四話
話が出きる場所に移動する道中、長瀬から自己紹介があった。
彩斗も「笠井彩斗」と本名を言う。
「なるほど…「かさいさいと」の一部から取って[サイサイ]ですか…。安直すぎません?」
「それを言うなら、そっちも「ながせしの」のナガとノを合わせただけだろ。十分安直だ」
「そんなことないです」
そう言って、志乃は頬を膨らませそっぽを向く。
「ここでいいか?」
彩斗が指差したのはどこにでもあるようなファミレスだった。
「いいですよ?ただのオフ会ですので、あんまり値段が高い店だとどうしようと思ってました」
「俺もだ」
そう言って二人はクスッと笑う。
ファミレスの自動ドアが開くと、店員の元気な「いらっしゃいませー」という声が響く。
「2名。テーブル席で。とりあえず、少し早いが夜飯でいいか?」
「いいですよ。私普段も少し早めに夜ごはんにしますから」
慣れた手付きで志乃がメニューを開く。
「私このパスタで」
「…早いな。じゃあ………ふわとろ卵のオムライスにしようかな」
店員を呼んで注文を伝える。
「早速本題ですが、今回サイサイ…笠井くんをオフ会に誘ったのは次のアップデートで追加される新ダンジョン薊花の洞窟のボス、アビサルヴィシャップを共闘して倒したい、というのをお伝えするためです」
「なるほど…俺もアップデートされたらすぐ潜るつもりだったが…なんで共闘なんだ?」
「だってあなたいつもファーストキル取ってくじゃないですか。ファーストキル限定のアイテムで、今回だけはどーしても欲しいものがあるんです。だから、他のアイテムは全て持っていっていいのでそれだけ欲しいなー、と」
「…セコいな。まぁ、俺のレイド構成だと今回の報酬は別に売却予定だったしな。いいぞ?」
「本当ですか?!やった!」
「代わりに、途中で出る強化素材系は全てもらうぞ…。これで武器の突破もはかど…」
彩斗がふと目を外に向けると…こちらに向かってくるトラックが…
「危ない!」
とっさに、志乃の体を押し倒し抱き寄せた。
ドゴオォォォォン!!!