九話
「...この状況で情報ですか?そういえば先ほども妙に落ち着いていましたが...」
「数年前、長野の山村で今と同じような現象が発生した」
何も言葉を発さない志乃を置いて彩斗は話を進める
「その時は今のように世界各地で起きていたわけではなく、俺の村だけに限定されていたわけだが...村の人の多くがゾンビ化し俺の両親もゾンビになった」
「そんな...」
彩斗は刀の鞘を強く握り、言葉を続ける。
「俺は楓を守るために、村の人や、両親を...」
ただひたすらに、切った。泣く楓の手を引きながら、自分と妹を守るために...
「だから知っている。奴らの特性を」
「そんな事件があったなんて...知りませんでした」
「社会的な混乱を避けるためにこのことは徹底的に秘匿されたからな。俺と楓、その他数名の村民を残し、ほぼすべての村民がゾンビ化し村は自衛隊の手によって焼かれ、駆除された。」
「そう...ですか」
「このことは口外しないでくれよ。生活保護を止められる。といっても、この状況じゃ生活保護も意味をなさないだろうがな」
「...この状況で心配することがそれですか」
少し気の抜けた呆れ顔で志乃が言う。
「ともかく、そんなこんなで奴らの特性は少し知ってるんだ」
「教えてください」
「まず、奴らの急所は頭部だ。原理は分からないが、奴らの胴体と頭部を切り離したり、頭部に大きな損傷を与えると奴らは動かなくなる。死んでるのかどうかは分からないがな」
「脳...に関係しているのでしょうか?」
「それと、奴らは音に敏感だ。知能が残っているのかも分からないが、視力よりも聴力に状況把握能力を依存している可能性が高い。だから音を立てる行動は極力避けたい」
「分かりました」
「こんなところか...とりあえず俺が知ってる情報はこんなところだ。長瀬も気づいたことがあったら、言ってくれ。新しい手がかかりになるからな」
「それじゃ、そろそろ行きましょうか」
「そうだな。覚悟はできてるか?」
「もちろんです。足を引っ張るつもりはないので」
そうして再び、彩斗と志乃はゾンビたちうろつく町へ駆けていく。




