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交換された部分で、快感を知るまでの話  作者: 魔杖


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第五章:射精―コップを空にする方法

※Pixiv、ハーメルン、ノクターンに投稿しています。

◆静かな日々


 三日が過ぎた。

 鳥飼からの連絡はなかった。

 郁も、あえてこちらからは送らなかった。

 大学の構内では、何度かすれ違った。

 遠くから見かけるだけ。

 鳥飼は、少しだけ顔色が戻ってきたように見えた。

 けれど、体育の授業は欠席していた。

「体調不良」とだけ書かれた欠席届が、教務システムに記録されていた。

 郁は、研究室の窓からグラウンドを見下ろしながら、ふと呟いた。


「……そろそろ、良くなったかな」


 その言葉は、心配と安堵と、ほんの少しの寂しさが混ざっていた。

 鳥飼の生理が始まった日。

 郁は、薬とナプキンと湯たんぽを持って彼の部屋を訪れた。

 あの日のことは、今でも鮮明に思い出せる。

 けれど、それ以来、ふたりの間には静かな距離が生まれていた。

 郁は、椅子に腰を下ろしながら、そっと自分の服装を確認した。

 くすんだベージュのワイドパンツ。

 昨日と同じもの。

 締め付けはない。布の揺れも自然。

 けれど──身体の中心に、じんわりとした違和感があった。


「……また、来てるかも」


 夢精ほどではない。

 でも、何かが“溜まってきている”感覚。

 下腹部が、じんわりと重く、熱を帯びている。

 郁は、そっと息を吐いた。

 鏡の前に立つと、スラックスの前が、わずかに張って見えた。

 昨日よりも、少しだけ。


「……コップが、溜まってきてる」


 その比喩が、ふと頭をよぎった。

 鳥飼が言っていた、蛇口とコップの話。

 ししおどしのように、溜まりすぎると、勝手に“あふれる”。

 郁は、スマートフォンを手に取った。

 鳥飼の名前が、画面に表示される。

 指が、少しだけ震えた。


「……そろそろ、授業の続き、聞いてもいいかな」


 その言葉は、助けを求める声でもあり、学びへの意志でもあった。



◆再接触


 昼休みの中庭。

 ベンチの端に座っていた鳥飼の姿を、郁は遠くから見つけた。

 薄手のパーカーに、柔らかい素材のパンツ。

 顔色は、少しだけ戻ってきているようだった。

 郁は、迷いながらも足を向けた。

 三日ぶりの接触。

 声をかけるだけなのに、心臓が跳ねる。


「……鳥飼くん」


 鳥飼は、顔を上げた。

 驚いたように目を見開き、すぐに微笑んだ。


「先生。こんにちは」


 その言葉に、郁は少しだけ肩の力が抜けた。


「体調、どう? もう少し楽になった?」


 鳥飼は、頷いた。


「はい。まだ少し重いですけど、薬が効いてきて、動けるようにはなりました」


 郁は、ベンチの端に腰を下ろした。

 距離は、ほんの少しだけ空けてある。

 でも、空気は穏やかだった。


「そろそろ、授業……再開してもいいかなって思ってるんだけど」


 鳥飼は、少しだけ考えるように目を伏せたあと、静かに言った。


「僕も、ちょうどそう思ってました。先生の方は……その、調子はどうですか?」


 郁は、少しだけ頬を赤らめた。


「……正直、また“来てる”感じ。夢精にはなってないけど、なんか、溜まってきてる気がして」


 鳥飼は、静かに頷いた。


「それ、わかります。僕も、放っておくと三日くらいで夢精が起きてました。だから、自己処理で調整してたんです」


 郁は、少しだけ目を見開いた。


「……自己処理?」


 鳥飼は、少しだけ照れくさそうに笑った。


「はい。“コップを空にする”って、そういうことです。次の授業は、それについて話そうと思ってました」


 郁は、そっと息を吐いた。


「……じゃあ、今日の放課後、少しだけ時間もらえる?」


「もちろん。旧校舎の準備室、また使えますか?」


「鍵、まだ持ってる。待ってるね」


 ふたりの間に、静かな約束が交わされた。

 羞恥も不安も、まだある。

 でも──“知りたい”という気持ちが、少しだけそれを越えていた。



◆ししおどしの比喩


 準備室の窓から、夕方の光が差し込んでいた。

 棚の影が長く伸びて、ふたりの間に静かな空気が漂っている。

 鳥飼は、少しだけ姿勢を正して口を開いた。


「前に話した、ししおどしのこと……覚えてますか?」


 郁は、頷いた。


「うん。水が溜まって、重さで倒れて、カコーンって鳴るやつ。夢精のことだって、言ってたよね」


「そうです。あれって、身体が“勝手に出す”仕組みの比喩でした。

 でも、今日はその続き──“自分で倒す”方法について話そうと思ってます」


 郁は、少しだけ目を見開いた。


「……自分で?」


 鳥飼は、少しだけ照れくさそうに笑った。


「はい。ししおどしは自動だけど、僕たちは、ある程度“自分で調整”することもできます。

 つまり、溜まりすぎる前に、少しずつ空にしてあげる方法があるんです」


 郁は、そっと息を吐いた。


「……それが、“コップを空にする”ってこと?」


「そうです。無理に触らなくてもできる方法もあるので、安心してください。

 まずは、“どうしてそれが必要なのか”を、ちゃんと知ってもらえたらと思って」


 ふたりの間に、静かな光が差し込んでいた。

 それは、夕方の光でもあり──新しい理解の続きでもあった。



◆空にする方法


 準備室の空気は、夕方の光に包まれていた。

 棚の影が長く伸びて、ふたりの間に静かな時間が流れている。

 郁は、椅子の背にもたれながら、そっと口を開いた。


「……洗うときは、触れること自体はできるの。でも、反応しちゃうと、どうしていいかわからなくて。止めるべきなのか、続けるべきなのか……怖くなって、結局、何もできなくなる」


 鳥飼は、静かに頷いた。


「それ、すごく自然なことです。何もしなくても起きることもあるし、性的なことに触れたときに反応するのも、生き物として当然のことです。


 身体がちゃんと働いてる証拠なんです」


 郁は、少しだけ目を伏せた。


「……じゃあ、こないだみたいに、静かな部屋でふたりきりでも、反応しなかったのは……変じゃない?」


 鳥飼は、少しだけ笑った。


「それも自然です。安心してると、身体は“準備しなくていい”って判断することがあります。逆に、ひとりで考え込んでるときの方が、反応しやすかったりもします」


 郁は、鳥飼と初めてちゃんと話した日の朝を思い出した。

 静かな部屋、ひとりきり。

 何もしていないのに、身体が勝手に反応していた。

 その後は、授業中と、鳥飼がトイレで用を足していた時。

 そして今。

 何かを見たわけでも、触れたわけでもない。でも、身体の中心が、じんわりと熱を帯びていく。

 それは、ただの“反応”だった。

 生き物として、当然のこと──そう思えば、少しだけ怖くなくなる。


「……あれも、自然だったんだ」


 鳥飼は、頷いた。


「はい。だから、“出す”ことも、自然なことです。

 ただ、夢精みたいに勝手に起きる前に、自分で調整する方法もあります」


 郁は、そっと息を吐いた。


「……どうやって?」


 鳥飼は、少しだけ姿勢を正した。


「僕の場合は、寝室かお風呂場でした。

 寝室では、横になって落ち着いてから、ティッシュでくるんで触ってました。

 そうすると、あとで拭くのが楽だし、直接触るのが怖いときでも、ちょっと安心できるんです」


 郁は、少しだけ目を見開いた。


「……ティッシュでくるむって、なんか……ちょっと、安心できそう」


 鳥飼は、微笑んだ。


「お風呂の前にやると、すぐに洗えるから気持ち的にも楽でした。

 入浴中にやることもあったけど、終わったあとにぬるま湯で洗うと、ちゃんと流れないことがあって……だから、最後だけ水で流すようにしてました」


 郁は、鏡の前でスラックスの前を整えたときのことを思い出した。

 あのときも、触れること自体はできた。

 でも、反応した瞬間、どうしていいかわからなくなった。


「……それって、誰でもやってるの?」


 鳥飼は、少しだけ考えてから答えた。


「人によります。やらない人もいるし、頻度も違います。

 でも、“やってること自体が悪い”ってことは、絶対にないです。

 身体を整えるための、自然なケアですから」


 郁は、そっと息を吐いた。


「……じゃあ、ちょっと……やってみようかな」


 その言葉は、羞恥を越えた先にある、小さな意志だった。

 鳥飼は、静かに頷いた。


「先生のペースで大丈夫です。怖くない方法を選べば、それでいいんです」


 ふたりの間に、静かな安心感が漂っていた。

 それは、夕方の光でもあり──新しい理解の続きでもあった。



◆実践の準備


 準備室を出たあと、郁は研究室に戻り、そっと椅子に腰を下ろした。

 窓の外では、夕方の光が校舎の壁を淡く染めている。

 カバンの中には、鳥飼の言葉が残っていた。

 ティッシュでくるむこと。

 お風呂の前に済ませること。

 温水ではなく、水で流すこと。

 それは、どれも“怖くない方法”だった。

 触れることに抵抗があるなら、布越しでもいい。

 直接見たくないなら、鏡を使わなくてもいい。

 郁は、そっと息を吐いた。

 鏡の前で、何度か位置を整えたことがある。

 洗うときも、必要なら触れていた。

 でも、反応した瞬間──どうしていいかわからなくなった。


「……でも、それって、変じゃなかったんだよね」


 鳥飼の言葉が、静かに胸の奥に残っていた。

 “何もしなくても起きるのは自然なこと”

 “性的なことに触れたときに起きるのも、生き物として当然のこと”

 郁は、鳥飼と初めてちゃんと話した日の朝を思い出した。

 静かな部屋、ひとりきり。

 何もしていないのに、身体が勝手に反応していた。

 その後は、授業中と、鳥飼がトイレで用を足していた時。

 そして今。

 何かを見たわけでも、触れたわけでもない。

 でも、身体の中心が、じんわりと熱を帯びていく。

 それは、ただの“反応”だった。

 生き物として、当然のこと──そう思えば、少しだけ怖くなくなる。

 郁は、スマートフォンの画面を見つめた。

 鳥飼からのメッセージは、まだ開いたままになっている。

 先生のペースで大丈夫です。怖くない方法を選べば、それでいいんです。

 その言葉に、そっと微笑みがこぼれた。


「……じゃあ、今日は、ちょっとだけ準備してみようかな」


 それは、“扱えるようになる”ための、小さな一歩だった。



◆準備の夜


 夜。

 郁は、バスルームの扉を閉めた。

 鍵をかける音が、いつもより静かに響いた。

 湯船は張っていない。

 今日は、シャワーだけ。

 その方が、落ち着いて動ける気がした。

 洗面台の上には、ティッシュの箱。

 鳥飼の言葉を思い出しながら、そっと一枚を引き抜いた。

 くるむように、手の中に包む。

 それだけで、少しだけ安心できた。


「……触れることは、できる。洗うときは、いつもそうしてる」


 でも、今日は“洗う”だけじゃない。

 “整える”でもない。

 “空にする”ための準備。

 郁は、スラックスを脱ぎ、下着をそっとずらした。

 鏡は見ない。

 見なくても、そこにあることはわかっている。

 ティッシュ越しに、そっと指先を添える。

 触れているのは、自分の身体。

 でも、まだ“借り物”のような感覚が残っている。


「……これで、いいのかな」


 指先が、わずかに動いた。

 反応は、すぐに返ってきた。

 熱が、じんわりと広がる。

 布の張りが、少しずつ変わっていく。

 郁は、そっと息を吐いた。

 怖くはない。

 でも、どうすれば“空になる”のかは、まだわからない。


「……今日は、ここまででいいかも」


 ティッシュをそっと外し、シャワーをひねる。

 温かいお湯ではなく、水。

 鳥飼が言っていたように、流れやすいように。

 水の音が、静かに響く。

 身体の中心が、少しだけ軽くなった気がした。

 臭いが気になって、洗剤を使う。すぐに換気扇を回した。

 郁は、タオルでそっと身体を拭きながら、鏡の前に立った。

 顔は赤い。

 でも、目の奥には、ほんの少しだけ“知ろうとする意志”が宿っていた。


「……次は、もう少しだけ、進めるかも」


 それは、“扱えるようになる”ための、静かな夜の一歩だった。

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