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断罪された悪役令嬢に、ひきこもりが転生。貧乏平民からの無双。リリカ・ノクスフォードのリベリオン  作者: 織部


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消えた商会、動き出す影


つまり――誰かに襲われた、ということか?」

ドノバンは箸を止め、真剣な眼差しで問いかけた。

エマは耳をぴくぴく揺らしながらも、目の前の魚料理に夢中である。


「はい……そうです。ただ、カグラには心配をかけたくなくて黙っていました。今回のことで、結局はばれてしまいましたが……」


「ふむ。しかし失礼ながら、お前を狙う理由が見当たらないな」

確かにナエルには王位継承権がある。だが順番は四番目。功績もなく、後ろ盾になる時盤も存在しない。そんな相手をわざわざ狙う理由は薄い。


「……わかりました。次の探索は、私も同じパーティで同行します」

エマがきっぱりと言い切った。いや、お前クラス違うだろう。


「でも、エマが怪我をしないか心配だ……」

ナエルの声音は真剣そのもの。優しさが滲み出ている。


「大丈夫! リリカ様も一緒に行ってくれるから!」

エマがぱっと顔を上げ、にっこり笑う。


――おいおい、私は行くなんて一言も言ってないぞ!

「そんな、迷惑をかけるわけには――」とナエルが言いかけると、エマがぴしゃりと遮った。


「ううん。風紀委員の仕事の一つに、学園生を守るための付き添いがあるの。低学年のダンジョン探索や社外授業とかね。だから気にしなくていいわ」


――ちょっと待てエマさん、それは私のセリフでしょうが。

まあ、正直なところダンジョン探索なんて楽しみしかないし、行けるなら大歓迎なんだけど。



翌日の放課後。

私は久しぶりに自分の邸宅へ戻った。大会議室の扉を開けると、既にメンバーが勢ぞろいし、活気に満ちていた。


そう、「ナクサ商会連合」の会議である。

恐れているのは――三日連続の暴飲暴食。

西都セーヴァスでも、クルミたちにこれでもかと歓待され、胃袋を酷使させられたばかりなのだ。


「さて、会議を始めましょう! まずナイルの商会だが、あの後の嫌がらせはどうなった?」

「なくなりました。裁判で伊勢屋と紀伊國屋を訴えた件ですが、向こうから和解の申し出がありまして……。そこで、できればリリカにも同席していただきたい」


ナイルはこの商会のキーマンだ。痩せたように見えるのが少し気になる。

だから今日は、彼にしっかり食べさせると心の中で決めた。


「わかったわ」

裁判が無くなったのは残念だが……大商会の会頭たちと渡り合うのは楽しみだ。

「あっ、そうだ。賠償金の件。ドノバン、どうなった?」


「それなんだが、実は第一王子に呼び出されてな。まさか、王子に泣きつくとは思いもしなかったよ。リリカも同席してくれないか?」

「絶対に嫌よ」


頭の中で危険信号がけたたましく点滅する。

泣きついたのが誰なのか気にはなる。けれど、“好奇心は猫を殺す”という言葉もある。深入りは得策じゃない。


ドノバンは残念そうに肩を落とした。

「一番街の薬局は好調です。それと健康ドリンクも売れてますよ! ガンツさんたちが流行らせてくれたおかげです。あと、販売員もどちらも強力です」


ナイルはメガネを触りながら報告を続ける。

「ああ、お嬢。仕事中の一服と一杯だ」

ガンツが煙草をふかし、エナジードリンクを一気飲みしてどや顔で胸を張る。


「仕事の休みの一服と一杯にして。それと、それじゃあ健康じゃないけどね」

私の一言に、場の空気がぱっと和んだ。


「そうだ、お嬢。これは冒険者の部下からの話なんだが、例の副ギルド長のアミン。ダンジョン探索に出て行方不明になっているらしいぞ!」

「誰と出かけたの?」


「それなんだが、王都にいる冒険者じゃないようだ」

――しまった。手をこまねいているうちに、敵の足跡を消されてしまったのか……。


「ドノバン、何か知らない?」

「そうだな。関係あるかどうかわからないけど。リリカ様がセーヴァスに行っている間に、黒船商会と黒船屋閉店したぞ」


「それは……私のせい……」

そういや、クルミと黒船商会襲撃をかけたな。

「まあ、それもあるだろうけど。おかしいのは、黒船屋の店員が全員釈放されたのにってことだ」


確かに多少、いやかなり強引な捜査だったけど、この王国のルールからして、不当逮捕ではない。証拠もあるし。


「それで、そいつらは今、どこに?」

「いないよ。全員散り散りに去って行ったというけど、結局最後は帝国に向かうらしい。もちろん何人かにお話は聞いたけど、特に情報は持って無かった」


可哀想に。

私が予想するに、黒船屋も黒船商会も帝国スパイの隠れ蓑。そして、武力担当は全員、ミオに殺された。残ったビジネス担当は、逃げたと。


「誰が、彼らを釈放したのかな?」

「それは、リリカ様の方が調べれると思うよ」

クルミが帰ってきたら、行動に移そう。バイトでは限界がありそうだし。


「これで終わりいいかな?」

「いえ、私から一つあります」

それまで楽しそうに話を聞いていた、司祭のネイサンが真剣な顔で言った。


「どうしたの? まさか、ルミナ大司祭が遊びに来るとか?」

私は茶化して言った。


「いえ、そんな素晴らしい話ではなく、不愉快な話ですが、お耳に入れておきます。私は、シュベルトの教会にもいくのですが、その時、ノクスフォード家のお屋敷の前も通ります。屋敷の中に人の気配がしました。ですので信者に見張らせました」


「はぁ、そこはセリオ侯爵が封鎖していたんじゃ?」

「いえ、封鎖と言うより門番のようです。セリオ伯爵の馬車と帝国の馬車が出入りしているのを発見しました」


そろそろ、食事にしませんか。と言いたげに会議室に入ってきた男。セバスチャンの顔色がみるみる赤くなる。


――やばい、マジおこセバスだ。

私は怒る気持ちが吹っ飛び、どうセバスを宥めるかを考えて、ドノバンに助けを求めた。


だがポンコツ王子の野郎、思いっきり目を背けた。

「セバス、冷静に」

私は一番似合わない言葉を吐く羽目になった。


お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

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