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七話

目の前の怪物は...ゾンビだった。


映画やゲームでのみ存在する、架空の生物。


しかし、これは映画の中でもゲームでもなく現実で存在していた。


「長瀬!逃げるぞ」


「なんで...どうしてこんな...」


彩斗はまだ気が動転している志乃の肩を強くつかみ、自分のほうを向かせる。


「しっかりするんだ!とにかく今は逃げるぞ!」


長瀬の手を強引に引っ張り、すくんだ足を無理やりにでも動かす。


すると...


二人の動きに反応したゾンビがこちらを向き、ずんずんと遅くはあるが確実に事らに向かってくる。


おびえる志乃の横で彩斗はとっさに近くの瓦礫を拾い上げ、自分たちとは反対方向の窓ガラスに向けておもいきり投げた。


鋭い音とともにガラスが砕ける。


すると...ゾンビたちは音のした場所へ猛ダッシュで走っていく。


まるで大きな音に吸い寄せられるかのように近くにいたのであろう、別のゾンビたちも群がってきた。


「なんなの...これ」


彩斗はその隙をつくように、志乃の手を引いて走り出す。


「あなたは一体...」


「後で話す。とにかく今はここから逃げよう」



とりあえず、人もゾンビもいない路地裏まで逃げてきた二人。


「いったい何が起きているんですか?笠井君はずいぶん冷静なようですけど...」


「おそらく俺はまったく同じ現象をすでに経験している」


「は?」


「ともかく、話はもっと安全なところで。ひとまず俺の家に行こう。家なら鍵がかけられて安全だし、妹が帰っているかもしれない」


「妹さん、いるんですか?」


「ああ。中二だ」


「そうですか。ひとまず笠井君の家に行くことで同意します」


「感謝する。ここから20分くらいだ。長瀬の家はどうする?」


「とりあえずは後でいいです。この状況じゃ、あまり期待はできないですから」


「そうか...」


数秒の沈黙が二人の間を流れる。


「行くか」


彩斗はかつて妹にしたように志乃の手をやさしく握って歩きだす。


志乃は驚きつつも、握られた手から伝わる彩斗の体温を感じて少しの安らぎを感じた。


二人はゾンビにできるだけ鉢合わせないように身を隠しつつ進んでいく。


「ゾンビゲームではこういう薄暗い路地裏こそゾンビがあふれている定番だけど...現実では違うみたいね」


「確かにな。あまりゲームや映画と混同しないほうがいいということだな」


「ゲームや映画ならゾンビが出てくるタイミングとかを読めるのに...今は常に気を張っとかないと」

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