ルビア
翌朝、木漏れ日とそよ風そしてふわふわ。
それらを感じながら目を覚ます。
するとふわふわした何かは大きくて青かった。
それが私の周りを囲うようにあった。
これは一体なんだと思って、そこでハッと思い出す。
昨日は起きてようと決心したが、ルビアのふわふわな体を見ていたら少しだけ寄りかかってふわふわを感じてみたいと思い、ルビアが起きないようそ〜っと近づいて寄りかかったら、凄く安心できてそのまま寝てしまったんだと。
一度ルビアが私が寝ている間に起きたのかわからないが、どうやら尻尾で包んでくれたようだった。
私は寝ている間に放出され続けていた力素を慌てて抑え、ルビアが起きないようそっとその場から抜け出して、昨日ルビアが寝た時点で私がいた位置に戻って何事もなかったように(多分バレてるだろうけど)起きてたふりをした。
(おはよう)
しばらくしてルビアが起きてきた。
(ちゃんと抑えてるね。偉い偉い。)
(じゃあ今日から力法について学ぼうか。力法は力素を素にして色んなことができる力だよ。これには属性があって水、火、木、土、風、雷、光、影、無、癒の十属性を基本としているんだ。また、そこから派生していった属性もあるんだけど、それはまたの機会で学ぼう。今回は貴方も話せるようにする為、無属性の"念話"を学ぼう。)
どうやら力法には色々な種類があるようだ。
(我々は人族と違ってこの口を使って話すことができない。そこで役立つのが今も使っているこの念話だ。これならば人族と同じように思ったこと、考えたことを話せるようになる。ただし念話はその時出している力素の広がっている範囲に応じて、何体に声が届くかが決まるから、今の貴方の状態だと私だけだけじゃなく他の者達にも届いてしまう。だから一回結界を張り直すね。)
ルビアが結界を張り直したことによって私の力素がルビアと私の周辺で抑えられた。
(これで他の者達には聞こえないようになったから念和の習得を始めようか。)
これで私も話せるようになるのかとワクワクする。
(無属性は属性に変化させず、純粋な力素だけで扱う力法だ。力法は意思とイメージが必要だがこの属性では特にイメージが必要となってくる。念話のイメージは相手へ伝えたいこの思い、考えを見えない文字として伝える感じだ。さあやってみて。)
言われた通りのイメージでやってみるが、一文字目の言葉しか出ない。
言葉を連続で出すというイメージがあまりできないのだ。
ちなみに何を言おうとしているかというと『ルビア』だ。
どうすればいいかと考え、一つ方法を思いつきルビアの家へと入る。
(おやどうしたんだい?)
と言ってルビアも家に入る。
そして私はあるものを尻尾で示す。
(ん?それは本じゃないか。それがどうしたんだい?)
そう私が思いついた方法とは本だった。
正確には本に書いてある文字を見れば連続で言葉を出すというイメージが、できるのではないかと考えたのだ。
その考えを伝えようとまたジェスチャーで頑張った。
するとなんとか伝わったのか、私より高い位置にある本を目の前に置いてくれた。
(しばらく休憩したいのかな?・・・え?違う?)
違った。
どうやらルビアには私が力法とか念話とか疲れちゃって休憩に本を読みたいと思ったようだ。
早く話せるようになりたいのだからそれはないということできちんと訂正はしておく。
本を読んで文字を連続させるというイメージを本の文字の通りに練習して慣れさせる。
そして夕方ごろカタコトだがやっと話せるようになった。
ちょうどどこかへ行っていたルビアが帰ってきた。
(ルビア。)
ルビアは一瞬驚いた顔をしたがすぐに穏やかな微笑みを浮かべた。
(ふふ・・・貴方が最初『ル、ル』と言っていたのは私の名前だったのかい?)
(うん。)
(そうか・・・それは嬉しいね。)
そう言ってルビアはふわふわの尻尾で頭を優しく撫でてくれた。
(では話せるようになったことだし貴方の名前を決めようか。いつまでも貴方と呼ぶわけにもいかないしね。どんな名前がいいかな?)
どんな名前がいいかと考え始めた瞬間すっと思いついた名前。
(アルリーン。)
(アルリーン・・いい名前だね。アルリーンこれから宜しく。)