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断罪された悪役令嬢に、ひきこもりが転生。貧乏平民からの無双。リリカ・ノクスフォードのリベリオン  作者: 織部


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ノクスフォードの名の元に

残り二話

 旧セリオ軍は、王城の前に整列していた。私は観兵を行う。

 軍の先頭に立つのは、セバスチャンとガンツだ。


 私は軍の指揮官の一人として、トモオに声をかけた。

「ねえ、どれだけ誘導魔術を使ったの?」

「それが、ほとんど使ってないんだよ。というか、逆なんだ」


「え、じゃあ、セリオが魔術を使ってたの?」

「その通り。酷いことをさせられていたと気づいて、みんな憤慨してたよ」


 それなら、すべて腑に落ちる。

「まあ、セリオ派の偉い連中が数人いたから、そいつらには引退してもらったけどね」


「もう使っちゃダメよ!」

 トモオはつまらなそうな顔をしながらも、素直に頷いた。


「リリカ様、一言お願いします」

 セバスチャンが呼びに来た。私は壇上に上がる。


「先ほど、国王より正式にノクスフォード侯爵として任じられ、再びシュバルトへ戻ることになりました。私の行いで心配をかけましたが、父の意志を継ぎ、この国に尽くすつもりです」


 旧セリオ軍が、再びノクスフォード軍へと戻った瞬間だった。



「お待ちしておりました。リリカ殿」

 カンザブローの屋敷に迎え入れられる。規模はそれほど大きくないが、モダンな造りで、ブンザエモンの屋敷の近くだ。


 人影はなく、がらんとしている。

「いえ、遅くなりました。ご主人自らお出迎えとは、恐縮してしまいます」

「お忙しい中、ありがとうございます。ワインでもいかがですか?」


「いえ、パーティで飲みすぎてしまって」

「そうでしたか。気がつきませんでした。高級な一品物のワインなのですが……」


 残念そうな雰囲気を滲ませている。同行者は、私のほかにはエマだけだ。


「エマ、せっかくですから、いただいて帰りましょう。よろしいかしら?」

「もちろんです。それでは取引と参りましょうか?」


「そうね。まずお渡しする薬は、最上級のポーションよ。どんな怪我も治すわ」

「……噂に聞いた通りですな。これはありがたい。後ほど、お支払いします」


 彼は大事そうに懐へしまった。エマの尻尾が、横に揺れている。


「それで、冒険者ギルドのアミンはどこにいるの?」

「奴は、我々やリリカ様、それに帝国からも命を狙われていましてね。ですが、冒険者としては優秀で、一つ特技がありました」


「よく調べましたね?」

「ははは、何度も逃げられましたから。得意とする魔術は認識阻害。他人に化けるんですよ。それと、真のジョブは暗殺者です」


 次の瞬間、攻撃が来ると見越し、私は自分の周囲に強力な風の防壁を張っていた。

 男は吹き飛ばされ、天井に叩きつけられて床に落ちる。

 エマが出口を塞いだ。


「何をする!」

「それはこっちのセリフよ。そもそも、パーティなんてなかったの」


 私は会場でカンザブローを見かけたが、明らかに私を避けていた。夜に会う約束がある相手の態度じゃない。

 それに、この屋敷に他の人間がいないのも不自然だ。

 ……無能な奴。


 私は躊躇なく、彼の両足を岩で貫いた。

「ぐあぁぁぁ! 助けてくれ、誤解だ! 本物だ!」

「これで逃げられないわね。エマ、人を探しに行って」

「わかりました」


 エマは指示に従い、部屋を出ていった。

 その瞬間、男は薬を飲み込んだ。だが、効果は現れない。


「……え、どういうことだ?」

「子供の頃、親に言われなかった? わからない物を口にしちゃいけません、って」

「騙したな……」


 男の目は虚ろだ。もう、私の罠から逃げられない。


「アミンでしょ。聞こえるかしら? 聞こえたら右手を上げて」

 彼は大人しく、右手を上げた。


「成功しましたね」

 エマが笑いながら戻ってくる。


「ところで、屋敷の人は?」

「眠らされて、縛られていましたぁ」

「よかった」


 捕まえてトモオに魔術をかけさせる手もあったが、それは私が却下したばかりだ。代替策として、自白剤を飲んでもらった。



 ほどなくして、本物のカンザブローが戻ってきた。


「なんたること……リリカ・ノクスフォード侯爵のお手を煩わせ、誠に申し訳ありません。間抜けなカンクローには、きつく言っておきます。それと、私の大切な執事とメイドをお守りいただき……」


 口が閉じない。うるさい男だ。


「とりあえず、尋問をしましょう」

 アミンを縛りつける。もちろん、治療はしない。


「それで、どうして今日、こんなことをしたの?」

「なぜ今日かって? 今頃、バステーン監獄の周りは市民で溢れてるさ。市民革命が起きるんだ。偽物勇者の国王反対ってな。セリオ軍も混乱に拍車をかけてくれるはずだ」


「それを煽っているのは帝国なの?」

「は? 浅いな、リリカ。帝国は俺たちの蒔いた毒餌を喰っただけだ。気づいた時には手遅れ。もう帝国と王国の関係は修復不可能だろう。モリス教授は今頃脱獄して、市民を煽ってるはずさ」


 その不愉快な名前に、私の顔が歪む。

 彼は最初から、他国のスパイだった。


「共和国なのね?」

「いつまでも古臭い王政のくせに、同盟国気取りで大陸の盟主? 国力もないのに、笑わせる。頭が足りないんだよ」


 私は窓を開け、バステーン監獄の方角を見た。

 王都はいつもより多くの明かりが灯っている。だが、暴動らしきものは見当たらない。


「なぜだ……?」

 アミンが叫ぶ。


「新国王は、ハインリヒ国王よ。バステーン監獄付近の偽市民は、今頃全員捕まってるわね」

「くそっ……クルミに出し抜かれた……」


 王国の剣が、振り下ろされた。

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