騒がしい家族
翌朝目を覚ますと、横で寝ているウィルに一瞬誰?と戸惑ったが昨日はウィルと寝たんだったとすぐに思い出して落ち着いた後、周りを見渡りしてみる。
そこで二つのことに気付いた。
一つ目はどうやらウィルは木の影になるところを寝床としてくれたらしい。
多分朝、陽光で眩しくないようにとここを選んでくれたのだろう。
二つ目は誰かがここにいるということだ。
もちろん私とウィルのことではない。
さっき周りを見渡した時に視界の端でサッと動く影が見えた。
どうやら木の後ろに隠れたらしい。
(誰?)
私は普通に問いかける。
なぜならウィルが昨日の練習中に話していたから。
――昨日――
私は横でアドバイスをくれるウィルに聞いてみた。
(そういえばああゆう空を飛ぶ相手との戦いってよくあるの?)
(いいえ、何日かおきに一回二回あるぐらいですね。あとは一日に一回程度森の外から水中系の敵と、地上系の敵が来るくらいですね。ですからとても少ないです。)
ウィルはとても残念そうに言った。
(えっ、それって多くない?)
(いえいえ、多分アルがそう感じるのはまだ目醒めてからとても短いからだと思いますよ。)
(どういうこと?)
(あら、そのことを聞かされていませんでしたか。わたくし達はこの生命に終わりがないんです。最年長はルビアですが、ルビア以外の家族達も大体・・一万年ぐらいは生まれてから経ってるんではないでしょうか。ですから、戦闘が好きなわたくしはともかく、みんな少ないとは感じていると思います。)
(えっ?!)
私はそのことにとても驚いたが、言われてみればそのような貫禄が・・貫禄が・・あったかなぁ?
うん、少なくともルビアはあったと思う。
初めて会ったとき話しかけてきたから。
(まぁそれで長年の経験上、この森の中でも深い位置のここへくる敵はそんないなくて、きたとしても敵を感じるのですぐにわかります。・・さあ、練習を続けますよ。)
――――――――――――――――――――――――
そんなわけで敵意を感じないし、何よりウィルも起きたりしないので声をかけた。
(隠れてたって影でそこにいるのはわかってるよー。)
本当は見えてないけれどかまをかけてみた。
(えっ!!マジか!!って見えてないじゃん!!何だよもー!!)
そう言いながら木の影からその大声の主が現れた。
だがその声に反してその者は思いのほか小さかった。
青藤色のふわふわしてそうな羽毛、尾羽が若干長い。
所謂鳥の姿をした者が、こちらへ向かってよちよち歩いてきた。
(おはよう、エアー。)
その者は挨拶の時と昨日の戦いの場にもいたエアーだった。
(おう!!おはよう!!ってそれよりも!!寝てるところをイタズラしようと思ったのに!!何で起きちゃうんだよー!!)
(いや、何でって言われても。)
そんなことを言われても困る。
目が覚めちゃったんだからしょうがない。
(こら、エアー。アルが困ってますよ。)
私がぶつぶつ文句を言ってるエアーに困っていると、そんな声が後ろから聞こえた。
どうやらいつの間にかウィルが起きていたようだ。
(あっおはよう、ウィル。)
(おはよう、アル。)
ウィルは微笑みながら挨拶をした。
(ちょっとちょっと!!俺にも挨拶してよー!!)
(・・全くあなたは朝から元気ですねぇ。はいはい、おはようエアー。)
(ちょっと雑くない?!)
すごいウィルが面倒臭そう。
私はこの2人のやりとりを見てどこか懐かしさを覚えたが、考えてもわからなかった。
(あなたはよく毎朝毎朝ちょっかいかけられますね。)
(いやいやそれもあるけど!!今回はアルのためでもあるから!!)
そこで私の名前が出て二人に意識が向いた。
(私?)
(えつ、あっ、えっと・・アルはまだ俺らと交流するのはまだ気まずいかなと思って、それで〜。)
エアーはさっきと打って変わってとても小さな声で恥ずかしそうに言った。
どうやら私と初めて会ったときのことで気まずさがまだあのかなぁと考えたエアーは、それをほぐそうといつもウィルにしているイタズラを私にもしようとしたらしい。
(ふふふっ。)
私はその言葉を聞いて笑ってしまった。
(なっ、何で笑うんだよ〜。)
エアーが若干涙目で聞いてきた。
(いや、だって別に私はもうあの時のことを気にしてないし気まずさもないから。)
(えっ!!そうなのか!!)
(うん。だから君たち家族と交流したくないわけではなくて・・まぁ暇がなかっただけだよ。)
実際は一日一日が濃くて忘れていたのもあるけど、まぁ暇がなかったのも事実だから。
(だからこの後ルビアと仲直りしたらみんなとお話ししたい。)
(えっ!!ルビアと喧嘩でもしたのか?!)
(いや喧嘩というかちょっとあって。)
(じゃあ・・俺がついてってやるよ!!いいだろ!!)
そう言って私とウィルをキラキラした瞳で見た。
(いいんじゃないですか。)
私たちのやりとりを優しい雰囲気で見守っていたウィルがそう言った。
(うんいいよ。)
いても困るわけではないし、むしろエアーがいた方が明るくていいと思った。
(じゃあ行こうぜ!!)
(わかった、ってはや。)
エアーがさっきよりも早い動きで歩いていでしまったので私はウィルに簡単に挨拶して慌てて後を追いかけた。