六話
「なんか不気味じゃありません?」
「そうだな…」
周囲を見渡す。
半壊した店内に人影はなく、ただ悲惨な状況だけが残っていた。
そこで違和感に、気づく。
トラックの近くの血だまりから、引きずったような血の跡が奥に続いている。
あれだけの衝撃を発生させた事故でドライバーが即死でなかったことに驚く。ドライバーはどうやら助けを求めて店の奥まで行ったようだ。
そして、何より不自然な...
「なんで誰一人としていないんでしょう...」
そう。辺りには誰もいない。
これだけ派手な事故なのだ。消防、警察、救急が来るべきだし、野次馬がいたっておかしくない。
それなのに誰もいない。静かすぎるのだ。
とにかく情報を集めようと彩斗はスマホを探す。
「あ...スマホ事故で壊れたわ」
彩斗の視線の先にはバキバキに画面が割れ、中の電子基盤が見えた状態のスマホがあった。
「長瀬、スマホ貸してくれないか?」
「ええ、どうぞ...」
その時物音がした。志乃がその音に気づき動作を止める。
何の警戒心も無く、物音のするほうへ進む志乃の華奢な背中を見て、なぜか彩斗の脳が警鐘を鳴らす。
「長瀬...待つんだ」
「?...何でですか」
志乃の質問には答えず気配を消しつつ音のするほうへ慎重に進む。
「......っ」
人がいた。
その人はむしゃむしゃと汚い咀嚼音を出しながら、人間の裂けた腹に顔を突っ込んで、むさぼるように喰っていた。
その光景は恐ろしく...そして懐かしい光景だった。
「......っ!笠井くん。これは...」
目の前の惨劇に志乃が震えた声を出す。
目の前の怪物は...ゾンビだった。




