表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/8

第5章:事件の真相


 馬車事件の真相は、想像を超えていた。


 リョウたちが調べを進める中で、クラウスが地方の貴族の情報網を駆使して得た情報は、ある地方領主の名前にたどり着いた。その領主の屋敷では、最近になって禁術関連の書物が何者かに盗まれ、家臣たちが入れ替わり立ち替わり奔走しているというのだ。


 「禁術って……そんなやばいもん、馬車で運ぶか?」    「逆に馬車なら目立たないって考えたんだろう。おそらく馬車を襲った刺客は地方領主に雇われた暗殺者だろう………問題は、その運搬を盗賊ギルドに依頼した“誰か”がいるってことだ」


 クラウスが地図を広げ、馬車の出発地点と目的地と思われるルートを指差した。


 「元々この領主、表向きは文化財保護に熱心な学者気取り。でも実際は、盗賊ギルドに禁術を収集を依頼していたコレクターらしい。どうも、その領主をギルドの一部の幹部が裏切ったみたいだ」


 リョウの脳裏に、馬車の中で見た揺れる木箱の記憶がよみがえる。あの中には、禁術に関係する何かが封印されていたのかもしれない。


 「……これを報告すればギルドにも恩が売れるし、禁術を集めていた脅しにもなって一石二鳥ってことだな。つまり、俺が異世界に来て最初に関わった事件は、ギルドの裏の顔と、この国の権力者たちの闇が絡む、でっかいスープの一滴だったってわけか」


 「スープて」


 「……土鍋で殴ったから、つい」


 「しょうがないなぁ」


 そんな会話をしている横で、モンブランが静かにネズミ型モンスターを手に取った。


 「こいつ、“チューバ”っていうんだ。盗み聞きが得意で、言葉も理解できる」


 モンブランは、チューバにギルド本部の通気口から潜入させ、会議室での会話を盗み聞きさせるという作戦を立てた。


数日後、羊皮紙を持ったチューバの鳴き声をモンブランが翻訳すると、


それは信じがたい内容が残されていた。


 ――ギルドの一部幹部たちは、禁術を用いた“変革”を計画していたのだ。


 「変革って、何を変えるつもりなんだ……」


 「王政そのものだ。武力じゃ勝てないから、禁術を使って傀儡にして裏から操るつもりらしい」


 その話を聞いたエルネアの顔が蒼白になる。


 「それって生者を意のままに操ったりするやつよ? そんなもんで国をひっくり返そうなんて……」


 「……正気じゃないな」


 クラウスはため息をつきながら言った。「だが逆に言えば、これが証拠になる。王家に報告できれば、俺たちは保護を受けられるかもしれない」


 リョウは頷いた。「ナリスの一族……金を生み出す魔法を持つ一族だ。あいつらに頼んで、王家の庇護を受けよう」


 「でもそれ、簡単に会えるの?」


 「あの子――ナリス――が“英雄様”って言ってくれてる。なんとか渡りをつけてみるよ」


 モンブランがにっこり笑った。「英雄様、頑張って」


 「おい、その“様”つける感じ、ちょっとバカにしてないか?」


 「まさかー」


 こうして、事件の核心に迫る証拠を手に入れた彼らは、いよいよ国の暗部へと足を踏み入れることになる。


 そしてリョウはふと思った。


 (俺、なんでこんなことになってんだ……ただのドキュメンタリー好きの社畜だったのに)


 だが今は、戻る場所も、戻る術もない。


 だからこそ、前へ進むしかなかった。


 例えそれが、国家を揺るがす真相であっても。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ