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なぜか盗賊家業に落とされた  作者: 空想するブタ
第2部:王都の遺跡編
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王都グランフェリア編 第17章:パート1「血の魔道具」

――乱戦の渦中――


墓の広間は、もはや戦場の残骸だった。

砕けた石床には魔力の爆風で焦げた跡が点々と残り、骨兵の残骸があちこちに散らばっている。

鼻を突く鉄の匂い。焦げた血が蒸気を上げ、視界が揺らいで見える。


リョウ、クラウス、エルネア、モンブラン――四人はそれぞれ散開し、息を合わせて応戦していた。

クラウスは剣を振るい、前線を押さえる。リョウはその横を縫うように走り、刃を閃かせて敵兵の足を狙う。

エルネアは後方で必死に回復魔法を維持しながら、倒れた敵を使ってアンデッドを生成する。

そしてモンブランは、広間の右側で――“血吸い魔道具使い”と対峙していた。


相手は、仮面の奥から狂気を覗かせた細身の男だった。

手には6本に分かれた鞭のような黒い魔具を握り、足元に広がる血だまりから血液を吸い上げる。

瞬間、魔道具が生き物のように蠢き、鞭のように伸びて襲いかかってきた。


「ッ……ゾウ! 右から来る!」

モンブランが叫ぶと同時に、牙鼠のゾウが素早く跳ねて彼の前に飛び出した。

鞭が地面を裂き、火花を散らす。

ゾウは短い悲鳴をあげながらも、牙を突き立てて血鞭を噛み止めた。

その隙に、モンブランがトビー――小鳥のモンスター――を飛ばし、敵の頭上へ急襲させる。


だが、相手は動じない。

「いい動きだ……だが、“血”は裏切らぬ」

低く呟いたその声とともに、血の魔道具の先端が幾重にも重なって形を変えていく。

まるで無数の赤い蛇がうねりながら地面を這って襲いかかるようだった。


モンブランは体を翻し、ギリギリでそれをかわす。

が、動きの癖を読まれていた。敵の目が鋭く光る。

「そこだ」

刹那、背後から“刺される感覚”が走った。


「……っ!?」

振り返ると、床に溜まっていた血が細い針となって立ち上がり、自分の肩を貫いていた。

針は脈動するように動き、まるで彼女の血を吸い取るかのように赤黒く染まっていく。

「あ……っ、ああぁぁっ!」

モンブランの体が震え、片膝をつく。


牙鼠のゾウが彼女を守るように飛び出すが、血鞭が振り払われ、壁際に叩きつけられた。

ゾウの悲鳴が響く。

「ゾウっ!……くっ、やめて!」

モンブランは必死に叫びながらも、肩から溢れる痛みに動けない。


その瞬間、青白い光が横から差し込んだ。

「モンブラン、動かないで!」

エルネアが駆け寄ってきた。杖の先に浮かぶ光球が、彼女の焦りを映し出している。


彼女はすぐに傷口に手をかざし、治癒魔法を発動。

だが、光は血の針に弾かれ、火花のように散った。

「……っ!? なに、これ……魔力が……拒まれてる!?」


血の針には、呪詛のような魔力がこもっていた。

普通の傷ではない。癒そうとすれば、逆に魔力を奪われる。


それでも、エルネアは手を止めなかった。

「お願い……この子を……」

額に汗をにじませながら、彼女は杖を強く握りしめる。

光が次第に強くなり、彼女の顔色が蒼白に変わっていく。


やがて――パチン、と血の針が砕け、粉々になった。

モンブランの傷口がじわりと閉じ、出血が止まる。

「……助かった……ありがとう、エルネア……」

「……っ、よかった……」


安堵の笑みを浮かべたエルネアだったが、次の瞬間、膝が崩れた。

杖を支えにしながら、呼吸が荒くなる。

「これ以上……魔力切れね……」


「だめ、無理しちゃ!」

モンブランが彼女を抱え起こすが、自分の肩も激しく痛む。

片手で彼女を支えながら、残ったモンスターたちへと指示を飛ばした。

「……ゾウ、トビー……守りを固めて……!」


モンスターたちは主の声に応じ、ふらつきながらも陣形を取る。

しかし、動きは鈍く、もう以前の勢いはない。


その様子を遠目で見ていたリョウが歯を食いしばる。

「モンブラン……!」

クラウスが剣を振るいながら叫ぶ。

「無茶するな! あいつの攻撃、普通の魔道具じゃない!」


その瞬間、広間の奥――ヴァルモンドが冷ややかに微笑んだ。

「素晴らしいだろう。……我が一族に受け継がれてきた血と呪いの魔道具の力は!」


その声に、背筋が凍る。

エルネアは息を詰め、モンブランは肩を押さえながら歯を食いしばる。

広間に漂う血が再び蠢き始め、赤黒い波のように足元を覆っていく。


「……次が来るよ」

モンブランの低い声が響き、誰もが息をのんだ。


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