠にはめられるか、方法を考えてみることにするよ。寝込んだときの最高のひまつぶしだ!」

 ビックはそう言って、心から楽しそうに笑い声をあげた。



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