表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なぜか盗賊家業に落とされた  作者: 空想するブタ
第2部:王都の遺跡編
51/63

王都グランフェリア編 第11章:パート4「ドキドキする」

水路を抜け、逆さの回廊の奥へとたどり着いた三人。最後の仕掛けが作動した瞬間、天井にあった巨大な扉が、低い音を立てながら開いていく。

それと同時に、三人を天井に縛りつけていた見えない力がふっと消え、体が地面へと引き寄せられた。


「うわっ――!」

「きゃあっ!」


思わず叫び声をあげるモンブランとエルネア。リョウはとっさに受け身を取り、二人が頭を打たないように片腕で支えながら着地する。

ほこりが舞い上がり、静寂が訪れた。


「……無事か?」


リョウが息を整えながら問いかけると、モンブランは地面に座り込んだまま、ぱちぱちと瞬きをしたあと、ふっと笑った。


「……生きてる! やったー!」

「もう、こんな仕掛け、心臓に悪いわ……」


胸を押さえてため息をつくエルネア。彼女の髪の先には、まだ天井のほこりがくっついている。


リョウはふう、と深いため息をつき、額の汗をぬぐった。

「なんだか……モンブランといるとドキドキするというか……」


不意に漏らした言葉に、自分でも「あっ」と思う。

モンブランはその場で固まり、真っ赤になった顔をリョウに向けた。


「えっ……い、今、なんて……?」


彼女の耳まで真っ赤になっているのがわかる。

リョウも遅れて自分の言葉を思い出し、慌てて首を振った。


「ち、ちがう! そういう意味じゃない! あんな罠を平気で走り抜けるから……ハラハラする、って意味だ!」


「そ、そう……?」


モンブランはまだ赤い顔のまま、つい笑ってしまった。

リョウは自分でもわけのわからない焦りを感じ、頭をかきむしる。


「だから誤解するなって……!」


そんな二人を見て、エルネアは小さく笑った。

「ふふ、いいコンビね。どんな罠よりも、二人のやりとりのほうが見ていてハラハラするわ」


リョウとモンブランは同時に「やめろ!」と抗議し、顔を背ける。

空気が少しだけ和らいだ。


通路の先、開いた扉の向こうには、階段が下へと続いている。

そこから流れてくる空気は、ひんやりとして、どこか厳かな気配を含んでいた。


「……次は今回みたいに一筋縄ではいかないかんじね………」


エルネアが杖で床を軽く叩き、響きを確かめる。

モンブランは背筋を伸ばして、胸を張った。


「ここまで来たんだもん、最後まで行こう!」


「いや、まだ最後とは限らないだろ……」

リョウは苦笑しつつも、腰の剣を確かめた。


心臓が高鳴っているのを自覚する。さっきまでのハラハラが、今は不思議な高揚感に変わっている。

もしかすると、仲間と一緒ならどんな罠だって乗り越えられる――そんな気さえしていた。


「行こうか」


エルネアが先頭に立ち、三人は再び歩き出す。

逆さの回廊を抜け、奇妙な仕掛けをすべてクリアした彼らの足取りは、ほんの少しだけ軽かった。


そして、暗闇の底から、次なる試練が彼らを待ち受けているとも知らずに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ