特別な者
気まずくて森を探索してくると言ってしまったが、どうしようかと考えながら歩いてるとなんか変な感覚を覚えた。
その感覚がよくわからず周りを見渡すが特に変なところはない。
疑問に思いながらも歩き続けていると、突然声が聞こえた。
(貴方がアルリーンですか?)
私はその謎の声に驚いた。
・・なんか最近驚いてばっかりだな。
どうやら謎の声は木の上から聞こえてくるようだった。
木漏れ日が眩しいのであまり見えない。
(そう。・・君は誰?)
(わたくしは『木の守護者』"ウィルドリス"。皆んなからはウィルと呼ばれています。)
とても優しい声でそう言ったウィルは、木の上から幹をスルスルと伝って降りてきた。
まず目に付くのがその体で、古代の大木の幹のように深い緑色の鱗に覆われており、木漏れ日が当たるとその鱗がまるで新緑の葉のように輝いていた。
目は深いが透き通った緑色で、縦長の瞳孔だった。
地面に降り立ったウィルはとぐろを巻いて、鎌首を持ち上げた。
大きさはルビアより若干大きいくらいだ。
ということはルビアの時と同様、私な上を見上げることになる。
(初めまして。貴方のことは聞いていますよ。)
(えっと、ありがとう?・・え〜、ウィルも家族?)
(そうですね。わたくしも家族ですよ。)
どうやら家族で合っていたようだ。
何となく名乗りを聞いた時から思っていた。
なぜならルビアも挨拶を交わした時、"水の守護者"と言っていたから。
この感じだと各属性ごとにいそうな感じである。
(それにしても驚きましたよ。あの膜を通れるなんて。わたくしは通れませんから。)
(膜って何?)
(さっきここまで来る時に変な感覚がきませんでしたか?)
(あった。)
(それが膜です。正確にいえば"保有力素が多い者を通さない結界"です。結界と違って見えない上に柔らかいので、膜と呼んでいますけど。)
(えっ、じゃあ何で?)
その膜がウィルの言う通りならば、皆んなが怖がるくらいの力素がある私は通れないということになる。
(それはわたくしにも分かりませんね。・・ただ考えられるとすれば、アルの体色が真っ黒だということです。)
(どういうこと?)
(わたくし達は力法を扱いますよね?そして力法には属性があります。それはルビアから習いましたよね?)
(うん。)
(で、わたくし達はどの属性も扱えますが、得意不得意があります。わたくしの場合だと木の属性が一番得意です。ルビアの場合だと水の属性です。・・ここからが本題で、どうやらその得意な属性が体色によって左右されるようなんです。わたくしは緑系の色なので木属性、ルビアだと青系の色なので水属性となります。)
(じゃあ私は?)
(アルはさっきも言った通り黒系の体色をしています。黒の場合は影属性か、全属性が得意のどちらかです。・・アルはどの属性が得意なんですか?)
(まだ習ってないからわからない。)
(そうですか。ならば(空から敵襲ゥーー!!)っ!)
ウィルが言いかけた時どこからか声が聞こえてきた。
どうやら念話とはまた別の力法のようだ。
(この続きはまた後で良いですか?一瞬で戻ってきますから。)
(うん。いいよ。)
(よかったです。・・あっそうだ、戦闘での力法を見といてください。)
そういうとウィルは力法で地面から大きな鏡のようなのを創り出した。
(じゃあこれを見ていてください。)
そう言うと一瞬で目の前から移動していった。
鏡のようなものを見ると巨大な生物が写っていた。
――ウィルドリスサイド――
((フフッ。・・まさかわたくしが彼の方に力法を見せることとなるとは。・・無様な姿は見せられませんね。))
ウィルは嬉しそうに笑っていた。
本人はただ笑っているだけだが、その顔はよく胡散臭いと周りから言われていた。
あとウィルは戦闘好きである。
そしてそんなことを考えながら進むと、大きな泉が見えた。
その泉の上空を一体の巨大な生物が飛んでおり、その下で今まさに攻撃をしようとしている者がいた。
(エアー、攻撃しないでください。)
その者に向かってウィルは声をかけた。
(えっ!!ウィル?!いつもだったらこの程度相手しないのに!!)
(騒がしいですよ、エアー。いいから今回はわたくしがやります。)
そう言うとウィルは、まだ何か言ってるエアーの言葉を無視して"敵"へと目を向けた。
その生物は蝙蝠のような翼を持ち、大きな嘴、体毛は体だけ、尾には剣山のような棘があった。
全体的になんとも言えぬ姿だった。
(さぁ、見ていて下さい。アルリーン。)