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その世界のつわものたち  作者: あいの
序章 ルアとラグン
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第2話 ルアとラグン①


 世界に4つある大陸の内の1つが滅んだ。


 世界で最小の大陸だったとはいえ内部には15の国と3億以上の人間が住んでいたその大陸が僅か7日で滅び、人口は実に80%以上が死滅した。


 その絶望の主はたった1人の男であった。 


 ラグン・ラグロクト。


 1年前に、世界の祖となる神獣の力をその身に宿した人間。


 その身体は頑丈すぎる程に頑丈なもので、大勢の魔法使いから一斉に魔力をぶつけられても、大勢の兵士や戦士や一騎当千の猛者達から攻撃をされてもほぼ無傷であり、人間の弱点である目や鼻や耳といった弱い箇所に傷を負ったとしても神獣の恩恵である優れすぎる自己治癒能力によって瞬時に完治した。


 滅ぼせない肉体。


 更にその左腕はもっと厄介であった。


 あらゆる全てを無効とする闇のように黒い左腕。


 それは大陸で最高レベルの魔法使いの天災のような魔法も、それと同等とされる大陸で最強と謳われる英雄の攻撃も、その全てを無として防いだ。


 無論そんなラグン・ラグロクトの攻撃力も常軌を逸していた。


 まるであらゆる全ての障害物が薄紙であるようだった。強固な建物も、鍛え抜かれた肉体も骨もそれを覆う頑丈な鎧でさえも、その全てを攻撃の意思をもって触れるだけでいとも簡単に破壊をした。


 数としてはただの1人だが、その威力は拳銃から放たれた銃弾のように強大あった。


 そんなラグン・ラグロクトが2つ目の大陸に上陸した時、その恐怖に対抗すべく世界中から猛者たちが集結した。


 世界最大の大陸で行われたその大戦争は、後に「世界の大敗北」と呼ばれ、ラグン・ラグロクトが勝利をし、激しい戦いを物語るように大地が4つに裂け、世界の人口の半分が失われた。


 絶望の主、ラグン・ラグロクト。


 ルアが動き出したのはその一週間後だった──



 ◇◇◇



 ルア。


 ──少女の姿をした、神に使命を与えられて作られた特別な存在。


 形を持たない神に代わり世界に害を成すものを粛清する代理者。


 ルアは、願うだけであらゆるものを破壊した。建物も、大地も、海も、空も、生命も、この世界にあるものなら、世界そのものさえも。


 人よりも神に近い存在。



 ◇◇◇



 ──世界の臍と呼ばれる、コア島。


 ルアは大地に降り立つと、すぐにこの島の建物や樹木といった障害物になりそうな物を全て破壊して更地にした。そこにはラグン・ラグロクトの存在も願っていたのだがそれは叶わなかった。


「そんなに簡単なら苦労はしないよな。クカカカッ!」


 ルアには3人の仲間がいた。誰もがこの世界の最高レベルの魔法使いで、その内の二人がミヨクとファファルであり、今そう言って豪快に笑ったのが封印の魔法使いのソクゴだった。


「ほんと、お前は酷い事ばっかするな。いい加減にしろよラグン!」


 そう言ったのはミヨクで、彼のこの時の年齢は50を超えていて(あの後もファファルに2回殺されていた為)、髪の毛はまだあるが毛量は少なく色は白く風が吹いただけで髪型が劇的に変わり、腰の曲げ伸ばしはまだまだ平気であったが、膝は歩くだけで少々痛かった。


 そんなミヨクを見てソクゴは「頼りねー。クカカカ」とまた笑い、今日の為に気合い入れて坊主にしてきた茶髪をペシペシと叩きながら「──切った髪を捨てずにお前に分けてやればよかったな。な、ミヨク。クカカカ」とまたまた笑った。


「……」


 ファファルは無口だった。しかも3人に目を向ける事もなく、寧ろ目を閉じて背を向けて立っていた。ちなみにミヨクをこれまでに3度殺した大鎌は今日は持ってきていないようだった。


「うるさいぞ、ソクゴ。歳上は敬え。俺はもう200年くらい生きてるんだからな!」


 ミヨクがそう言った。


「クカカカ。禿げを敬わないのは俺のポリシーだ! 敬って欲しかったらお前の時の魔法で時間を止めてさっさとラグンを殺してみろ! 敬意ってのはそういうものだミヨク! クカカカ」


「……くっ、痛い事を……。この世界には俺の魔法で時間が止まらない奴が何人かいるのを知っているくせに……。ラグンもその1人なんだよ……」


「使えねー! マジ使えねー! なっ、分かったろ? そんなお前を敬う必要がないんだよ! クカカカ」


「……勘違いするなよソクゴ。お前の時間は止まるんだから、お前を殺す事はできるんだからな」


「クカカカ! それこそ無理だろ! 何故ならミヨクは無駄な殺生はしないからな。優しいのがお前の唯一の取り柄だからな、クカカカ!」


「ぐう……いちいち核心を……」


「クカカカ!」


 緊張感のない賑やかな2人。


「……」


 ファファルは相変わらず背を向けたまま、ただ静かにしていた。


 そんな3者を順に見つめながらルアは心の中で思っていた。


 実力だけは確かなんだけどね、と。


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