初めての出会い
いよいよ"私"以外が登場します。
ここから会話も増えると思います。
(貴方はなんなんだ?どうしてここに来た?)
と、声があたりに響いた。
まだこの時私は言葉という概念を知らないため音として認識していたがなんとなく言っていることはわかった。
急に音が響いたことにより私は驚いたがとりあえず質問に答えようとした。
だが喋ろうにも口から出る音は「ガァ」か「グル」ぐらいしかなく、どんな風にすれば言葉が出るのかわからない。
しかも時間が経つごとに怯えの強さが増していっていた。
先ほど声を発した者は、周りの者たちの代表者なのか他の者たちより怯えが少ないが警戒の色が強かった。
言葉が無理、何かで絵を描いて説明しようにも肝心の描くものがない。
ならば体を使って説明するしかない。
そう決めた私は動かないようにしていた(少し動くだけで怯えが強まったから)全身を使って今までの動きの真似をした。
すると最初は疑問と怯えの気配が強かったのが、だんだんと疑問とほんの僅かだが怯えの気配が少なくなっていった。
説明し終わり相手の反応を待つためじっと待っていると、また声が響いた。
(貴方は話すことができないのか?)
そう問われ、私は尻尾を前に持ってきて怖がらせないように地面を優しくトンと叩き肯定の意思を示す。
それに納得したのかどうかはわからないが話していた相手が姿を現した。
とても美しい青い狼だった。
瞳は深い叡智を感じさせる体の青よりも濃い色で、顎から胸元にかけて徐々に白みがかっていた。
顔は凛々しく、だがどこか穏やかな雰囲気を纏っていた。
そして何より特徴的なのはその体の巨大さと尻尾が十本あることだった。
私の体がまだ小さかったというのもあるだろうがその時はとても巨大に感じた。
その狼は見下ろす形で、私は見上げる形で向かい合った。
(つまり貴方は我々を攻撃する為にここにきたのではないと、我々を攻撃する意思はないと考えていいのか?)
狼はそう言ったので私はまた肯定の意思を示すために尻尾で地面をトンと叩いた。
すると狼はじっと私の顔を見ながらしばらく佇んでいたが、私の意思を一応信じることにしたのか警戒の気配が少なくなった。
そして突然見上げていた体が(それでもまだ大きかったが)さきほどより二回りほど小さくなった。
私はまたそれに驚き、その驚きの気配が狼にも伝わったのか説明してくれた。
(ああ、この姿は本来の姿ではないんだ。ただ先ほどの巨大な体だと森では不便だからね。"力法"で小さくしているんだ。ただ先ほどの姿も本来の姿ではないんだけどね。)
どういうことかと思い、そこで私は気づいた体が小さくなっただけでなく尻尾にも変化があることを。
十本あったのが一本に減っていたのだった。
あと"力法"ってなんだ?
(先ほどは尻尾が十本あっただろう?あれは戦闘形態なんだ。決して貴方を攻撃するつもりはなかったが、万が一ということも考えてね。本来は一本なんだ。あと"力法"については後で説明するよ。)
そう狼は言った。そして周りの者たちに呼びかけた。
(もう大丈夫だ。みんな出ておいで。)
すると若干怯えながらも恐る恐る出てきた。
思ったよりもたくさんおり大体百体ほどの生物たちが姿を現した。
その姿は一つとして同じのはなく大きさや色も様々だった。