表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その世界のつわものたち  作者: あいの
第二章 現在と、過去
76/109

第76話 参大魔道士フルーナ


 魔法使い達の中でこんな比喩話がある。


 それは、参大魔道士に成る事が出来れば一つの国が支配でき、新法大者に成る事が出来れば大陸を支配する事ができる、というものだった。


 簡易的な強さの目安のようなもので、その信憑性に関しては噂話程度なので確証はないのだが、ただ現代のこの世界においてもその基準はまんざらではなく、参大魔道士に成った者たちの大半は国の重鎮である事が多かった。


 国内の最高武力の一角として、または最強戦力として。



 ◇◇◇



 そんな世界で端的に強いと分類される参大魔道士のフルーナ・ポートレールだが、彼女は現在を治安維持連隊に所属をしており、その理念は平和であり、その為には暴力による優劣を無くそうというものであった。


 故に、今のフルーナはその圧倒的な魔力によって簡単に人を殺すという事が出来なかった。


「ったくよ、マジでブラック企業だわ!」


 悪態をつくのも無理はない。簡単に人を殺せないという事(殺したいかどうかは別の話)は、つまりは相手がどんな荒くれ者だろうが手加減をしなければならないという事なのだから。


 だが、そこは人生を72年生きてきた(内緒)ベテラン魔法使い、口は悪いがそういった経験値は割と高く手慣れてはいた。


「──ったくよ!」



 ◇◇◇



 ─一改めて戦闘開始。


 2人の現在の距離は30メートルくらいであった。町の人間たちの避難誘導は済んでいる。そこでフルーナは3秒程の詠唱を終えると、水の魔法を放った。


「ムースイ・レイ《身も心も凍る霧》」


 すると辺り一面を濃い霧が覆い、敵の──ツナギ服のこん畜生の視界と体温を一気に奪った。


 この時フルーナは相手に視線を向けながら思っていた。反応なしか、と。それはこの詠唱の3秒が敢えての3秒であり、相手がどう対処してこようとするのかを量る意味合いも込められていたからであり、結果が無反応という事は、そこから相手が気聖使いや魔法使いではなさそうだと判断ができた。何故ならこの2種の力を使う者は精神を高める為に大なり小なり身構えるという行為をするのだから。


 やはり身体能力に特化した英雄種か? にしても随分と余裕だなオイ。


 ──などと多少の苛立ちを心に秘めながらも、次にフルーナは風の魔法で周辺をドーム状に囲んだ(ただし周囲の建物は避ける仕組み)。これも詠唱時間に敢えて3秒を費やしたが、この最中にも敵が動く事はなく、寧ろ「賢しい、賢しい」と一笑していた。


「あん? 参大魔道士の私を相手に随分と余裕だな? なあ! コラ」


 フルーナはもちろん短気だ。だから咄嗟に最大魔法でこの町ごと滅ぼしてやろかとも考えたのだが、流石にそこまでの愚か者でもなく、「ったくよ!」と悪態をつきながら冷静を取り戻し、水の魔法ムースイ・レイの濃霧が風の魔法に吸収されていくのを確認していた。


 水と風の融合魔法。濃霧がすっかりと晴れた事で融合は完成となり、2人を囲うドーム状の風の魔法はこの時点で耐熱効果も得た事となった。


 しかも、その耐熱温度は、


「──2000度だ。それ以下の熱は一切外部に漏れていかねえ。これはそんな魔法だ」


 という事らしく、何故にそんな説明を敢えてしたかについては、次に彼女が火の魔法を使った事で判明をする。


「──ホット・レッド・レッド《立ち上る炎炎》」


 すると、まさかの自爆魔法のように激しい豪炎がフルーナを中心に立ち昇っていった。


 ホット・レッド・レッド──これは攻防の魔法であり、もちろん使用者に害はなく、その炎の温度は1900度(上限は3000度、下限は20度)を誇り、故に周囲に被害を及ばさない為の耐熱が必要だったのだ。


 ただし、当然の事ながら密閉空間内の温度は一気に上昇をする。それがどれくらいかは温度計がないので定かではないが、一瞬にしてツナギ服のこん畜生の額から大粒の汗が流れ落ちていた。その様子を見てフルーナが、ツナギ服と汗って相性がいい、格好いい、と思ったかどうか今は割愛を。


 ちなみに、空気が薄い所での炎は一酸化炭素中毒の危険性が……という点については気になさらないように。何故なら魔法とはあくまでも神が作った“自然現象(火や水や雷や風)を模したもの”であり、必ずしも神が作ったものと同じ効果があるわけではないので。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ