表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪された悪役令嬢に、ひきこもりが転生。貧乏平民からの無双。リリカ・ノクスフォードのリベリオン  作者: 織部


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/89

黒船商会急襲

 私は、驚いた。いや、思わず驚きの声をあげてしまった。

「失礼ね、これでもマリスフィア公爵家の令嬢よ」

「そうですね……失礼しました」

「そう思うわよね。私のことを調べたら?」


 クルミは意地悪く笑みを浮かべた。私は黙って頷く。

「遠慮のない子ね。私が聖女候補として引き取られた養女だって聞いたんでしょ?」

「はい」

「だけど、本物の聖女が現れた。一点の曇りもない、本物の聖女――『ソフィア』がね」


 それは彼女の地位を揺るがし、誹謗中傷を浴びた。ドノバンの情報で、すでに知っていた。

「……大変でしたね」

「いいえ、その時わかったのよ。マリスフィア侯爵――いや父さんのこと。父さんはこう言ったの。『それは良かった。クルミは自由に生きることができる。俺のお前への気持ちは変わらない』って」


 ただ政治のために養女を取ったわけじゃないと。

「変なことを言って、すみません」

「ううん。多くの人に手のひらを返されたのも事実よ。でも、父さんが守ってくれた」


 それだけ言うと、彼女は深い思考に沈んだ。

「リリカ。さて、そろそろ着くわね。頑張りましょう」


 黒船商会は、なぜか王都の外側にある古い廃城を改修して事務所にしていた。王都内には黒船屋という店舗もあるのに。

 錆びた鉄の柵で閉じられた門。


「やりなさい!」

 御者の男が魔術を撃つ。鉄の柵はばたんと倒れ、何事もなかったように廃城へと馬車は走り出す。


(やるなぁ、マリスフィアのセバス……!)

 思わず心の中で賞賛した瞬間――。

「あなたの家のセバスのようでしょ」

 クルミが私の目を覗き込む。


(ま、まずい……! この人、読心術できるの!? 確かめよう、心の中でクイズでも出してみるか)

(今日の私の下着の色は?)


「さあ、突撃よ!」

 クルミは私のクイズを完全に無視して、馬車から飛び降りた。


(無視された……私の立場はどこへ!?)

 慌てて私も飛び降りる。


「王国の特別監査だ! 開けなければ、強制執行する!」

 いつの間にか、黒いスーツ姿の男たちが玄関の前に並んでいた。


「はぁ、この人たちは?」

 私はクルミに尋ねる。

「私の手の者よ。二人じゃ手が足りないからね。――内緒だよ」


 中には人の気配。話し声が聞こえてくる。

「時間切れです」

(えっ、早くない!?)


 クルミは腰の剣を抜き、鋼鉄の厚い扉を、まるでバターのように切り落とした。

(まじか……もう逆らいません。私の魔術より遥かに早い!)


「失礼しまーす! 逃げようとする者は全員捕えろ!」

 指示を受け、クルミ家臣団が雪崩れ込む。


 次々に黒船商会の社員が拿捕されていく。

「俺たちが何をしたっていうんだ!」

「これは法律違反だぞ!」

 しかし、クルミは冷静に言い放つ。

「何を言っているの。業務執行妨害よ。それに、こちらの呼びかけを無視して重要書類を隠蔽、逃亡をはかろうとした。私たちは――王国国税局!」


 かなり強引な捜査だ。


「ふざけるな!」

 奥の部屋から大男が現れた。派手なアロハシャツに黒光りの坊主頭、腰には二本の大きな曲剣を下げている。

「お前、何者だ?」

「俺はここを預かる黒船商会・王国支店長――ダダだ!」


 クルミの台詞など無視して、ダダはこちらに迫る。

「仕方ないわね。リリカ、やっちゃいなさい!」


「え、私!? ……でもやるしかない!」

「ウォーター!」


 高出力の水魔法が大男を襲う。

 どかぁん。

 ダダは壁まで吹き飛び、半分めり込んだ。


「あーあ」クルミが笑う。

(いや、笑い事じゃないから!)


 しかしダダはすぐに頭を振り、怒りで目を震わせながら剣を抜いて迫ってくる。

「うわ、近づかれたら危ない!」

「あ、ごめん! やりすぎた。水魔法だけに……水に流しましょう!」


 必死の謝罪も通じない。

「ウインド!」


 風魔法で再び吹き飛ばす。ダダは天井にぶつかり、両手の剣が突き刺さったまま逆さになる。


(困ったな……私の魔力は無限でも、このままじゃまずい!)

「お前、必ず、殺す!」

 怒りの声が胸を締めつける。


(……そうだ! かんちゃんの時みたいに、動けなくすればいいんだ!)

 土魔法でダダの足を固定――しかし慌ててしまい、天井からコウモリのようにぶら下げてしまった。


「ははは、面白いわねリリカ!」

 クルミは笑い転げる。


 ダダが暴れるたび、私は足の固定を強化。逆さ懸垂で血が上り、やがてダダはぐったり。地上に落として砂風呂状態に固定する。

「ふぅ……やっと落ち着いた……」


 ホッと一息つきながらも、まだ心臓はドキドキしていた。


「さあ、捜査を続けましょう。クルミ先輩」

「そうね、リリカ。あなたに尋問を任せるのが、一番向いているみたい」


 クルミは微笑み、私の背中を押すように見つめた。

お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ