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断罪された悪役令嬢に、ひきこもりが転生。貧乏平民からの無双。リリカ・ノクスフォードのリベリオン  作者: 織部


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おにぎりの味


私は、動き出すことを決めた。

「ドノバン、調査をお願いね! 付き合ってくれてありがとう」


 食事の誘いを断って馬車から、降りた私を心配げに眺めた彼が一言。

「リリカ様が心配するような結末にはならないと思うよ」

「そうだと良いな。じゃあ、また明日」


 すでに、私の知るゲーム世界とは遠くかけ離れている。不幸な事件や、隠された思惑、裏のある登場人物。


 私が、屋敷に入ると、エマが駆け寄って来た。

「遅かったですね。モリス教は元気でしたか?」

「ええ、そうね」

「あれ、珍しい。元気がありませんね? あー、まさか食事がまだでしたかぁ?」

 まずは、彼女からだ。ミルを使って聞き出すのは私はしたくなかった。


「いらないわ」

 私は自分の部屋に戻ると、黒衣を脱ぎ捨てて、寝巻きに着替えて寝床に潜り込んだ。落ち着く、もうずっとここで生活していきたい。


「リリカ様、どうしたんですかぁ?」

 エマが部屋に入ってきて、私に声をかけてきた。

「私、モリス教授とは距離をとろうと思うの!」

「えーー。本気ですかぁ?」


「本気よ。エマは反対なのね……」

 私は悲しくて泣きそうになった。

「いえ、大賛成です! やったぁ」

 寝ている私の手を取って、起こすと抱きしめてくるくると回った。


「落ち着いて、どうしてそんなに喜ぶの?」

「そりゃ、喜びますよ! 私たちが、何度言っても聞く耳持たなかったじゃないですかぁ!」

 そうなのか。知らなかった。


「なぜ?」

「だって、あいつのせいで、平民落ちしたんですよ! セバス様にも知らせないと……」

「待って。セバスは反対かも知れないでしょ? だって……」


 旗を振り回したり、行進をしたり、まるで活動家みたいな行動をしているセバスチャンだ。

「はぁ、何を言ってるんですかぁ。セバス様は、ノクスフォードの名誉とリリカ様の幸せと安全しか考えていませんよ!」


「……」

 良かった。少なくとも、二人は味方がいる。今まで孤独に生きてきてこんなことを気にするとは、自分で思わなかった。


 エマが部屋を出てすぐ、廊下を走ってくる大きな足音が聞こえる。

 扉を叩く音。

「リリカ様、お呼びですか? 大至急とのことですが……」


 セバスの声だ。エマは、何も言わなかったらしい。直接話しろと言うことだ。

「もう、あの子ったら。セバス入って」

「どうしました?」

 私の話に、セバスは同じように喜んだ。


「教えて。どうして父は共和制を提案したの?」

「あの時はそうしないと暴動が起きそうだったからです。バルト宰相は人命を大事にしたのです」

「知らなかったわ」


 ゲーム世界では、聖女と私の『戦い』だと思っていたのに。裏にはこんな隠された物語が潜んでいたのだ。

「あなたには政治的な思想は無いのね? 別にあっても責めるつもりは無いけど」


 私の発言が面白かったのか、いつもは、冷静で、でもお祭り男のセバスが笑い転げた。

「そんなものはありませんよ。信じてください。あなたを守ります。それがバルト様の願いですから」


 真剣な、いつもの表情に戻って、私を真剣に見つめた。

「良かった」そう思いながら、思わずセバスにときめいたのは秘密だ。


「じゃあ、残りは、ナイルとガンツ達ね」

「うーん、ガンツ自身には、考えは無いと思います。ただ、多くの部下がいますから。どうしますか?」


「放り出すつもりは無いの。だけど、政治集団とは思われたくないの。だから、退職金を払って去ってもらうつもり」

 セバスは、私の考えを理解してくれたらしい。静かに頷くと安心をしたら、お腹が減ってきた。


「リリカ様、おにぎりお持ちしました。食べませんかぁ?」

 エマの声がする。

「うん、一緒に食べよう!」


 なぜだろう、とても塩味の効いたおにぎりだった。


お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

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