五話
どのくらい時間がたっただろうか。
彩斗が目を覚ますと、そこは瓦礫の下だった。
半ば反射的に状況を手探りで把握しようとする。
幸い、瓦礫の下ではあるけれども、彩斗を押し潰すほどの重量の物ではないらしい。
辺りの広さを調べるために、手を動かすと…手になんだか奇妙な柔らかさがあることに気づく。
温かく、弾力を持つがふにゃりと手にフイットするような柔らかさをするそれを夢中で揉む。
すると…
「は……ぁん…」
不意に艶かしい声が響く。
「…私の胸がそんなに気に入りました?」
志乃の剣呑な目が彩斗を見ている。
「………すみませんでした。とても良かったです」
「…殺しますよ?」
「本当に申し訳ありませんでした!」
「…全く…目を覚ましたら男に胸をさわられているなんて…レイプ魔に寝込みを襲われた気分です」
「悪意があるな?俺は別に君をレイプしようとしたわけではない」
「分かってますよ。とりあえず退いてください」
「承知いたしました…」
彩斗がまず瓦礫の外に這い出る。その後、志乃が瓦礫から出るのを手伝って二人は瓦礫から出ることができた。
「酷い…」
「そうだな…。俺たちもたまたま安全地帯には入れたから生き残れただけで…」
「笠井くん。ありがとう。あなたのとっさの判断で助かったわ」
「気にしなくでいいよ。とっさにからだが動いただけだから」
「それでも、そのお陰で助けられた。ほんとにありがと」