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断罪された悪役令嬢に、ひきこもりが転生。貧乏平民からの無双。リリカ・ノクスフォードのリベリオン  作者: 織部


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ミオの復讐


「奴ら、この炭鉱を崩そうとするんじゃないですか?」

 私は、狼狽えてミオに聞いた。

「ははは、この炭鉱は、特別な洞窟だから簡単には崩れないわ」


 入り口から、天井に向かって、魔術を打ち込んでいるのが見える。


 ぱらり、ぱらりと砂が落ちるが、それは天井の壁の埃のようなものだ。そしてやがて、硬質な金属が姿を現す。


「あれは、もしかしてアダマンタイトですか?」

「そうじゃないかな。この洞窟は自然物じゃないわ。古代からある遺跡なのよ」


 アダマンタイト。もし切り出せたら幾らになるだろうか。私の頭の中の計算機が試算を始める。

「だめよ! ここは魔女の住まいと言われているから」


 私の考えはお見通しだったようだ。

「利益の半分、お渡ししますよ!」

「リリカ、つまらないこと言ってないで。奴らが攻撃を仕掛けてくるわ!」


 私は初めて気がついた。アルフレッドさんは、途中で別れたのだ。

 奴らは魔術師と剣士の部隊で構成されている。廃坑が崩れないとわかった剣士たちは左右に分かれて近づいてくる。


「迎え撃ちますか?」

「もう少しだけ、奥に行きましょう。追いつかれるから走るわよ。私の後についてきて」

「少しは、ミオさんも防御してくださいよ」


 私は魔術師から飛んでくる魔術の属性攻撃や、剣士たちが迫りながら放つ矢を、風でことごとく吹き飛ばしている。


 普通は、敵を見ながら局地的に対処するのだろうが、彼女に着いていくのに必死で、後ろを向く余裕がない。だから、全面だ。


「私は魔力が無いから無理ね。リリカは大丈夫?」

 ミオにはあまり私を心配した様子はない。私の魔力を信用しているようだ。


「問題ありません! まだまだいけますよ!」

 私の風魔術は、全てのものを吹き飛ばし、剣士たちも少しずつしか進めないようだ。


 廃坑の中央にある大きな柱のある場所についた。そこが目標地点だったようだ。

「リリカ、洞窟の入り口に、土の壁を立てて」

「わかりました。その後は……」


「あなたの手を汚さないわ。私が始末をつける」

 ミオは私を下がらせると、前に立った。おかしい。彼女は魔力が無いと言っていたのに。それは嘘だったのか……。


 私は、廃坑を強固な岩の壁で塞いだ。これで、お互い逃げ道は無い。

 真っ暗になった瞬間。私は隣に立つミオが、別の悍ましい存在に感じられた。彼女では無い別の存在。


『お前たち、我が愛する兄を殺したこと、許されると思うか?』


 洞窟の中にこだまする怒りの大声だ。

 彼女から発せられるその声には、人ならざる力があった。


 声の主に対する奴らの矢は届かず、敵の放つ魔術は消える。

 私は風魔術を行使していない。いや、使う必要が感じられない。

 彼女を傷つけることは不可能だ。


『簡単に死ねると思うなよ。自分のしたことへの後悔と、死を望む苦しみを与えてやる』


 ミオが、手を挙げた瞬間。漆黒の液体が地面から現れる。

 あっという間に、奴らは足を取られて動けない。

「スライム、いや違う。意志を持った何か。何ですか、ミオさん」


 だが、彼女は答えず、私の頭を優しく撫でた。会話は不要そうと言っているようだ。

 湧き出る黒い液体は、私たちの周りにはよらず、奴らを取り囲む。


 そして全身に絡みつく。斬ろうが、吹き飛ばそうが、焼こうが、その反撃を小馬鹿にしたように、むしろ面白がっている。だが、それはシルエットとしてしか見ることは出来ない。


 私は暗闇から抜け出そうと、光を灯そうとするが、かき消される。

 どれくらいの時間が経っただろうか。永遠の時間、地獄にいたように感じる。


「許してくれ!」

「俺は頼まれただけだ!」

「何でも話すから、やめてくれ!」

 永遠の時間、地獄にいたように感じる。


 決して一思いに殺さず、恨みの強さを、悲しみの深さを奴らの魂に刻み込む。

 それを私は、残酷だとは思わなかった。私の中にいるリリカの魂はそれを肯定した。断末魔が止み、人の生きている気配がなくなった。


 ミオが崩れ落ちて倒れる。

「しっかりしてください」

 今度は私が彼女を支えた。


 とりあえずここから出よう。私は、せっかく作った壁に必死で穴を開けた。

 その穴から、アルフレッドや、ベースさん、漁村の人たちが入ってきた。


 アルフレッドは、ミオを抱き上げた。「行きましょう」と私をその場から連れ出した。

 いつの間にか、例の黒い液体の生き物は、洞窟の中に跡形も無く消えていた。


 ベースさんや漁村の人たちは、一言も発せず、奴らの遺体、いや水分を全て抜き取られた亡骸を荷台に乗せて運んでいた。


「どこに運ぶのですか?」

「あそこは神聖な場所ですから。丘の上の墓に運んで埋めるんですよ」

「そうですか……」

 弔うのだろうか? 私の心が読めたのだろうか?


「違いますよ。死んだからと言って自由にはなれませんよ。屍傀儡として、永遠に操られるでしょう」

 私は、その意味を本当の意味で理解していなかった。


「復讐しても許さない」そんな簡単な意味にとらえていた。


 まさか、事実だとは思わなかった。


お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

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