うわさと本音 2
「……本当にもう! もう少し私たちを頼ってくれたっていいじゃない!」
リサは唇をとがらせて、不満げに言った。
「だよね、なんでああやって一人で抱え込むんだろう?
それとも言えない事情ってのがよほどのことなのかな?」
やや諦めたようにクリスは言って、作業に戻った。
「大変そうだし、力になってやりたいけど、マリーの方があれじゃあなぁ。
だからといって、ムリヤリ根掘り葉掘り聞くのもちょっとなぁ」
わだかまりが残るのか、ぼやくようにクリスはつぶやく。
それを耳にしたリサは眉をつりあげた。
「じゃあ私たちは何もできないっていうの!
クリスも意外と薄情なのね、マリーに何度も助けてもらっておいて」
「そうは言ってないだろ!
マリーは言えない事情があるって言ってただろ。
色々聞きだそうとするのもマリーを苦しめることになるってことだよ、僕はこれ以上マリーの負担を増やすような真似はしたくない」
いつもは穏やかなリサが噛みついてきたことに戸惑いながらも、やや憤慨ぎみにクリスは言った。
リサは言葉につまり、次いで肩を落とした。
「もう。
友達が苦しんでるって言うのに、何も出来ないで見守るしか出来ないなんて、なんだか自分が情けなくなっちゃうわ。
こうなったら、教授の方を問い詰めてやる」
「おいおい」
クリスは驚いてリサを見た。
目が据わっている。クリスはそんなリサを見て閉口した。止めた方がいいのは分かっているのだが、ああなってしまったらリサはとまらない。止めようとしたらひどい目にあった。
その記憶がよみがえり、クリスは小さく身震いした。
「じゃ、ちょっと言ってくるわね」
「ほどほどにね」
「多分無理」
リサは怖いくらいの笑顔で言うと、研究室を出て行った。
恐らく陰でこっそり教授とマリーの話が終わるのを待ち、それから突撃するつもりなのだろう。
面倒なことにならなければいいんだけど、と思いながら、恐らくあり得ないなと確信しつつ、クリスはまた作業に戻った。