第九十五話『言葉の精霊。』
本日の最終投稿分です!
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「こうも、次から次へと仕掛けられたんじゃ、
目紛るしうて仕方無いのう。
お嬢ちゃん、その玩具はどっから出したんじゃ?」
「“違うよ……”!!!」
───キィィィイイイイイイイイインッッ!!!!
スイが言葉を発した瞬間、
鼓膜を突き破りそうな、嫌な高音が発生し、
その場の全ての者が思わず耳を塞いだ。
「う……うるさッッッ!!!!?」
「ちょ! マジうるせーし!?
スイ! なんなんソレ!? 知らんけど!」
「“あー……、あー……”!!!!」
「ス……、スイ!? 凄い音なんですが!?
私達の声聴こえてますか!?」
───ピィィイイイイイーーーッッッ!!!!!
キィィィイイイイイイイイイーーーッッッッ!!!!!
「スイちゃん。喧しうてやれんの。
もうちょいどうにかならんのかの?」
スイは首を傾げながら、
拡声器のボリュームのツマミを、
左右にくるくると回して動かしていた。
「“おかしいな……。あれ?何でだろ……”」
スイが、そう言っている間にも、
凄まじい音が鳴り止む事は無かった。
「『スイ。逆だ。
そっちの目盛りでは無いのだ』」
突如として、聴き覚えの無い男の声が聴こえた。
「“あ……。ほんとだ”」
スイが、声の言う通りにツマミを動かすと、
ようやく音が静まり、
耳を塞いでいた他の面々は安堵の表情を浮かべた。
「“調整が難しいんだ”」
「『僕は、
幾度と無く説明しているのだが。
それを、
君が、ちゃんと聞いて無くて、
憶えていないのだと思う』」
「“それは認めるけど。わざわざ、
こんな覚え難い造りにする必要があったのかな?”」
何処から聴こえて来るのかも判らない、
男の声と、スイは世間話でもする様子で、
淡々と会話をしていた。
「お嬢ちゃん。
そりゃ一体、何かのう?
喋る魔法具?意思を持っとるんか?」
「“違うよ”」
「違うんじゃ」
「おい! おい!
猫娘!! スイの持ってる、アレ、何だヨ!?」
「知らねーーー。マジで何だアレ」
「ユンタさんでも知らないんですか?」
「うん。知らない。けど……、
とりあえず、めっちゃ喋ってるね……」
「喋ってますね……」
「でも違うってスイちゃん言ってるッスよ?
あの道具が喋ってる訳じゃないんスかね?」
「えーーー……、
じゃーーこの声何なのーー……、
おばちゃん怖いーーー……」
「『ユンタ』」
「えーーー……、名前呼ばれたんですけどーーー……」
「『僕は、
君の事を、ずっと前から知っているのだ。
シャオの事も、ロロの事も』」
「じ……、自分の事も、ご存知なんスか?
あなたは一体、誰なんスか?」
「もしかして、精霊の方でしょうか?」
「『そうなのだ。
僕は、
スイと契約を交わした精霊だ』」
◆◆
「精霊?
こげ、
ハッキリと喋る精霊がおるもんなんか?」
ロウウェンが驚いた様子でスイに訊いた。
「え?知らない?」
「知らん」
「そうなんだ。普通に認知されてるものだと思ってた」
「『知らないだろうと思うのだ。
僕と契約したのは、
スイの他に、そう何人もいなかった』」
「やれんの。
お嬢ちゃんの妙な魔法の正体も、
この精霊じゃな。
これが、よいよ奥の手かのう」
「そうだよ。
ところが、君には効かなかったけどね」
「その手にしとる道具が、魔力を増幅させるんかのう?
先刻よりも、威力が上がっとるかも知れん」
「うん。
これは、そういう用途をするものだ」
「ちいと、増幅したくらいじゃ、
ワシの身体はどうにも出来んけの」
「解ってる。だから、
わたしはロロに呪歌を歌ってもらったんだ」
「今更、魔力を回復したところで、
効かんかったら意味が無いじゃろ?」
「やっぱり聴こえてなかったんだね」
「ん?」
「わたしは精霊使いだから、風の精霊を使って、
先刻から皆にお願い事を言って回ってたんだ。
ヤエファの幻術も、
シャオとレイフォンがそれに乗じる事も、
少しだけ、演技をしてもらう様に」
「何を言っとるんかのう」
「ロロにも伝えた。
わたしじゃなくて、リクに呪歌を歌ってくれって」
「リク?」
「君は、やっぱり強すぎたんだ。
でも、
魔力を感知する事は苦手な様だ。
感知する事が苦手でも、
攻撃されたところで、君には問題が無いからだ。
だけど、
無敵に近い防御が、自動で行われるので、
ほとんどノーガードで攻撃を受けてしまう癖がある。
つまり、
君は隙だらけで、防御が下手と云う事だね」
「それが解ったところで」
「それが判れば充分さ。
君のザックリとした感知じゃ、
彼の微量な魔力には気づけなかった」
「もう一人おったんか。
ワシが気づかん様な、弱いのが出て来て、
どうなると云うんかのう」
「ヤエファ」
「ん?」
「ヤエファの言う通りだね、
真打ちは遅れて登場するんだ」
「そうじゃの」
ヤエファはニヤリと笑った。
「リク。君の出番だ。」
「…………」
一瞬、間が空いた。
「あれ? おーい」
「…………」
「何をしてるのさ?
折角、カッコよく登場出来る様にしてあげたのに」
「もうッッ……! バカッッ……!!
ロウウェン、
俺がどうこう出来る訳無いだろがーーー!?」
「ちょっとリク君! 何言ってんスか!?
折角回復したのに!!」
「俺が弱いの知ってるだろーー!?」
「リクさん! 往生際が悪いんですけど!!」
「死にたかねーんだよ!?」
「にゃはは」
「笑ってないで助けてよ!!?」
ロウウェンは拍子抜けして、
その様子を眺めていた。
「やれんの。どんなんが出てくるかと思うたら、
本当にいなげな餓鬼が出てきたのう」
「へ……、へへへ……」
リクは愛想笑いを浮かべて、ロウウェンを見上げた。
(ゴミでも見るみたいな眼で見てらっしゃる……)
「お嬢ちゃん。こりゃ、どういう事かのう?
ワシゃ、女と子供は殺しとう無いけ、
この坊主をさっさと引っ込めてくれんか?」
「引っ込める?どうして?」
「言うたろう。殺しとう無いからじゃ」
「わたしは、君に、
リクが殺せるとは思えないけど」
ロウウェンの身体が炎に包まれ、
片方の腕が撃鉄代わりに引かれる様に構えを取った。
───『支配者の焔槌!!』
───『技能賃貸を発動します』
リクは恐怖の余り、眼を閉じたまま、
開ける事が出来ずにいた。
ロウウェンの炎にあっという間に焼かれ、
自分が死んだ事に、
気づいてないのかと考えてしまう程に、
リクにとっては長く感じられる間だった。
しかし。
それは、本当に刹那の一時だった。
ロウウェンの最大火力を誇る攻撃は、
その炎の威力を発揮する事は無かった。
空振りをした様に、リクの眼前に振り翳されただけで。
(炎が……出よらん……!?)
───『スキルの獲得に失敗しました』
───『補助スキル“発動妨害”を修得しました』
ヤエファの考察通り、
リクの能力には、
発動時の成功判定の是非を問わずに、
対象の能力の発動を無条件に封じると云う、
機能異常を持ち合わせていた。
幾度かのスキル発動に因る、
習熟判定が行われ、
そのバグを派生させた補助スキルとして、
彼に刻み込まれる様に、一つの能力となった。
「『僕は、
気が狂いそうな程の長い時間を生きてきたが、
こんな小僧の手を借りる事になったのは、
初めてなのだ。大変、遺憾だ』」
『“マオライ。
攻撃が当たらなくて、
本当はイライラしていたんでしょ”』
スイはそう言うと、大きく息を吸い込み、
拡声器のマイクに口を当てた。
精霊の声が、スイの声と、
重なり合う様にして、
その発する言葉に、確かな意味を宿し、
意味を宿した言葉は、
込められた魔力と共に放たれていった。
───『“穿て”!!!!!!!!』
全てが刹那の合間に、起こり、そして終わっていた。
ロウウェンの防御スキルは発動せず、
変化をする事に慣れていた彼の肉体は、
言葉の精霊魔法に、
穿たれ、その胸に大きな穴を開けていた。
◆◆◆
今日もありがとうございましたー!
明日も3話投稿しようと思いますが、
投稿時間をまとめて、夜に予定しています!




