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リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第三章 『指切り姫と西方と忘れられた古い唄』
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第八十九話『完全無欠では無いけれども。』

本日投稿の最終話です!





天恵者(チート)


「コトハさん達とおんなじ、

滅茶苦茶に強いって云う人達なんスか!」


「……聞いてないんだけど。

能力にも依るけど、

その場しのぎのパーティーじゃ、勝ち目無いじゃん……」


「ロウウェンはどんな能力なの?」


「炎じゃ」


「絵本と同じだ」


「そうじゃ。ただ、ロウ兄が操るんは、

火炎魔法の類いじゃ無いけ、詠唱が要らん。

身に宿したスキルで、

身体から発火する能力と、

その温度を魔力で操作し、

極めて低温の炎から、天体に近い超高温の炎まで、

自由自在じゃ」


「な……! なんスかそれ!? 

めっちゃ怖いんスけど!?」


「チートじゃけの。

三要素を必要とせんし、炎に関する耐性、

炎に魔力を通して魔法効果の付与、あと……、

何があったかの。

とにかく、炎の化身の様なもんじゃ」


「そ……、そんな恐ろしい方を相手に勝てるんスか……?」


「気休めにゃならんかもじゃが、

今のは生前の話で、もう故人じゃ。

現在のロウ兄は、

ガコゼの操る殭尸(キョンシー)じゃからの。

幾らチートと云うても、

多少は半減しとる筈じゃ」


「ヤエファの見立てではぁ、どのくらいなのぉ?」


「ま。八割くらいかの」


「いや、未だ全然強そうなんスけど……!」


そげ(そんなに)怖がらんでも大丈夫じゃ」


「そうだよロロ。

そんなに強いロウウェンとは、

無理に戦わなくていいんだよ。

わたし達の狙いはガコゼなんだから」


「その通りじゃ」


「ぐ……、具体的にどうするんスか?」


「そうじゃの。とにかくロウ兄は、

猛攻でブッ放し続けてくるじゃろから、

逃げて逃げて逃げ回る」


「何だか以外と消極的ッスね……」


「まともにやり合いたいかの?

それにガコゼは殭尸を操っとる内は大して動けん。

ロウ兄が暴れとる間、

奴は弱点を丸出しにしとると云う事じゃの」


「な……、なるほど!」


「……何か信用出来ない。

本当にそんなので大丈夫なのかな……?」


「どうじゃろの?

わっちに言えるんは、チートと云うても、

完全無欠じゃないと云う事じゃ。

属性の相性も無視出来る訳じゃないしの。

種族の違いは在れど、

スキルを操っとるのは生き物じゃ」


「おお……! ヤエファさん……、かっこいいッス!」


「ま。

(ことわり)みたいなもんを、

超越しとる(もん)が、

全くおらん訳じゃ無いとは思うがの。

ロウ兄はそれにゃ当てはまらん。

倒せん相手じゃ無い」


「コトハさんはどうだったの?」


スイは風で乱れる髪を、

手で抑えながらヤエファに聞いた。


「超越しとる側じゃの」


「そうだったんだ」


「スイちゃんは知らんかったかの?」


「うん。詳しくは知らない」


「魔法はコトハに教わったんかの?」


「ううん。習ってない」


あげ(あんなに)強かったが、

スイに伝授しとる訳じゃ無いんじゃの。

らしいと云えば、コトハらしいの」


「そうなの? ヤエファが会った時のコトハさんは、

どんな感じだった?」


「顔が良かった」


「それ以外で」


「未だ幼い子供にしか見えんかったがの、

何処か達観しよって、冷静じゃったの。

十五になったばかりと言いよったけど、

もう自分の役目みたいなもんを、

きっちりと把握しとったの」


「へえ」


「ところがわっちにゃ、小娘が背伸びをしとる、

その姿がいじらしくての。顔が好みじゃった事もあって、

即座に惚れてしもうたけ」


「ふーん……」


「それで、

一遍で()えからデートをしてくれ、

なんなら嫁になってくれと、

なりふり構わずに懇願し狂ったんじゃけど、

娘が待っとる言うて、帰ってしもうて、

叶わんかった。

その娘が、スイちゃんじゃ」


「へー……。

何て言って、反応したら良いのかわからない」


「わっちは思い出したら疼いてしまう」


「やめてよ」


「さっさとガコゼを締め上げて吐かせて、

もう一度、コトハに逢いとうなってきたの。

今度こそ口説き倒して、嫁にせんといけん」


「わたしの居ないところで(口説い)てね」


「……話が脱線してるよ」


「何じゃ。ハツ?妬いとるんかの?」


「……違うよ。そろそろ着くんじゃない……?

戦闘が始まったら、しっかりしてね……?」


ハツの言う通り、

既に都から随分離れた場所に来ていた。

ハツとラクシェの探知は、

ガコゼの居場所を正確に捉えており、

もはや目前に迫っていた。


そして、ガコゼの傍らから放たれる、

凄まじい魔力も、直ぐ様に探知をしていた。


「……あんなのと本当に戦うの?」 


ハツが不安そうにヤエファに訊いた。


「侮ったらいけんの。

曲がりなりにも、鬼火のロウウェン相手じゃ、

出し惜しみ無しで、逃げ回ろうかの」


「まるちゃん、ありがとう。

そろそろ降ろして大丈夫だよ」


「ユンタのいる所まで連れてくぜ。

ロウウェンは怖いから、

俺もめっちゃビビッてるけど、心配はいらないぜ」


「めっちゃ健気ッス!」 


「よし、わたしも頑張らないといけないね」


スイは詠唱を始め、精霊に呼び掛けた。

精霊は、スイにしか聴こえない声で呼び掛けに応え、

少し言葉を交わした。


(君はとても乱暴だけど、頼りにしてるよ)


それを聞いて、

精霊は再び、スイにしか聴こえない声で応えていた。


◆◆

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