表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪された悪役令嬢に、ひきこもりが転生。貧乏平民からの無双。リリカ・ノクスフォードのリベリオン  作者: 織部


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

110/113

野生児 リラの帰還


従魔ということは、魔物使いなのだろう。レアなジョブ持ちだ。

檻に入れられているわけでもないのに、魔物たちは大人しく、争う様子もない。


角の折れた魔兎、翼を痛めた魔鳥、全身に切り傷を負った魔犬。いずれも治療を受けた痕が見て取れた。


「嘘でしょ?」

魔物たちから感じ取れるのは警戒心だけで、敵意はない。

「リラ様が、助けては連れ帰ってしまうのです」

「はぁ……」


「帰ったよぉ!」

玄関から元気で大きな女の子の声がする。

「お帰りなさいませ! リラ様」

コヨリが駆けていき、姿を見て一言。


「こら。裏手の井戸で体を洗って下さい!」

「わかった!」

リラは弓と袋を背負う猟師姿だが、泥だらけだった。


その場で服を脱ぐと、外に飛び出して行く。

「えー……」

子供ではない。妙齢の女性が、素っ裸なのだ。

「もう、リラ様ったら……」


井戸で頭から水をかぶる野生児に、タオルと服を持って駆け寄るコヨリ。

私たちは、その様子に笑い転げた。

着替えを済ませたリラは、私たちと話をすることになった。


「食べるの忘れてて。それで私に何の用かしら? 私やることがあるの!」

彼女は食卓でプラムのタルトを頬張りながら、美味しそうに笑っている。髪をコヨリに拭かれながら。


「どこに行ってたの?」

「そんなことに興味があるの? 教えてあげるわ。ちょっと、こっちに来て!」

タルトをお茶で流し込み、作業部屋へと私たちを招き入れた。


「これを探していたの!」

袋から取り出されたのは、蛇の死骸。

「黒牙蛇かな?」

「そう、よく知ってるね。さすが冒険者! 近頃、こいつの毒がばら撒かれてるの。だから、毒消しを作ろうと思ったんだけど、難しいのよ。薬作りと実験もしようと思って」


「黒蝕毒は体内から出さないと駄目なの。体の中にできる結晶を溶かさないと。その素材が、ここには揃ってないわ!」

私は思わず口を出した。別に隠すほどのことでもないし。


「私、製薬の本は、数多く読んでるけど、そんなことどこにも書いて無かった。それ、本当?」

リラは、私の両手を掴んだ。力が強く、離せない。


「リリカは、天才薬師だ。教えを乞うといい!」

あっ、クルミの野郎、バラしやがった……という目をすると、クルミは話を続けた。


「だってこの子面白いもん。リリカもそう思うでしょ? それに、きっとコヨリはお見通しよ」

「はい。クルミ・マリスフィア侯爵、それとリリカ・ノクスフォード侯爵」

彼女は美しいカーティシーをすると、慌ててリラも続いた。


「ヴォーデン侯爵の娘、リラ・ヴァーデンです」

私たちはカーティシーで応えた。

「製薬方法を教える前に、情報交換をしましょう」

私は、難民キャンプや教会での患者の話をした。


「そうですか! 公都リヨンで、黒蝕毒がばら撒かれてるからです! あいつら……」

リヨンを取り合っている二つの勢力。そのうち、シャルルの勢力の一部が使っているらしい。


「今、材料を取り出すわ。それと……」

広間に干してある草を指差した。それらは今回必要な薬草だ。


屋敷を見学している時に、きちんと処理してあることに感心していた。

製剤室に移動し、リラに教わりながら実践する。


「なるほど。それで、このやり方はどういう意味があるのですか?」

私はタジタジだ。だって、それが一番効果があるだけで、理由までは知らないのだ。


それでも、私の神技に心を奪われ、夢中で筆を取っていた。

「最終工程よ、やってみる?」

「私がやろう」

クルミが手を出すので、叩いた。


「製薬スキルの無いものは、黙って見てなさい!」

悲しそうな顔をしているが、ここは譲れない。

リラは、手慣れた手つきで私の右腕に手を置く。

夜遅く、材料を使い果たした。


「これで終了だね。これだけあれば足りないと思うけど」

「ありがとうございます。でも代金のお支払いですが……これでどうでしょうか?」


コヨリに合図すると、彼女は貴重鉱物の入った宝箱を持って来た。

「わー。これは凄い」

私は、貴金属に興味は無いけれど、特別な武器類を作るのに欲しいものがある。


これが、リラたちの大事な収入源の一つらしい。

「いらないわよ。お隣さんだもん。それより解毒薬を配りに行きましょう!」


クルミは宝箱を閉じた。私は少し残念だ。

「そうですね。ですが、今日はもう遅いですし、明日にしましょう。食事もできております」


優秀メイドのコヨリが、美味しい匂いをキッチンから運んでくる。

「まだ、習うことが多いです。リリカ師匠、しばらくここを宿にして下さい!」


リラは、私の腕を掴んで離さない。

「そうね。今後のことも話し合いたいからお邪魔するわ」


夕食は、牛肉の赤ワイン煮込みとエスカルゴのバター焼き。

焼きたてのパンと年代物の赤ワイン。


食事をしながら、コヨリに尋ねると、やはり最初から私たちのことを知っていたらしい。

「お二人は有名ですから。リラ様のことを知って欲しくて」


食事を済ませると、リラは眠くなったらしい。

私は彼女に引っ張られて、寝室へ連れて行かれた。

「リリカを取られちゃったな」

「でも、こんなに懐くことなんて無いんですよ。お許し下さい」


私は、リラのベッドで一緒に寝ることになった。

「政治的な打ち合わせは、やっておくよ!」

クルミとコヨリは、食卓でワインの飲み比べをしている。


「わかった。すぐに戻る」

元気な少女の寝息を聞きながら横になると、私はいつの間にか眠ってしまった。


魔鳥の朝の囀りまで、目を覚ますことはなかった。


お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ