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閑話

―――――――――――――――――――――――――


――とある森に棲む者――


その者は通称"魔聖樹"と呼ばれる森奥に棲んでいた。

この森は聖樹の森と似て非なる森として知られている。


聖樹の森は魔物がおらず妖精や聖霊、耳長族などが棲んでいる、安らぎを与える美しい森だ。

だがその聖樹の森に似ているが、森に入った者に安らぎを与え油断させ新たな獲物としてしまうのが魔聖樹だ。

ただこの二つの森の見分け方(例外はあるが)は簡単だ。

感知魔法を扱い魔物がいるかどうか確認すればいい。


それでも魔聖樹へと入ってしまうのはとてつもない馬鹿か、桁外れの力を持った者のどちらかだ。


その者は窓から差し込む朝日に照らされた部屋の机で、幻想茶を添えて本を読んでいる。

翡翠のガウンを着て深緑のイヤリングを付けていた。


パラパラと本のめくる音が響き、森のせせらぎが聞こえる。

どうやらまだ寝起きのようで時々欠伸をしている。

そして茶杯を手に取り飲もうとしたその時、音が響いた。


それに驚いたその者は椅子ごと後ろに倒れ、茶を見事に顔に溢した。


「アッッッチーーー!!!!!」


そして心の底からの大声を出した。


「水っ!!水っ!!"水"!!」


部屋を駆け回りながら魔法を唱えた。

余程慌てていたのだろう、本来なら完璧に制御している魔力をこの魔法へ全力で変換して水を被るイメージをした。

するとどうなるか、大量の水が現れてこうなる。


「あっ、やべがぼっゴボボボボボ」


その者は、開いているドアから外へと流されていった。

しばらくして出続けていた水が途切れ、その者が戻ってきた。

そして濡れてしまったところの時を戻して濡れる前に戻した。


「あ〜〜、何なんだよ本気で驚いたわ。折角こっちが優雅な時を過ごしてたってのに。」


そして左手に持った茶杯を見てとても残念そうな顔をした。


「あ〜あ、貴重な最後の一杯が。買いに行くのめんどくせぇのに。」


どうやら面倒臭がりのようだ。


「まあこれは後で考えるとして、あの声の主にゃあ一言文句言ってやらねぇと。・・・とりあえず片付けるか。はぁ〜〜、めんどくせ。」


やっぱり面倒臭がりのようだ。


―――――――――――――――――――――――――


――とある大陸――


キィィン、キンッ、ヂリリリリリッ。


「おひいさま!!どうか貴女だけでもお逃げくだされ!!」


「そうです姫様!!我々のことは気にせず逃げてください!!」


キンッ、キンッ、ギンッ


数人大勢の敵とが剣戟を交わしている。刃が交わるたびに火花が散った。如何やら武器は刀のようだ。


「駄目よ!!爺やも貴方達も一緒に逃げっ、きゃっ!!」


「姫様〜、いいから逃げますよ〜。」


戦っていた一人が敵を受け持ち、戦線を離脱した者が姫様を抱えた。いや、というより担いだ。


「何するのよ!!離してよ!!」


「暴れないでくださいよ〜。・・爺さん、あとは任せろ〜。」


キンッ、ドカッ、カキンッ、ズバッ。


「オウッッ!!クソガキ、あとは任せたぞ!!」


その言葉を最後に姫様を担いだ男はその場から逃げていった。


「追えっ!!逃がすな!!」


「待たんかいッ!!賊どもが!!追うなら、このワシを倒してから行ってもらおうかの!!」


そう言って追いかけようとする者達の前に立ち塞がった。

そして刀を構え直すと何十人かが気絶した。


「うっ、すげぇ気迫だ。気に当てられて前の奴ら気絶しちまった。流石剣聖といったところか。」


ズバッ、キンッ、ズバッ、スタッ。


「御師匠様、我々を忘れてもらっては困ります。」


「そっすよ。師匠だけで盛り上がらないでくださいっす。」


「辰守様は寝てなよ。もうおいぼれなんだから。」


「こんの、おめぇら、揃いも揃って生意気言いよって。」


如何やら姫様を守っていた者達は師弟の関係にあるようだ。


「だがよぉこっちは大勢いるんだ、って聞いてんのか!!」


「えっ、なんじゃって?」何ですか?」何っすか?」何?」


「っ!!舐めやがって!!かかれーー!!」


「「「オオーー!!」」」


(護衛の者達が)本気の戦いが始まったようだ。




数十分後


「ゴホッ、ゴホッ。」


(最早、ここまでか。)


「ゼェ〜、ゼェ〜、ゼェ〜、フゥー、手こずらせやがって。」


辺りには大勢の賊の防具や武器と思われる物が散らばって、周りの木や地面がボロボロになっている。

そして護衛の者達は気絶しており血を流している。

唯一師匠と呼ばれていた辰守だけが片腕を失って意識を保っている。


「だがこれでテメェらももうおしまいだ。・・これでトドメだーー!!」


(おひいさま、どうかご無事で。)


賊達がトドメの一撃を入れようとした。その時あの声が響いた。


「「「ッッ!!」」」


そして賊達は全員気絶してしまった。

辰守はというと色んな意味でぽかんとしていた。


(何じゃったんだ、あの音は?なぜワシは気絶していないんじゃ?・・いや、今考えてもしょうがないか。)


「あ゛、ゴホッゴホッ。」


(駄目じゃな。喉がやられてしばらく声が出せそうにないわい。・・体の方は、腕だけは動きそうじゃな。)


辰守はそう考えるや否や、這って弟子たちの元へ向かい

一人一人秘孔を突いて目を覚まさせるのだった。


一方その頃、姫様を抱えて逃走していた者は姫様が気絶してしまって戸惑いながら走っていたのだった。


「え〜〜、如何しよ〜〜。」


―――――――――――――――――――――――――


――とある海――


とても巨大な生物が海面を悠々と泳いでいる。

そこへ声が響いた。


(目覚めたか。)


そう考えた後海中へと潜っていった。


――とある谷底――


そこでは恐ろしき怪物達が争っていた。

そこへ声が響いた。

すると怪物達はそれに応えるかのように吠え出して一斉に同じ方向へ走り出した。


――とある雲の上――


何の音も届かぬ所、水でできた生物達が泳いでいる。

その中心には宮殿があった。

そして玉座に一人座っている者がいた。

そこへ声が響いた。

玉座に座っている者は閉じていた目を開けた。

何かを唱えるとその場から消えてしまった。


――とある大穴の中――


音がとても反響していて時には攻撃ともなる所。

一人座禅している者がいた。

そこへ声が響いた。


その声は反響し攻撃となってさその者へ届いた。

その瞬間その者はその音を素手で斬った。

そして何事もなかったかのように座禅を続けた。


――とある荒野――


見渡す限り何もない所。

そこをゴーレムが歩いていた。

そこへ声が響いた。

すると全身が崩れてしまったがまた直ぐにくっついて形を変え歩き出した。


―――――――――――――――――――――――――










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