3. 運動音痴の試練
あれ以来、躓くと八割の確率で櫻木くんに遭遇するような気がする。
しかも必ず転ぶのを免れる、もちろん彼のおかげで。
偶然?
それとも…。
それとも、なんだっていうの?故意に私を助けてくれる理由も必要性もないはずなのに。
「ではこれから、体育祭の個人出場種目を決めていきたいと思います」
夏休みが明けて間もないその日、学級委員長の一声は、私にとってはまさに悪夢の始まり。
体育祭など、希望者だけで開催すればいいのに。出場すれば毎回必ず失笑を買う私は、この行事に青春のきらめきなんて感じたことなどなかった。
いずれにしても強制参加なら、せめて私にも務められるほど簡単で、周りに迷惑をかけないものを選ばなくちゃ!
だけど…。
そんな種目ってあるのかなあ?
なんてじっくり吟味していたら、あれよあれよという間に残りの種目はただひとつになってしまっていた。
「う、そ…」
比喩でも誇張でもなく、真実顔から冷や汗が伝う。
『私にも務められるほど簡単で、周りに迷惑をかけないもの』
この競技ほど、私のささやかな願いを裏切るものも他にない。
唯一残された選択肢は。
二人三脚。