第八十七話『ガコゼは独り言が多い。』
本日投稿の、
2話目になります!!
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女狐は自分を殺す事を諦めていない。
ガコゼはそう思うと、
逃げても、追いつかれ、
自分の行動を推測され、足跡を辿られ、
執拗につけ狙われる感覚に、気分を悪くしそうだった。
「しつこ過ぎるやろ。どう考えても」
ガコゼはそう言って、舌打ちをした。
(偶然か、なんかよう知らんけども、
わざわざワイを追っかけて此処に来たんか?
なんでやねん。
頭沸いとるんと違うか。
アイツの兄貴も、
イカれとったけども、
妹も同なじやで。
兄妹揃ってクレイジーが過ぎるわホンマ)
遺体を手に入れる為に、
金で買収していた葬儀屋から連絡が入り、
共謀して空の棺を埋葬していた事を、
亜人の女達が探っているのを知った。
(もうイファルには居られへん。
ネイジンまで帰らな、
何処までも追っかけて来よるからな)
ヤエファは一人では無いらしい。
自分は、亜人に忌み嫌われているので、
仲間を集めるのは、さぞかし楽だっただろう。
指切り姫なんぞと呼ばれていた時には、
独りぼっちだった癖に。
(あの脳筋女、
なんぼかは、頭を使う様になったらしいわ。
そやけど、本質的なもんは変わっとらん筈や。
絶対、楽には殺してくれへんで)
ガコゼは、そう考えると、
無い筈の指が痛む様な気がしていた。
左手の五指は、ヤエファに全て切り落とされたのに。
痛みを忌々しく思いながら、
ヤエファの狂暴な性格を知る自分が、
彼女の事を確かに恐れているのだと認識していた。
(きっしょ。
未だに夢に魘されてんねん。
とんだトラウマ植え付けよってからに)
そして、目の前に並べられた遺体を見て、
どうしたものかと思案を続けた。
(全部で七体。
運ぶにはしんどいし、
捨てるには惜しいわ)
悩んでいられる時間は決して長く無い。
(クソや。
一体なんぼしたと思うてんねん)
思えば、昔から自分は損をしてばかりだ。
(餓鬼の頃から、ずっとそうや。
ワイの好きなもん、やりたい事を、
周りの奴らは、いっつも否定しよった。
ワイの能力だってそうや。
皆いつかは死ぬんや。
死体や言うて気味悪がりよってからに。
せやけど、
ロウウェンだけは、面白がって重宝してくれたけどな。
死んでもうたけど。
アホや。
アホやアホやアホや。
生き方がアホ過ぎんねん。
もっと、上手にやらんかいな。
せやから、足元掬われんねん。
人間なんか、争う相手やない。
上手い事丸め込んで、
おいしいとこだけ貰っとけばええねん)
イファルの都を離れてから、
自分が今、
操っている殭尸との接続を切るつもりだった。
脱け殻を見つからない様な場所に捨てたかったし、
接続を切った瞬間に、魔法の効果領域を特定され易い。
自分の姿が相手に曝されてしまえば、
それは殆ど、ガコゼにとっての死を意味していた。
(相手の連れてる人数もわからへん。
ワイの能力を知っとるなら、探知役が居るやろうし、
追跡してくるんも、ヤエファ一人じゃあらへん。
亜人じゃ無い奴らも居るみたいやし、
急に国王から呼び出しも有った。
けったいなタイミングや。
イファル側にも追われとるんか。
あかんわ。
滅入ってくるわ。
コレ、詰んだんちゃう?)
ガコゼは焦っていた。
(教会に泣きついたら、まだ助かるやろか?
葬儀屋が全部ゲロってたら、あかんかも知らんな。
ネイジンに戻ったら、上手い事立ち回らなあかん。
教会にとって、
ワイの使鬼尸は、
まだ利用価値がある筈や。
ゴミ同然の死体から兵隊が造れるんや。
利用され尽くされるまでは、生きれる筈や)
大勢の人々に紛れ込み、
何とか城門まで辿り着こうと、
目立たずに行動を続けた。
殭尸に感覚は無いが、
周りに大勢の人の存在から来る鬱陶しさは、
焦っているガコゼの神経を逆撫でさせ、
苛立たしい気持ちにさせた。
それでも、
どうにかして耐えなければならない。
(あないに、上質の遺体を捨てたんや。
自棄を起こして、ええかげんな事してもうたら、
水の泡やないか)
ガコゼは、自分にそう言い聞かせた。
遠目に見えていた、北の城門が段々と近づいてきて、
ガコゼは本当に少しだけ安堵し、
生きた心地がしない、この都には、
二度と来るものかと心に誓った。
(生きた心地て。
殭尸やから、もう死んどんねん)
衛兵の姿が見えたので、
通行証を出そうと上衣を探ろうとした時、
ガコゼは呼吸が止まりそうになる程に、
身体中が張り詰めて、強張り、
誰かの視線が自分のすぐ傍らから、
自分を逃がさない様に捉えている事に気づいた。
(見つかってもうた)
探知魔法に、自分の居場所を完全に特定されてしまった。
もう足だけで逃げ切るのは不可能だ。
ガコゼは、指切り姫が自分を追跡して、
追って来る事を想像すると、
胃の中のものを全て吐き出してしまいそうになり、
自分を追い詰めてくる存在の全てを、
呪ってしまいたかった。
(せやけど)
ガコゼには切り札があった。
(ヤエファが相手なら、
まだワイは巧く立ち回れるんや。
あのブラコンにゃ、兄貴の姿をしたもんを、
どうする事も出来へんやろ。
出番やで。
『鬼火のロウウェン』
未だ、お前を、この世からは消させへん。
昔の誼やないか。
ワイを生かしてくれや)
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