第八十一話『稽古をする事について。』
1/26分、
最後の投稿です!
遅くなりました!
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「探しても見つからん筈じゃ」
ヤエファは苦々しく笑いながら、そう言った。
「……でも『殭尸』だとしたら、
術者の魔力が少しは残るんじゃない……?」
「そうじゃの。
ほいでも、
ハツはガコゼと会うた事が無いからの、
特定するんは厳しいじゃろ?」
「……それは、まあ、そうだけど……」
「殭尸?」
「死体を操って動かす魔法の事じゃ。
西方由来じゃけの、ここらじゃ珍しかろ」
「ふーん。
とにかく、ガコゼはそれで亡骸を操って、
自分は、危険の及ばない何処か遠くに居るって事だね」
「そうじゃ。しかし、
これでガコゼがクロな事は確定したの。
そこまでするのは警戒だけが理由じゃなかろ」
「そうだね。
後はガコゼが具体的に、この都で何をしているのかだね」
「やはり、墓を荒らしとると思うがの。
いかんせん、怪しい奴は墓地では見んかったけ」
「葬儀は?」
「そりゃ、何件かは、やっとったがの。
死体を運び出しとる様子も無かったけ」
「協力者がいるのかも知れないね。
亡骸を、より安全に手に入れる為の」
「葬儀屋か棺桶屋かの。空の棺を入れておけば、
掘り返す必要は無いけ」
「各業者を尋ねてみようか」
「そうじゃの。
それは、わっちらでやろうかの。
スイちゃん達は国王に謁見に行くじゃろからな」
「うん。お願いするよ。
それと、今更だけど、
皆の能力を教えてもらって良いかな?」
「ラクシェとハツは、魔力の感知を筆頭に、
補助と偵察役じゃ。
後の3人は戦闘じゃの。
レイフォンとミンシュは身体強化系のスキル、
メイは魔法系じゃ。
わっちも戦闘系じゃが、一番得意なんは誘惑じゃの。
スイちゃん達はどうかの?」
「わたしが精霊魔法。
ユンタが召喚術に、シャオが身体強化と格闘のスキル、
ロロは呪歌が使える。
それと、
リクが相手の能力を拝借するスキルレンタル」
「ほう。
リクちゃんは、
なかなか面白いもんを持っとったんじゃな?」
「まあ……。一応……、役には立ってないけど」
「そういう特殊系のスキルはの、
鍛え方次第で化けるけ。
未だ、余り場数も踏んどらんのじゃろ?
使い方さえ把握出来りゃ、
自分で思うとるより強くなれるけ」
「そうなのか?」
「リクちゃんが良けりゃ、
お姉さんが手取り足取り教えちゃろか?」
「な……、なんでエロい言い方すんだよ!?」
「照れんでも良かろ?
優しうにしちゃるけ」
「リク。良かったじゃない。
ヤエファが教えてくれるって」
「いや! からかってるだけだろ!」
「ふーん。それにしては、
随分嬉しそうだね?」
「は……、はぁ!?」
「ま。わたしには関係無いけど」
「何かね?
スイちゃん、妬いとるんかの?」
「妬く?わたしが?リクに?」
「そげ苛めたら可哀想じゃろ?」
「全然可哀想じゃない。
それにわたしは、こんなエッチな男は好みじゃない」
「ふ……、普通に健全だと思ってるけど!?」
「いやらしいね。チラチラとヤエファの胸ばかり見て。
君が巨乳好きだと云う事は周知の事実だ」
「皆に知られてんの!?」
「わたしが言いふらしてやるんだ」
「やめてね!?」
「あっはっはっ!!
影の薄い兄ちゃんじゃと思うとったが、
リクちゃんは面白いの。
スイちゃん、取りゃせんけ、安心して大丈夫じゃ」
「別にわたしは構わないよ」
「コトハと同じ、ニホンから来た人間じゃ。
きっと、何か深い縁で繋がっとると思うがの。
大事にしてやりんさい」
シャオが何か言いたげにするのを遮って、
ヤエファが続けた。
「この世界は、知っての通り物騒じゃからの。
リクちゃんも少し鍛えた方が良え。
明日、一段落着いたら、わっちが稽古しちゃる」
「それは……、その……、つまり……、夜の……」
「アホ。
真面目な方じゃ。
長生きしとる分、
スキルの使い方にゃ詳しくなるもんでの」
ヤエファがそう言うのを、
スイは、何処となく落ち着かない気持ちで、
眺めていた。
そして、夜は更けていき。
一向は明日に備える事とした。
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