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リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第三章 『指切り姫と西方と忘れられた古い唄』
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第九十話『ロウウェンは気がかり。』

本日投稿の

1話目になります!



「おーい」


スイは魔獣(まるちゃん)の背から、

ユンタ達に声をかけた。

イファル国内の最北端に近い、

広々とした平原で、

スイ達の他の五人は立ち尽くしていた。


「見たところ何もねーんだヨ。

ラクシェー、ハツー、ほんとに此処で合ってんのかヨ」


「えぇぇ、間違い無いよぉ?

確かにぃ、

来る途中から何にもないなぁとはぁ、思ってたけどぉ」


「……さっきの凄い魔力の反応が薄い。

逃げられたのかな……?」


「マジかよーー」


虚仮威(こけおど)しで、

わざわざロウ兄を出さんじゃろ。

何か企んどるんか、

皆、気をつけた方が()えの」


その時だった。

だだっ広い平原の、地中から、

無数の腕が地面を突き破って飛び出し、

這い出る様にして、

大量の殭尸(キョンシー)が一向に襲いかかろうと、

唸り声を上げながら出現した。


「出しよったわ。

シャオちゃん、ここらは昔、戦場だったかの?」


「確かそうです! 

埋葬された兵士達を操ってるのでしょうか!?」


シャオはヤエファに返事をしながら、

(くび)を目掛けて飛び掛かろうとしてきた、

殭尸の頭を蹴りで打ち砕いた。


「おそらくそうじゃの。

こげ(こんなに)いっぺんに出してきよってから、

目眩ましのつもりかの」


「殭尸より、だいぶ腐ってるし!? 

てかほぼ骨だし!! 知らんけど!」


「ガコゼーーーッッ!!

セコい事してんじゃねーーー!!

つーか、くっせーーー!!」


取り囲もうと群がって来た殭尸を、

ユンタが武器で次々打ちのめすと、

辺りには酷い腐敗臭が漂った。


「鼻が曲がりそうッスー!!」


倒しても倒しても、

湧いて出るのか、アンデッド系の魔物の為なのか、

殭尸の大軍は一向に減る様子が無かった。


「参ったな。消耗する事は無いけど、

ガコゼが時間を稼ごうとしているなら、

相手の思う壺だね」


「ハツ。まだロウ兄の魔力は探知出来るかの?

微量でも残っとらんか?」


「……完全には消えて無い。

でも場所が特定出来なくなった……」


「ユン姉! 急いでトナちゃん出してくれんか!」



───『牢獄の蛍火(セパルトゥラ)


平原の上、

一向と殭尸の大軍を一斉に囲む様にして、

炎が噴出する様に舞い上がり、

ドーム状に火の手が宙に向かって伸びると、

腐乱した一部の殭尸の、残留したガスに引火し、

様々な破裂音を立てて、

次々に爆発が巻き起こった。


爆発が収まると、

意思を持った様にして、炎は揺らいだ後に消え去り、

焼き払われた平原には、

真っ黒に焼け焦げた無惨な殭尸達と、

ユンタの召喚したクラウンレインディアの姿があった。


やれんの(いけない)

ユンタも()るんかや。

こりゃ相当やる気出さんといたしい(厳しい)のう」


男の声がした。

肌の色の悪さから、普通の人間では無いことは確かで。

ガコゼの操る殭尸である事も明白だったが、

意思を持って、ハッキリとした声で喋っている。


その殭尸の姿を見て、ユンタは舌打ちをした。


「マジでロウウェンじゃーーーん……」


「ユンタ。久しいのう。

お前は、いっそも(ちょっとも)見た目変わらんのう」 


「あんたもじゃん」


「何せ死んどるけの。

しかしお前、いつまでも餓鬼みたいな格好してから」


「ウチの勝手じゃーーん。つーか化けて出てきて、

いきなり説教?」


「当たり前じゃ。死人に心配かけとったらいけんのう」


「うーーーわ、マジロウウェンじゃん。

あんた自分が死んでから、

どんだけ経ったと思ってんだよ?

昨日別れたみたいに普通に出てくんじゃねーよ」


「相変わらず口が悪いのう。

それに乳も、いっそ大きうならんのう」


「てめーー、化けて出れねーよーにしたろか!!?」


◆◆


「あの人が鬼火のロウウェン」


痩身長躯、

それにヤエファと同じ赤い瞳をしており、

殭尸となった今でも、生前の姿と殆ど変わらずにいる、

非常に整った顔つきの黒髪の若い亜人の男だった。


ロウウェンは、

太い尾を、ゆらゆらとさせながら、

ユンタとの会話を楽しみ、時折笑顔を浮かべながら、

懐かしんでいる様子だった。


「めっちゃイケメンッスね……!」


「……ロウウェンが死んだのって、百年くらい前だよね?

ちょっとも腐ってたりしてない……」


「ひょっとしたら、

死んだ直後に殭尸にされとったんかも知れんの。

殭尸にしてしまえば、腐るんも遅うなるけ」


ヤエファは舌打ちをした。


「百年もロウ兄はガコゼに、こき使われとったんじゃ。

あの外道だけは、よいよ許せんの」


「ヤエファ。

久しいのう。お前は……、えらい別嬪になったのう。

そげ(そんなに)色っぽい格好をしてから、

兄貴としちゃ、複雑じゃ。

おかしげな男が寄って来とりゃせんか?」


「ロウ兄。

わっちは、どっちかと云えば女が好きじゃけ」


「わはは。

そうじゃったか。それなら()えか。

悪いんが寄ってきたら、ワシが何とかしちゃるけの」


「適当な事言うちゃいけんの。

ロウ兄はもう、この世におらんのじゃからの。

姿形も中身もロウ兄じゃが、

ガコゼの造り出した()()()()じゃ。

よいよ、せんない(切ない)事をしよる」


アイツ(ガコゼ)は、

よいよ、つまらん(どうしようもない)のう。

情け無いが、ワシゃ、どうにもしちゃれんけ、

お前らで、張り倒してやってくれのう?」


「ロウ兄、ほんとに情け無いの」


「ああ」


ほじゃけど(だけど)、安心して大丈夫じゃ。

ロウ兄が、もう起きんで()え様に、

わっちが楽にしちゃるけ」


「頼んだけの。ヤエファ」


◆◆◆

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