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断罪された悪役令嬢に、ひきこもりが転生。貧乏平民からの無双。リリカ・ノクスフォードのリベリオン  作者: 織部


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毒に染まる葡萄の都


マリスフィア侯城の会議室

円卓会議は、前にオブザーバーで参加した時とほぼ同じメンバーが揃っていた。


善人の宰相ハーゲンとクルミの義弟にあたる無垢な少年のアンプリオス。叔父のフォリオンは、体調が悪く不参加だ。


諜報活動を得意とするナッシュ子爵は、相変わらず目つきが鋭い。

「あ! リリカ来たの?」

クルミが立ち上がって私を見た。


「うん、大司祭様が……」

「ごめんね。うちの人たち、強引だから……」

まあ、彼女が嬉しそうだし、許せるんだけど、問題はあと一人。


「わしも顔を見たかったからな」

「うぐっ……」

声を聞くだけで緊張する。クルミの叔母にあたるミオ。そして、暗黒の魔女だ。何せやることが恐ろしい。


「何だ! 聖女の癖に気合いの足りんやつだ!」

――何それ、意味がわかんないですが……。

「ミオ様、会議を始めても宜しいでしょうか?」

ハーゲン宰相が恐々と尋ねる。


ほら、他の人も怖がってるやん。例外は、唯一、クルミくらいだ。

「おばさま、お静かに。リリカは私の親友です」

「ふん」


ミオは不愉快な顔をしてみせる。

だが、本気で機嫌が悪い訳では無い。私は知っている。本当に怒ると、世界が凍りつく。

ハーゲンが地図を出して説明を始めた。


共和国の東部は、王国と仲の良い公爵領だったが、公爵が病死して後継者争いが起こり、共和国の内乱も波及して、難民がセーヴァスに押し寄せて来ている。


「後継者は、三人の息子です」

「どうせ、碌な奴じゃないんだろう?」

ミオは、どこから出したのか葡萄を食べている。

「その通りです。他に一人娘がいます。その娘が、見どころがありそうです」


ナッシュが、葡萄の種を片づけながら言った。

「じゃあ、その四人を調査しに行くわ」

クルミが軽快な口調で言った。


「もし、四人とも、マリスフィアが応援するに値しなければ、占領することにしたらどうだい? 民のためだろ」

ミオは、条件をつけた。


「理由は本当にそれだけですか?」

何より信用のおけない魔女の発言だ。

「リリカ、果物が美味しい場所なんだよ。お前も一つ食べてみろ?」


私の口に、葡萄を一房放り込んできた。

みずみずしく、甘く、それでいて酸味もまろやか。

「本当だ!」

騙された気もしないでは無いが、本当のことは言わないだろう。


「ハーゲン、進軍の準備をしておいて。それと、ノクスフォードからの援軍も来るから駐屯所の手配も。私とリリカはちょっと見てくるわね」


「じゃあ、西方聖教会の修道女に変装して行きましょう! 口裏も合わせられるし」


エマは、ガンツたちが来るのを、難民キャンプで待ってもらうことにした。

「わかりました。ベスともに手伝いをして待ってます。お気をつけて」


危険なミッションには、連れていけない。エマは、あっという間に、難民キャンプの人たちと仲良くなっている。

私たちは、修道女姿に着替えると、共和国東部の国境を越えた。


ルミナ大司祭の同行者として、馬車に乗り込んだ。

共和国東部のヴォーデン侯爵領は、小麦畑、牧場、葡萄畑と長閑な風景が広がっている。


それらの牧場主や農場主の中には、傭兵を雇い、農夫たちに武器を持たせて、人や馬車が近づくのを警戒していた。


途中、何度もセーヴァスを目指して歩いてくる難民の集団とすれ違った。

彼らは皆、疲れ切った顔をしていた。


「侯都リヨンからですね」

御者が難民と話し、リヨンの現状を聞き出したところ、


相次ぐ火事と戦闘、それに便乗した強盗や略奪などの犯罪が都市を壊していることがわかった。

さらに食糧不足が重なり、疫病も広がりつつあった。情報通りだ。


私たちはリヨン郊外の教会に着いた。

そこからは、都市から火の手がいくつも上がるのが見えた。


「よくぞ、おいでくださいました」

その教会の司祭が出迎えてくれた。

教会の中は、信者の避難民が溢れていた。

「食糧を持ってきた。それと病人は……」


ルミナ大司祭は、私を指差した。

「患者を見ます。薬師ですが……」

隔離された部屋には、黒蝕毒の患者が多くいた。

「異常だ。こんなにこの特殊な毒に犯される筈がない」


「どういうこと?」

「黒蝕毒は、鉱山にいる黒牙蛇の毒だ。平地に出現するなんて聞いたことが無い」


ベスの母が、セーヴァスに逃げる途中の山で噛まれたかと考えていたが、どうやらそれも間違っているようだ。


「誰かが捕まえて運んだのか……治療して事情を聞いてみよう。クルミ手伝って!」

「もちろん!」

私たちが治療を始めていると、教会の外が慌ただしくなった。


「誰かきたみたいね」

「見に行きましょう」

私たちは様子を見に、慌てて入り口に向かった。

毒のついた――


「ヴォーデン侯の三男、ジュリア様が自ら来られた。出迎えが無いぞ!」

教会の入り口にいる教会の警備兵が行く手を遮る。

彼らは信者の中の志願者で、この場を守ろうと命を懸けている。


「お待ち下さい。司教様に連絡を取りますので、ここで」

どすん。

ジュリア軍の兵が、警備兵の腹を殴って地面に叩きつけた。


「邪魔をするな、我が軍を待たせるなんて」

「何だ、あいつら!」

クルミと私は、思わずジュリア軍兵の前に立ち塞がった。


「あっ、まずい?」

私たちは、黒蝕毒まみれの修道服だったことに気づき、笑ってしまった。

それを侮蔑と受け止めたようだ。


「し、失礼な汚い修道女め!」

兵たちは、私たちに飛びかかろうとする。

「駄目だって、お前たち死んでしまう」

私たちの警告は、さらに彼らを怒らせてしまった。


お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

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