第九十一話『鬼火と呼ばれた男。』
本日投稿分の、
2話目になります!!
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「ハァァァァァァァァァッッッッ!!!!」
獅子の如く咆哮し、スキルで強化されたシャオの一撃が、
地面を砕き、発生した衝撃波で、
半径数メートルに及びそうなクレーターを造り出した。
「なんちう女じゃ。
あげ華奢な腕をしとるのに。
……乳もデカい。
一発でも、まともに貰うたらマズいの」
そう言いながらも、
鬼神の様なシャオの凄まじい気迫に、臆する事無く、
先程からロウウェンは攻撃を躱し続けていた。
───『蒼焔の蓮華』
ロウウェンが放つ蒼白い波状の火炎が、
シャオを飲み込むように襲いかかろうとし、
火炎が触れそうになるのを、
地中が盛り上がって出現した土壁が防いだ。
直ぐに亀裂が入り、
土壁がボロボロと崩れ去ろうとする前に、
シャオは火炎の届く範囲から素早く離れた。
火炎は尚も、シャオに絡み付こうと追撃してきたが、
シャオの周囲には結界魔法による防壁が張られ、
火炎はそれに弾かれた。
「ユンタさん、メイさん、ありがとうございます!」
「てか、マジやべーし!
あたしの魔法じゃ防ぎきれねーし!
知らんけど!」
「凄まじいですね、鬼火のロウウェン」
「てんめーーー!!
女子相手に本気出してんじゃねーよ!!」
「ワシに言われてものう。
ガコゼは未だ見つけられんのか?」
「魔力をかなり抑えてぇ、逃げてるみたいぃ。
それにぃ、ロウウェンのせいでぇ、
感知に集中出来ないぃ。
もうちょっと攻撃抑えれないのぉ?」
「やれんの。お前らを狙う様に、
命令されとるからの。
早うせんと、逃げられるけの」
「そー言うなら、もーーちょっと協力しろよ!!」
「殭尸じゃけ、仕方なかろう?
いらんな事は言われん様にしとりやがるの。
ワシに仕込んどる魔力を辿れんのか?」
「……ソレを今やってるんだけど。
うるさいから黙ってて……」
「そげか。そりゃ悪かったのう。
ほいでも、急がにゃ厄介なんが出るぞ」
そう言いながら、ロウウェンの身体は、
陽炎の様に揺らいで歪んだ後、
その身は誰の視界からも映らなくなり、
ソッと姿を消していった。
「また消えるヤツかよーー! お前ソレやめろよーー!」
「また魔力消した……。
さっきの雑魚殭尸を吹き飛ばした攻撃の予備動作……」
「“悪いのう。巧いこと躱してくれの”」
「バカーーん! ざけんな!!」
そして、また周囲を牢獄の様に火炎が取り囲み、
誰一人逃さない勢いを持って激しい音を立てた。
───『ラクーンロード!!』
チャガマの防御結界が、火炎と一向の間に割り込む様にした張られ、炎は散り散りに弾け飛ばされていった。
「チャガマが居ったら、こんくらいの火力じゃ、どうにもならんのう」
ロウウェンはそう言って再び姿を表した。
ロウウェンの身体が、陽炎の様な状態から、
実体を持ったものに戻った瞬間、
疾風の様な迅さで、
ヤエファがロウウェンの頭を蹴り飛ばし、
続けざまに、
トナカイの巨大な蹄が、
ロウウェンの頭上に振り落とされ、
大地から激しい土煙が上がった。
「無駄口が多いな、ロウウェン。
昔も言ったが、俺は時間を無駄にするのが嫌いだ」
そう言ったトナカイの顔面を、
激しく舞い上がる砂塵の中から飛び出して来た、
ロウウェンが勢いをつけて、殴り飛ばした。
「やれんの。死体なんじゃけ、
もうちょっとは脆くならんもんかの」
舌打ちをした瞬間、
ヤエファはロウウェンの放った炎により包まれ、
火だるまとなった。
「せっかちじゃのう。
もう死んどるんじゃ。無駄も何も無いと思うがのう」
「トナちゃーーーん!!?」
「♪遥か遠い昔の出来事 傷つき疲れた一人の騎士が 辿り着いたは妖精の都 美しい花の様な妖精たちに囲まれ 騎士は深い愛と癒しを得たのだとさ」
───『蜜とミルクの花唄』
トナカイがその巨体を地面に突っ伏そうとした瞬間、
ロロの呪歌が、
優しい歌声と共に響き渡り、
仲間達の傷を癒していった。
「グラスランナーの姉ちゃんも、
先刻から中々やるのう。
片っ端から回復してくけ、削ってもキリが無いのう」
「ゼェ……。ゼェ……。
ぞりゃどうもッズ……」
「二重に歌が聴こえる時があるけ、
相当無茶な事をしよるのう。
背は小まいのに、大したもんじゃ。
おまけに、
別嬪じゃし、乳もデカい」
「イケメンに褒められちゃったッスねー……!」
「ほじゃけど、
長うは保たんのう」
ロウウェンの言う通り、
ロロは『二枚舌』での、
呪歌を立て続けに歌っていた。
激しく咳き込んでしまいそうになるのを、
堪えながら、ロロは再びリュートを爪弾き始めた。
「やれんのう。乳に負けず劣らず、
根性も凄まじいのう」
ロウウェンは再び、炎を造り出し、
その身を業火に包む様にして、
ロロに狙いを定めて構えを取った。
───『消し飛べ!』
スイの声が鋭く発せられた。
───パァァァァァァンッッ!!!
ロウウェンの上半身が、
音を立てて、散り散りに消し飛んだ様に見えたが、
誰一人として、戦闘態勢を解く事は無かった。
消し飛んだロウウェンの身体は火の粉になり、
吸い寄せられる様に、元の形へと戻っていき、
そこには、
先程と何も変わらない様子のロウウェンがいたのだ。
「誰も皆、別嬪で粒揃いじゃが、
一番やれんのは、
お嬢ちゃんじゃのう」
「……」
先程から数回放たれた、
スイの精霊魔法への対処を、
ロウウェンは、戦闘により染み着いた習慣で、
どうしたものかと、考え続けていた。
(さっきから詠唱をしよらん。
吹き飛ばしたり、切り刻んだり、
それ自体は特別珍しいもんじゃないがの。
防御がいっそも出来ん。
初めて見る術式じゃ。
何者じゃ、この娘)
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