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一話

ゾンビ。


かつて人だったものがウイルスにおかされ死亡し、人を喰らう怪物となり果てた存在。


ただ食欲を満たす本能だけで動く死体。


噛まれた人間もまたウイルスに感染しゾンビとなる。


歩く恐怖。


永遠に増え続ける恐怖。


人を、生活を、日常を喰らう恐怖。


あいつらは、俺たちの生活の近くに潜み続けている...かもしれない。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ーーいちゃん......にいちゃんーー」


聞こえる。


とても聞きなれた...そう、この世にたった一人の家族


妹の声がーー。


「お兄ちゃん、いい加減帰ってこーい!!」


ガクガクと肩を揺すられた彩斗はハッと我に返った。


「もおぅ、またゲームに没頭してるぅ!」


「楓か。こんな時間になんだ?あまり夜中に大声を出すものじゃないぞ」


「あのねお兄ちやん。お兄ちゃんのことがだーい好きな妹は、お兄ちゃんの頭がひじょーに心配なんだよ?」


「血を分けた兄妹だからな。」


「今は七時だよ?夜中じゃないよ?」


言われてようやく時計に目をやると七時十二分。カーテンの隙間からは淡い日の光が差し込み、小鳥のさえずりが聞こえてくる。


「これは驚いた。もう朝になっていたのか」


「驚いたのはこっちだよ。朝の挨拶しに来たら「夜中だから大声出すな」なんて言われたんだから」


「すまんな。朝めしだろ?今から作るよ」


「早くしてよ~」


「わかった、わかった」


彩斗をせかす幼い少女の名前は、笠井楓。


彩斗に似て年齢に似合わず大人びた顔つき

は、中学二年生と思わせないが、挙動の一つ一つや表情が天真爛漫で甘えたがりな性格を表すようで、周囲からの印象も良いようだ。


妹が速く速くとせかしてくるので重い腰を上げ、台所へ向かう。


フライパンを火にかけ、サラダ油をたらしてウインナーと卵を一緒に焼いてしまう。塩コショウをかけて堅焼きになるまでじっくり焼く。


フライパンがジュージューと音をたてる度に、楓はあるはずもない尻尾をフリフリさせて目を輝かせる。


ありきたりな朝めしを、皿に乗っけてテーブルに並べる。


「いただきます」


「いただきます」


楓は「うっま~い」と幸せそうにただの焼いたウインナーをほおばる。安上がりなやつだな。かわいいけど。


こんなふうに何気ない日常が一番の幸せだと本当に思う。本当に...。


「お兄ちゃん貫徹してるのに学校いくの?」


「単位を落とすわけにはいかないからな」


「ホントに大丈夫?おにーちゃん大好き妹はとーっても心配なんだよ?」


「スイッチが入れば、シャキッとできるから大丈夫だ。」


「そういう無駄な特殊能力やめようよ~。体調第一が一番なんだよ?」


「体調には常に気を配っているさ。代わりに今夜はしっかり寝ることにするよ。」


「そうしてよ?おにーちゃんが倒れたら心配するんだからね?」


「そういえば、今日の帰りは少し遅くなる。」


「んー?友達が一人しかいないお兄ちゃんが、遊んでくるの?」


「ゲームで出会ったやつとな」


「なるほー。りょーかいだよ、晩ごはんまでには帰ってきてよね」


「分かってる」



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