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断罪された悪役令嬢に、ひきこもりが転生。貧乏平民からの無双。リリカ・ノクスフォードのリベリオン  作者: 織部


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西方より吹く不穏な風

新章 共和国編スタートです。


共和国で内乱が起きた。

かつてはゲーム世界だった歴史は、すでに私の知らない時代へと進んでいる。


王城の中庭。

私は領地の書類を届け終え、のんびりとお茶を飲んでいた。

「少し時間をもらえるかしら、ノクスフォード侯」

颯爽とした剣士の佇まいで声をかけてきたのはクルミだった。彼女は私の向かいに腰を下ろす。


「うん。いいけど」

私は大きく欠伸をする。今日の明け方まで、サクナ薬局の新製品について考え込んでいたのだ。

「相変わらず、マイペースね」


「そうかしら?」

「そうよ。感じないの? この王城の緊張感」

言われてみれば、いつも気の抜けている王国の警備隊にしては、やけに引き締まっている。


「私の所領は共和国と接しているから、もっと緊迫感があるわよ」

共和国は王国の西にある大国だ。帝国を唆した真の敵国――つまり、私たちの敵でもある。

私も何もしていないわけではない。商人のナイルを派遣し、情報収集は続けていた。


「でも、何が起きているのか、はっきりしないのよね」

共和国は王政ではない。かといって、完全な民主国家でもない。


各地の有力貴族と、制限選挙で選ばれた国民によって運営される、歪な国家だ。しかも奴隷制度が公式に認められ、選挙に参加できる国民も限られている。


「革命だなんて言って国王を殺したけど、結局これよ」

「いくつもの勢力が入り乱れている。セーヴァスには難民がなだれ込んできているわ」


「大変ね」

「まあ、義父さんが領地をうまく運営していたから、支援できるだけの食糧はある。でも、人手が足りないの」


「わかった。うちの兵を貸すわ」

クルミは立ち上がると、私の首をがしっと掴んだ。

「もちろん、リリカも来てね」

「わかったから。苦しい、苦しい」

そんなわけで、私は再びセーヴァスへ向かうことになった。


「ガンツが来るのを待ってからだと思ってたのに……」

翌日、私はエマと一緒に、半ば強引にクルミの馬車へと押し込まれていた。


「リリカがいるから、途中から船旅ね?」

「うえっ」

かつて航海中に倒れた記憶が、嫌でも思い出すのだった。


だが船旅は、やはり良い。風が気持く体を揺らす。

「夜は、魔術は使わないで行くから安心して!」

それでも、セーヴァスには数日で着いた。

「私たちは、何をするの?」


「共和国への潜入調査。自分たちの目で見ないと!」

「賛成だわ」

「少しだけ、侯爵の仕事を済ませてくるから、リリカたちは、街を散策でもしていて!」


前回来た時よりも、活気があるが、人がとても多く雑然としている。

「待て! 泥棒だ!」

エマが、素早く動いて、犯人を取り押さえる。

「くそっ!」


小さな少年の手には、果物が握られていた。汚れた服と顔。共和国からの難民だろう。

私は、追いかけて来た商人に、代金を払うと、その子に声をかけた。


「私はリリカ。事情を教えてもらおうかな?」

「ベスです。ごめんなさい」

共和国訛りで小声で答えた。少年ではなく、少女だった。

「食事は配給されると聞いてるけど」


彼女の難民キャンプに移動しながら、事情を聞いた。彼女の母親は病気で寝込んでいるらしい。

「母さんに、故郷の果物を食べさせたかったの」

難民キャンプは、想像よりも綺麗だった。新しいテントに、上下水。各施設の出張所まであった。


クルミったら、肉とかパンとかガッツリ食べるものばかり配給しているらしい。彼女らしい。

「指揮官に言っとくよ!」

「そんな、リリカさんが怒られてしまいます」


「ベス。そんなことより母さんの見舞いをさせて!」

「ダメです! 病気が移ると……先生も見放したの……」


小さなテントの中には、リュックが二つと、簡易のベッド。ベスの母は、苦しそうに寝返りをうっている。

「これは、黒蝕毒だな」

普通の毒消し薬では、消えない体内に結晶を作る猛毒だ。


私は、薬箱からポーションを取り出し、彼女の口元を塞ぐかのように瓶を押し当て、嚥下を強いた。

「苦いけど、効果のある薬だから……」

彼女は、のたうち回りながら、全身から黒い液を噴き出した。


そこに、エマたちが。清掃婦の格好で帰って来た。

「わぁ お母さん、どうしたの? リリカさん、何をしたの?」

「安心しろ、毒を出してるんだ」

「リリカ様は天才薬師だよ、ベス」


エマは、近づこうとするベスを止めた。

やがて、毒が全て体から抜けると、母親は静かに眠りに落ちた。

「これで、毒は抜けたよ。毒に触れないように、手袋をして、毒を吸わせた布は、後で燃やそう。着替えさせて」


私は、一息つく為に、テントを出た。

「あら、リリカちゃんじゃない?」

布教活動をしていた 西方聖教会のルミナ大司祭が、私を見つけて近づいて来た。


「久しぶりです」

「ええ、何してたの?」

私は事情を説明した。

「仮設の診療所も作ってるんだけど。手が回らないし、特殊な怪我や病気まではね……」

「わかります。私の持ってる薬を一部、寄付しますよ!」


「ありがとう。神の祝福を。クルミを待ってるんでしょ? これから円卓会議があるのよ。迎えに行きましょう!」

「えー」

私は半ば強引に、マリスフィアの侯城に拉致された。


もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。本日、新作 神は制服を着る。彼女は笑い俺は嘆く。

と 竜契の巨人 血を啜れ約束を果たせ を配信します。

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