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断罪された悪役令嬢に、ひきこもりが転生。貧乏平民からの無双。リリカ・ノクスフォードのリベリオン  作者: 織部


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絶対聖女拒否

「絶対に嫌よ! 私にはやる気も覚悟もないんだから!」

「それは困るわ。だって聖女は本来、私じゃなくてリリカにこそ務まるもの」


ソフィアが私の腕をつかんだ。譲る気満々の顔で、私を逃がす気はなさそうだ。

「……じゃ、じゃあこうしましょう。難敵が出たときだけは必ず協力する。それなら不満はないでしょう?」

何とか逃れるために、私は取引条件をひねり出した。


「それにディナモスは、私を聖女失格だと……」

「本心じゃないわ。彼には貴女が必要よ。ドノバンにもきちんと説明してもらうわね」

「ありがとう。やっぱりリリカは友達ね」

「じゃあ、この話はおしまい。貴女は今まで通り、私の代わりに“聖女役”をやって」


ソフィアは微笑んだ。

──しまった。やりたくない私の気持ちを完全に見抜いた上で、ソフィアの流れに乗せられてしまった。


「そこまでリリカに頼まれたら仕方ないわ。当面の聖女役は代わってあげる。その代わり、戦闘のときはきっちり働いてもらうから覚悟しておいて。報酬も用意するわ」


最悪の事態を避けられただけでも御の字だ。私は軽くため息をつき、逃げるように部屋を出た。


「ご無事で何よりです!」

廊下に出ると、ナエルがほっとしたように駆け寄ってきた。

「ナエルたちも無事だった?」

「はい。あなたのおかげです」

後ろからカグラが静かに頭を下げる。二人とも傷一つなくて本当に良かった。


「で、王城に何の用で?」

「死んだ兵の弔いと、今後の話し合いのためナーシルに戻りたい、と国王に謁見を申し込んだのですが……断られました」


「まあ、どうして?」

「それは、後継者決定の招集があるからだよ。第二王子の葬儀もな」


突然、背後から声。振り返るとドノバンがいた。

「俺も会えなかった。普段なら時間を作ってくれるのにな」


「そう……」

城の空気がどこか張り詰めていた理由が腑に落ちた。

「そんなわけで、カグラ。ナエルを少し借りるぞ。リリカ、一緒に帰れない。これから王候補四人で飲み会だ。明日には“次期王とその配下”の関係になるからな」


「じゃあ、私たちは女子会ね!」

また突然声。今度はクルミだ。どうして皆、後ろから急に現れるの?


「ちょっと待って。ドノバン、ディナモスがソフィアと喧嘩したって?」

「ははは、あれは犬も食わない痴話げんかだよ。本人、もう死ぬほど反省してた」

「なーんだ……」

私が気にする必要なんてなかったらしい。


私たちはクルミに連れられ、夕暮れの王都を抜けて彼女が作った修道院へ向かった。

「ところで、侯爵会はどうだった?」


私が尋ねると、クルミが肩を竦める。

「それなんだけどさ、セリオの野郎が来なかったのよ。だから私は“侯爵位の剥奪”を提案したんだけど……」


「やっぱりね。想像してた通りだわ」

 修道院の台所に着くと、カグラが慣れた手つきで調理を始める。


 買い込んだ高級な食材、肉の焼ける匂いと包丁の音が心地よく響く。

 私は器を並べ、クルミは飲み物を準備してくれた。


「かんぱーい!」

 小さな乾杯の音が、狭い食卓に明るく弾ける。

「私も頑張ったんだからね! 次から次に魔物が湧いてきてさ!」


 クルミが自慢げに話す。

「どうせ楽しかったんでしょ。こっちは死にかけてたってのに」

「えへへ。でもミオおばさんが言ってたの。“相性がいいからあなたは死なない”ってさ」


そんな冗談を笑い合っていると、ふとクルミの表情が険しくなった。

「……王都にね、セリオの手下が入り込んでるらしいの」

私はグラスを置き、薄く笑って答えた。

「そう。――だったら、楽しみね」


 次の日、学園に顔を出すと、同級生から声をかけられた。スミカちゃん軍団は、私の顔を見るなり、涙顔だ。いつの間に、好かれたのだろう。


「無事で、良かったわ」

「でも、ジュリアンやレクセル王子も亡くなって……あ、セディオ先生も……」

「残念だわ。激しい戦いだったから」

 本当のことなんて言えやしない。


「ちょっと、いいかな?」

 伊勢屋のカンちゃんが私に声を掛けてきた。

「どうしたの? スミカちゃん? 薬局のお得意様なんでしょ。いつもありがとうございます」


「違う、お前平常運転なんだな」

「うーん。そうね」

 あの聖女ソフィアは、この状況を繰り返してきたのだ。絶対聖女なんてやらないと誓ったし、彼女のことを尊敬した。


「話がある」

「告白なら、受けないわよ!」

「馬鹿なのか? こっちに来い!」

 カンクローにしては、強引に私を空き部屋に連れ込んだ。


「どうしたの?」

「ジュリアンが、ジュリアンがぁ……」

 彼はシクシクと泣き出してしまった。

「残念ね」

 私にとっては、父の殺害の原因を作った奴。悲しくもなんともない。


「奴はな、必死だったんだ。父親に見限られないように。何人もいる息子の中で、一番になろうと」

 友人が死んだことを悲しむのはわかる。だけど私に当たるのはお門違いだ。


「それで何の用? 私たちだって、死にかけたの。運が悪かったら死んでたわ、ぎりぎりの戦いだったの」

 思わず、声が冷たくなる。


 違う。運じゃなくて、両親のおかげだ。

「そうだな。ごめん。生きて帰って来れて良かったな」

 カンクローは、私に謝った。そして、手紙を渡した。


お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

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