力法
今更だが主人公の"私"はルビアの真似をしているだけで性別がない。
(アル。次は寝る前に結界を張る方法を覚えようか。そうすれば独りでも力素を漏らさないようにできるし、寝ている間も結界ならば勝手に力素を吸い取って張り続けてくれるから。)
ルビアの言う通りだ。
ルビアだっていつまでも私につきっきりでは何かしたいこともできないだろうし私だって突然独りになるかもしれないのだから覚えておいて損はない。
(わかった。)
(ああっ!そんな寂しそうな顔をしないで!アルの相手が面倒とかではないんだ。むしろ教えることができて、嬉しいよ。アルももう我々の家族だからね。ただアルの力素は今後も増えてくだろうし、この森で一番力素が多い私でも結構全力で結界を張っているんだ。まだ限界ではないけど後どのくらいまで私が抑えていられるかわからないんだ。もう一回言うけどアルもこの森の家族だからね。)
私が寂しそうな顔を(そんなつもりは全然なかったけど)していたからか、とても慌てていた。
そうだったのか私からみてルビアは余裕そうだったけどそれは私を安心させる為だったのかな。
それならば一刻も早くルビアのためにも、この森のまだ見ぬ者達の為にも結界を張る方法を覚えよう。
もちろん力素を抑える練習も。
ところでアルってなんだろう?
(うん。ありがとう。でもアルって何?)
(えっ!?あっ、これはあだ名だよ。親しい相手や家族相手の名前を省略して呼ぶんだよ。・・嫌だったかな?)
今度はルビアがなんか寂しそうな感じになってしまった。
(全然。嬉しい。)
(よかったぁ〜。ではこれからアルって呼ぶね。)
(うん。)
よかった。
嬉しそうだ。
(では早速結界を覚えようか。まず結界にはいくつか種類があるけど今アルに必要なのは保有力素を結界の中から防ぐタイプの結界だね。注意点としてはその範囲を小さくすればするほど、その力素の濃度が濃くなることかな。)
色々と応用が効きそうな結界をこれまた学んで練習して夜の十二時くらいには張れるようになっていた。
(よしこれでアルだけでも結界を張れるようになったね。では今日もこれくらいで寝るとしようか。)
そう言うとルビアはまた昨日と同じような格好で寝る体勢になった。
ただ昨日と違うことがあった。
(一緒に寝るかい?)
そうなのだ、ルビアはやっぱり気づいていたみたいで、一緒に寝ようと言ってくれたのだ。
恥ずかしさがありながらも私は(うん。)と答えたのだった。
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翌朝起きると、どうやら今日はルビアが先に起きていたようで穏やかな顔が目に入った。
(おはよう、アル。よく眠れたかい?)
(おはよう。ルビア。)
どうやらルビアは寝心地が良かったかどうか心配しているようだ。
だが安心していい。
むしろ誇っていいぐらいのふわふわなのだから、寝心地は当然良いに決まってる。
(うん。ふわ・・違う。ルビア。とても良かった。)
ふわふわと考えていたせいで、ルビアと呼びかけようとしたのに間違えてふわふわと言おうとしてしまった。
恥ずかしい。
(はぁ〜良かったよ。・・では今日は初めてアルが出会った、広場のところにいた者たちにアルと会いに行ってもいいかな?そろそろ顔を見せないと、こっちに突撃してきそうな者達もいるからね。力法の続きはまた後ででいいかな?)
良かった。
どうやら気づかれていないらしい。
それでルビアはあの時見た様々な姿をした者達に会わせたいらしい。
(うん。いいよ。)
(良かった。・・これでオッケー。)
ルビアがオッケーと言った瞬間森のあちこちからいろんな音が聞こえてきた。
(ごめんね〜。みんなすごい待ってたから。・・では行こうか。)
(うん。)