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リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第三章 『指切り姫と西方と忘れられた古い唄』
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第九十三話『虚勢は通じないとわかっている。』

本日投稿分の、

1話目になります!



スイの自信たっぷりの表情が、

妙に引っ掛かった。


明らかに優勢なのはロウウェンで、

回復役のロロが疲弊し、

ロウウェンに対して、

殆どダメージを与えられないスイ達に、

勝ち目などは、どう考えても無い筈だった。


「お嬢ちゃん。

ハッタリならワシにゃ意味が無いけの?

完全無欠じゃ無いのは確かじゃが、

お嬢ちゃん()じゃ、

悪いが、ワシに攻撃を当てる事すら叶わん」


ロウウェンは、そう言った。

そう言いながら、何処からともなく吹く、

首筋を震わす様な、

冷たい風に当てられた気分がしていた。


「一体、どうやってワシを殺してくれるんかのう?」


絶望的に聞こえる、ロウウェンの言葉だったが、

スイが、笑みを浮かべた表情を崩す事は無かった。


(恐怖でおかしく(狂った)なったんや、

虚勢じゃ無さそうじゃのう)


「問題はそこなんだ」


スイは口を開いた。


()()()()()()()()()()


「そうじゃの。ワシのスキルは防御に関しちゃ、

ほぼ自動で発動しよるからのう」


「君のスキルの一番の強みは、

その凄まじい火力よりも、

()()()()に肉体を変化させてしまう事だと思う。

炎を殴ったり、斬ったりする事は難しい。

水や氷で攻撃したとしても、

炎の温度を自在に操れる君に、

効果的なダメージを与える事は出来ないんだろうね」


「その通りじゃ」


「君の身体に、傷が少ないのはその為だ。

そして残念な事に、わたし達の中に、

君の実体を捉えて、

攻撃する手段を持っているメンバーは居ない」


「そうじゃの。

ワシゃ、炎を殴れる奴にも斬れる奴にも、

()うた事は有るが、

お嬢ちゃん達の中には居らんかったのう」


「そうなんだよね。

スキルを使う戦闘で、相性って大事だね」


「悪かったのう」


「君が強かったってだけさ。

天恵者(チート)と云う存在の、怪物じみた強さだ」


「与えられたもんじゃ。ワシが偉い訳じゃないけの」


「驕らないところも、君の強さの秘訣だね」


「えらい褒めてくれるのう。

こんな身体じゃ無かったら、

こげ(こんな)別嬪に褒められて、

助平心が出て油断するとこなんじゃがのう」


「ほんとの事だから」


「欲を言えば、

もう少しだけ乳が大きけりゃ良かったんじゃが」


「あのね、わたしも気にしてない訳じゃないんだよ?」


「お嬢ちゃん、年齢(とし)は幾つかのう?

まだ伸び代は有ると思うんじゃが」


「教えない」


「こりゃ大人になったら化けるのう」


「お嬢ちゃんお嬢ちゃんと呼んでいるけど、

まさか本当に子供だと思ってたの?」


「違うんかのう?」


「まあ、いいや。(ロウウェン)からしたら、

幾つだって、大して変わり無いだろうから」


「そうじゃのう。

お嬢ちゃんの、あの妙な魔法に、

まだ奥の手があるんかのう?

ワシゃ、長い事生きたが、初めてお目にかかった」


「効かなかったじゃないか?」


「どうやって勝つつもりだったんじゃ?

アレくらいしか、他に手が無かろう?」


「ふっふっふ。

ロロ。魔力と体力を回復出来る呪歌(バードソング)を、

最後に、もう一度だけ歌えるかな?

一回だけでも撃てれば、それで充分だから」


「今更、回復したところで、どうにもならんじゃろう?

まさか、策無しで話を引っ張っとった訳じゃあるまい?」


「そんな訳ないじゃないか。

わたしは理屈っぽいから、

意味の無い事があんまり得意じゃない」


「スイちゃん! ほ……、本当に良いんスか!?」


「うん。無理させてごめん。

だけど、これで勝てる」


「わかったッス!!」


ロロは、得体の知れないスイの思惑を察知して、

理解をしている様子だった。

一体何を企んでいるのか、

ロウウェンは未だ読み解く事が出来ていなかった。


そして、ロウウェンの身体は反射的に、

ロロを攻撃しようと、炎を産み出していた。


その炎を阻む様に、チャガマの結界が張られ、

結界を避け、炎の軌道を修正しようとしたロウウェンに、

一斉攻撃が仕掛けられた。


「命ずる。大地よ 汝、彼の者を砕きし 我が牙となれ」


───『地走りの狼《ソイルワークセッションズ》!』


メイの魔法で、

地中から造り出された巨大な柱の様な岩石の塊が、

その先端を尖らせて、

ロウウェンの身体を突き破ろうと放たれた。


ロウウェンが咄嗟に距離を取ろうと、動いた瞬間、

その先には、身体強化のスキルで高速を移動をした、

シャオとレイフォンが既に待ち構えていた。


「メイー! そのままブチ抜くつもりで撃てヨ!」


「わかってるし! 知らんけど!」


両方から、間に挟まれる形になったロウウェンの、

肉体がスキルの防衛反応に因り、

炎に形を変えようとしていた。


「確かに炎は殴れませんが、炎に変わる前に、

殴ってしまえばどうでしょうか?」


シャオの身体強化は全身に張り巡らされ、

その眼は確かにロウウェンの変化の動きを捉え、

常軌を逸脱した速度で、

その拳が、

今、

正に炎へと変わる瞬間のロウウェンへと叩きつけられた。


シャオの咆哮と共に。


───『穿ちの戰風(リヒトワルキューレ)!!』


◆◆

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